店舗検索と所在地検索

企業サイト上で所在地や所在地情報を探すのは、以前に比べ劇的に容易になってきてはいるが、こうした情報を得るのに、まずサーチエンジンを利用するというユーザーはますます増えている。

インターネットはバーチャルなものだが、顧客は物理的空間に住んでおり現実世界で企業を訪問する必要が生じる場合も少なくない。その結果、地理は非常にシンプルな方法でビジネスの成功に影響を与えることになる:すなわち、顧客がその企業のある場所を見つけられるか否か、がビジネスを左右するのである。

ウェブサイトは顧客にとって、支店、店舗、オフィス、販売店、そしてATMや荷物の引き渡し場所、eコマースサイトの返品受け付け場所といった拠点など、企業の所在地情報を得ようとする際の主要な手段と言える。顧客が現実世界で取り引きする必要がある場合、企業サイトは常に、彼らに必要なサービスを提供している最も便利な所在地の情報を得る助けとならねばならない。

ウェブサイトというものの最も基本的な目的は、サイバースペースにおける企業の名刺、いわば「ここですよ」と表明することにあると言えるだろう。もちろん良いウェブサイトは、こうした単純な機能以上の役割を果たし、所在地を探す以外の多くのタスクで顧客をサポートするものだ。しかしそれでもなお、こうした基本的な機能を持ち、顧客が現実世界での企業の位置情報を容易に確認できるよう援助することは重要なのである。

2種類の調査研究

ウェブでの店舗検索および所在地検索のユーザビリティを評価するため、我々はユーザビリティ調査を2回に渡って実施した。この調査では、合計25名のユーザーが20のウェブサイトで店舗検索機能のテストを行っている。

どちらのテストでも、我々は伝統的な小売業者、金融機関、ハイテク企業からレストラン、郵便局まで、幅広い業界を代表する企業を選択した:

調査1でテストを実施したサイト 調査2でテストを実施したサイト
AndersenAmerican Automobile Association (AAA)Bank of America

BMW

Caterpillar, Inc.

Charles Schwab & Co.

The Dow Chemical Company

Toys R Us

Verizon

Wells Fargo

Ace HardwareAppleApplebee’s

AT&T

BJ’s Wholesale

FedEx Kinko’s

PetSmart

Sovereign Bank

Target

United States Postal Service

それぞれのウェブサイトは、多くの所在地を掲載しており、その数は(調査1を実施した時点で)ダウ・ケミカル社の製造所141カ所から、(調査2を実施した時点で)米国郵政公社の郵便局3万7000カ所まで。大多数の企業はおよそ1000カ所から2000カ所の所在地を掲載していた。

二回のテストで、我々はユーザーに自分たちから最も近い(あるいは特定の住所に最も近い)所在地を探し、その場所への行き方を調べるよう依頼した。時には、ある特定の要件を満たす所在地、たとえば日曜に営業している場所や特定の製品ラインを用意している場所を探すよう頼んだケースもある。

所在地検索のユーザビリティにおける傾向

我々が 調査1を行ったのは7年前なので、2回に渡るテストを比較することで、所在地検索ユーザビリティにおける長期的傾向を評価することが可能だ。そして実際、変化が見られた。

最も著しかったのは、ユーザーが所在地検索を見つけ、使用する際の成功率が、7年前の63%から96%に上昇したことだった。

我々が行った最近のウェブサイトテスティングでは平均成功率が70%であることを考えると、96%は驚くべきハイスコアと言える。もちろん、該当する所在地の住所を探すのは、他のウェブサイト・サービスを使用するのに比べて非常にシンプルなタスクだ。たとえば投資を管理したり、自動車の購入や融資について調べたり、どの油圧エクスカベータが自分の鉱山に最適かを判断したり、あるいは甥っ子に誕生日のプレゼントを買うのでさえ、所在地を探すという行為よりもはるかに難易度の高いタスクと言える。

とは言え、所在地検索ユーザビリティがたったの7年で、これほど改善されたのは素晴らしいことだ。

しなしながら、すべてが完璧というわけではない。ユーザーが容易に達成できたのは、タスクの64%に過ぎなかった。したがって、失敗したユーザーが4%しかいなかったにしても、32%は所在地検索の使用中に困難に遭遇したことになる。特に、所在地検索のような単純な機能では、こうしたタスクを達成できるだけではなく、簡単かつ快適に達成できる必要がある。こうしたより厳しいユーザビリティ要件を考えるなら、所在地検索はまだまだ改善の余地があるのである。

