UIと製品のカスタマイゼーション

UIをユーザーがカスタマイズ可能なウェブサイトは、通常のサイトと同程度のユーザビリティがあると評価された。しかし、製品をカスタマイズするためのサイトは、複雑なワークフローが原因でかなり悪い評価となった。

ウェブベースのカスタマイゼーションは新しいものではない。1990年代半ば以来、カスタマイゼーションはウェブがたどる運命であり、あらゆるビジネス上の問題への万能薬であると大げさに宣伝されてきたものだ。こうした誇大広告を除いても、適切に実装されれば、ウェブベースのカスタマイゼーションがビジネスとユーザーの双方へ利益をもたらすものとして実際に活用可能なことは明らかである。

カスタマイゼーションによって使いやすくなるアプリケーションは多い。それでも、企業が必死にカスタマイゼーション機能を開発してみたら、ユーザーがカスタマイズすることなどまずなかった、という話は数え切れないほどある。ユーザーがカスタマイゼーションを望んでいるという調査結果も数多く見受けられるが、(我々の知る限りでは)ユーザーの言うことと実際に行うことは食い違っていることがよくある。

最終的に、カスタマイゼーションを成功させるには、カスタマイゼーションに対するビジネス上のニーズがあることが不可欠で、正しく実装するためにかかる費用を相殺するに足る現実的なハード面、ソフト面でのメリットがあるかどうかも見極める必要がある。

カスタマイゼーション vs. パーソナライゼーション

一般的には使われてないが、ユーザーエクスペリエンスが個別のユーザーのニーズに合わせている事例に対して、「インディビジュアライゼーション(:個別化)」という用語を使っても良いのではないかと思う。コンピュータが導入されたばかりの頃は、誰もが同じものを手にしていた。同様に、ウェブが始まったばかりの時期には、ウェブサイトのページは、訪れた人が誰であろうと、どのページもいつも同じ外観をしていた。

今日では、ページは個々のユーザーに合わせてデザインされていることが多く、その結果、人が変われば、アプリケーションでもウェブでも見える画面は違う。ユーザーエクスペリエンスを個別化する方法は主に2種類あり、誰がそうした適合プロセスを先導するかによって決まる:

  • カスタマイゼーションユーザーが見たいものをコンピュータに命じるときに起こる。事例は以下の通り:
    • 今後、そのホームページを訪れたときに、ユーザーの町の天気予報が見られるように、ニュースサイトを変更する。
    • 色やオプションを指定した特定の自動車モデルを、カスタマイズされた自動車の価格表と一緒に表示するように自動車メーカーのサイトを変更する。たいていの自動車関係のサイトは現在、こうしたコンフィギュレーター(:シミュレーション機能)を備えている。
  • パーソナライゼーションコンピュータが現在のユーザーの興味を予想して、それに合うように振る舞いを修正するときに起こる。事例は以下の通り:
    • イントラネットポータルで、役割ベースのパーソナライゼーションによって、人事データベースに管理職として登録されたユーザーにのみ管理関係の機能を表示する。
    • eコマースのサイトで、同じ製品を簡単に再注文できるように、ユーザーの過去5回分の注文リストを表示する。

我々の最新の調査はパーソナライゼーションを対象としていない。その代わりに、以下の2種類のカスタマイゼーションについて、重点的に調べている:

  1. インタフェースのカスタマイゼーション:ユーザーが自分の好みに合うようにユーザーインタフェースを変更して、オンラインエクスペリエンスをカスタマイズできる機能。
  2. 製品のカスタマイゼーション:カスタム生産品を含むオフラインの製品に対するカスタマイゼーションを手助けするコンフィギュレーターのような機能。

カスタマイゼーションはウェブだけの話ではない。例えば、「app store」や着信音のダウンロードの普及によって、先進的な機種であろうとシンプルな機種であろうと、携帯電話のカスタマイズが魅力的であることは証明されている。とはいえ、我々の今回の調査はウェブ上でのカスタマイゼーションに限定して実施した。

ユーザー調査

ウェブ上でのカスタマイゼーション機能のユーザビリティを評価するために、24人のユーザーにカスタマイゼーション機能を持つ7つのサイトについて操作してもらうユーザビリティ調査を実施した。そのうちの3つのウェブサイトでは、ユーザーがオンラインエクスペリエンスをカスタマイズすること(インタフェースのカスタマイゼーション)が可能であり、4つのウェブサイトでは、オフラインの製品をカスタマイズすること(製品のカスタマイゼーション)が可能であった。

インタフェースをカスタマイズするサイト

  • iGoogle
  • My Yahoo!
  • Pageflakes(:ドイツで開発されたパーソナライズスタートページ)

製品をカスタマイズするサイト

  • Custom Ink(Tシャツその他の衣類をカスタマイズする)
  • Action Envelope(封筒をカスタマイズする)
  • [me]&goji(シリアルをカスタマイズする)
  • Tiny Prints(招待状や通知状をカスタマイズする)

