Kindle、最初の5分のエクスペリエンス

※2009年3月9日付Kindle 2 ユーザビリティの関連記事。

明らかに Amazon は、非常に高い料金のインダストリアルデザインの代理店を雇い、Kindle の包装デザインをそれなりにおしゃれにするために投資している。そして、箱の封をあける時の最初の 20秒間は、重要である。

しかしより重要なのは、その後に続く 5分間、実際にデバイスを取り扱う際にも、優れたユーザエクスペリエンスを提供することである。

実際、「最初にお読み下さい」が箱に入れられた安っぽい紙ではなく、Kindle の画面自体に記されていたことに、私はとても感心した。そうしてあれば、見逃すはずはない。さらに素晴らしいのは、そのインストラクションが、 — (1) 電源コードにつなぐ (2) 電源を入れる — と単純で、また Kindle の電源プラグと電源スイッチを矢印で指していた。結局我々は、ユーザが時間をかけて詳細説明を読まないことを分かっているので、簡単にして、デバイスをすぐに起動させるようにするのはよいことだ。

また、「電源の入れ方」の説明は、e-ink 画面で電気を消費せずに画像を保持出来る Kindle の性能を上手く活用したものだ。他のデバイスであったら、画面上に電源の入れ方説明を表示して出荷するのはより難しかったであろう。もちろん、出荷時にプラスチックのオーバーレイ(画面を保護する透明のシート)に説明を印刷して画面の上に重ねて出すことで、それと同じことが出来たであろう。実際、私は最初、Kindle はそうしているのだと思っていた — オーバーレイをはがしたら、説明がシートの背後に残っていて初めて気付いた。

Kindle の電源を入れると、割と簡単な最初の説明が表示される。繰り返すが、これはほとんどの家電製品に比べると、読書専用デバイスの上ではより簡単に実現出来ることである。とはいえ、起動時のエクスペリエンスをよりよくするために、デバイスの能力を Amazon が活かしたことは、称賛に値する。

Amazon がとった方法で最も重要なのはデバイスを事前に登録することでセットアップ時のその手間を省いたことである。私が自分の Kindle の電源を初めて入れた時、その画面にはすでに “Jakob’s Kindle” と表示されていて、ホームスクリーンにはデバイスが届くのを待っている間に私が Amazon.com で購入した 2 冊の電子ブックのエントリが表示されていた。(いまいちな点: それらの本は自動的にダウンロードされなかった。私はボタンを押して、Kindle 上のアーカイブから本箱へ移動させなければならなかった。一体誰が新しい本をまっすぐアーカイブに入れるだろうか?)

手動で、登録、eメールアドレス、パスワード、クレジットカードの入力、その他のセットアップのための作業をする必要はない。一度 Kindle の電源を入れたら、私は本を購入し、読むことが出来た。

ユーザ情報をあらかじめデバイスに入れたことは、箱をあけた時の最初のエクスペリエンスを大いに改善している。もちろん、これを実現するには、ユーザが他人のではなく自分専用になった Kindle を受け取るように、デバイスにコードを正確に入れて行くこと、そして発送ラベルをデバイスと正確にマッチさせるために、優れた物流のオペレーション技術を要する。

また、膨大な数の顧客との密接な関係を持つという点で、Amazon は他のほとんどのウェブサイトとは異なる。自分が使うために Amazon 専用デバイスを人々が購入する際に、この会社は事前登録に必要な情報の全てを持っていて、それを最初のユーザエクスペリエンスを更に良くするために賢く活用している。同じような情報を持つ企業の数はより少ないため、そうした企業のデバイスには、潜在的に、セットアップの難しさがある。

Amazon でさえ、全ての Kindle デバイスを事前登録することは出来ない。既存のユーザ、つまり彼らの顧客が他人のためにデバイスを購入することはしばしばあり、それを受け取った人は、登録手順を自分で行わなければならない。とは言え、全てのユーザを助けるのは不可能だとしても、それは言い訳にはならない。人々が自分用に Kindle を買うケースは十分増えていて、そうした顧客にとりわけ易しいエクスペリエンスを提供するのは当然と言える。