スムーズな所在地検索の使用には、以下の3つのステップがある:

  1. 所在地検索を見つける
  2. 望み通りの所在地を探すために所在地検索を使用する
  3. 出発点からその所在地までの道順を知る

これら3つのステップが容易と言えるのは、ユーザーがタスク全体を上手く完了することができた場合だ。調査2における所在地検索ユーザビリティが劇的に向上した最大の理由の一つは、(推奨されているように)ほとんどのサイトで、所在地検索にハッキリとラベリングしたリンクを提供しているため、ファーストステップがかなり容易になっていることにある。適当に作った、あるいは風変わりなリンク名は、ほぼ過去のものなのである。調査2では90%のサイトが所在地検索に対して分かりやすいリンクを置いているのに対し、調査1でそうしているのはたった30%のサイトに過ぎなかった。

ほとんどのサイトが7年前よりも良いマッピングサービスを導入しているため、ステップ3も今日では容易になっている。

昨今、ユーザビリティの問題における主要な震源地となっているのはステップ2だ。:すなわち、所在地検索そのものが複雑であるか、ユーザーのニーズに合わない所在地リストを生成するかのいずれかなのである。

所在地検索への入り口としての検索

調査2を調査1と比較した際の大きな相違には、検索の優位性が非常に高まっているということがある。これは驚くべきことではない。何故なら我々は最近の調査の多くで、検索の優位性が高まっていることを見いだしているのだから。

特定の企業について付近の所在地を探すよう依頼した際に、ユーザーの73%が検索エンジンにアクセス(主にGoogle)したことは、やはり特筆すべきだろう。企業のウェブサイトに直行したのは13%に過ぎず、残りの13%は地図専用サービスにアクセスした。

こうした行動があればこそ、我々は今日、所在地検索用のサーチエンジン最適化(SEO)ガイドラインを用意しているわけだ。

このような行動により、以下のような疑問が生じる:そんなにも多くの人が最初に検索しようとするなら、自社サイトから所在地検索を削除するべきなのだろうか? 回答はノーだ。理由は二つある:

  • ユーザーがすでに企業サイト上にいて、その企業と取り引きすることを決めた場合にはすぐ、所在地検索へ容易にアクセスできる必要がある。彼らは企業サイトのいずれのページでも、取り引きしようと決める可能性があるのだから、すべてのページは所在地検索にリンクすべきである。
  • サーチエンジンから出発した人であっても、サードパーティのサービスよりもむしろ、当の企業サイトにある所在地情報に導かれるのが理想だ。この選択を可能にするために、企業サイトは所在地検索を用意することが必須である。

多くの新しいガイドライン

今回の新しい調査により、我々のレポートの初版で提示した21のユーザビリティガイドラインがすべて有効であることが追認された(ユーザー行動の変化、そしてウェブデザインの標準の変化を考慮して、ガイドラインのいくつかは説明を修正しているが)。今や所在地検索がより使いやすいものになっていても、基本的な要件は変わっておらず、元々のガイドラインに違反するサイトはすべて、問題を抱えることになる。

Web全体を通じてのユーザーエクスペリエンスがより良いものになっているため、個々のウェブサイトのハードルは高くなっている。オリジナルのガイドラインは今も必須ではあるが、これらはもはや十分とは言えない。ユーザーがより良いサイトを求めるため、企業はこれまで以上に良いユーザーエクスペリエンスを提供するために、より多くの努力をすべきなのである。所在地検索に関し、最高のプラクティスを実現するか、さらに上を行きたいのであれば、我々が実施した新しいリサーチに基づいた、56のユーザビリティガイドラインに従うべきだろう。

多くのガイドラインについて(ざっとではあるが)その指標を使用するなら、良い所在地検索の要件は現在、7年前よりも167パーセント高くなっている。おそらく、良いサイトとみなされるために必要なユーザビリティレベルが、一般に高くなっているのと同様なのである。

さらに詳しく

所在地検索ユーザビリティに関するレポート(2nd edition、143ページ) 113のスクリーンショット56のデザインガイドラインをダウンロードできる。(有料)