いずれのサイト上でも、カスタマイゼーションに関わる以下のような典型的タスクの実行をユーザーに依頼した:

  • あなたのページにTo Doリストを追加する。
  • ページからガジェットを削除する。
  • 猫の日常の写真を投稿する機能を追加する。
  • 事業所が移転するので、600ドルの予算で、500枚の移転通知を印刷しなければならないと仮定する。

カスタマイゼーションのビジネス上のメリット

カスタマイゼーション機能を追加するかどうかを決断する際、まずは、ビジネス上の目的を定義し、その次に、どのようなカスタマイゼーションがその目的の達成の手助けになりそうかを決定することが重要だ。以下にウェブベースのカスタマイゼーションがもたらすビジネス上のメリットをいくつか記す。

トラフィックとロイヤリティの増加

iGoogleやMy Yahoo!のケースでは、カスタマイゼーションによって、既存のビジネスモデルに付加価値が追加された。カスタマゼーションを提供することで、そのサイトを訪問し、そこをスタートページとして選択するユーザーの数が増えるようになれば理想的である。その結果、ページビューと広告ベースの収入が増加するからだ。

例えば、2008年のGoogleホームページへの訪問の20%はiGoogleによるものだと言われている。その上、GoogleやYahoo!のホームページを自分用にカスタマイズするために時間を割いたユーザーは、そうしたサイトが提供するウェブベースのeメールや検索機能を使う可能性が高い。

オペレーションコストの削減

Action Envelopeのようなビジネスにとって、オンライン上にカタログを掲載できるだけでなく、カスタマイゼーション機能も提供できるというのはオペレーションの上でも魅力がある。それによって、ユーザーがオンライン上で製品のシミュレーションをし、オーダーすることまでが可能になるからだ。ウェブがなければ、こうした企業はカタログを印刷して配布しなければならず、ウェブベースで可能なレベルのカスタマイゼーション機能を提供しようと思えば、膨大なスタッフを維持しなければならなくなる。

より大きな網を広げる

従来、顧客が製品を吟味する必要のある業種には地理的な制約があった。現在では、それは当てはまらない。例えば、Tiny Printsを使えば、ユーザーは通知状や招待状をオンライン上でカスタマイズして作り出すことができる。ウェブが活用される前に、これと同じことをしようと思えば、顧客は印刷屋を訪ねるしかないのが普通だった。店に行って、紙やフォント、印字の色を選び、その次には見本を検討して修正を施す等してきた、というわけである。シリアルのカスタマイズの場合も同じだ。自然食スーパーに行けば、自分の好きなようにカスタマイズしたシリアルを作り出すことは可能だっただろう。しかし、皆が皆、そうした店の近くに住んでいた(あるいは、住んでいる)わけではない。オンライン上でのカスタマイゼーションが可能になったことで、大勢の人がこのように個別化された製品を手にできるようになったのである。

カスタマイゼーションサイトのユーザビリティ上の課題

今回の調査ではサイトをカスタマイズするかどうかで、ユーザビリティに際立った相違が現れるかどうかを調べた。また、インタフェースをカスタマイズするサイトは、製品をカスタマイズするためのサイトとは分けて考えた。インタフェースをカスタマイズしたときに、タスクがうまくいくかどうかはカスタマイズしていないサイトと同等で、その平均達成率は83%だった。しかしながら、製品カスタマイゼーションのサイトでのタスクの平均達成率は66%しかなかった。この差は大きい。

タスク実施後の調査では、下表の評価(平均値)が示すように、カスタマイズしたウェブサイト上では、より混乱してしまい、自分でコントロールできていない感じがした、と伝えたユーザーが多かった:

非カスタマイゼーションサイト カスタマイゼーションサイト
何をしているかわかっている感じ 60% 53%
自分でコントロールできている感じ 66% 60%

カスタマイゼーションサイト上で、ユーザーが自分であまりコントロールできていない感じがするというのは、とりわけ不幸なことだ。カスタマイゼーションのゴールはユーザー一人一人のニーズを正確に実現することにあるからだ。現時点でのカスタマイゼーションにおけるユーザーエクスペリエンスは、どちらかというとユーザーの妨げになっており、ユーザーに権限を与えることで喜ばれるというふうにはなっていない。

カスタマイゼーションが複雑であることで、タスクの成功率にもサイトに対する感じ方の面にも影響が出てしまっている。

インタフェースのカスタマイゼーションにとっての主な問題は、解明しやすさ、発見しやすさと理解しやすさに関係している。つまり、まずはカスタマイゼーションを実現することが目的になっており、発見することや、理解することはその次に選択可能なオプションになってしまっているというわけである。初めてのユーザーに早い時期での成功体験を与えるには、サイト上で機能の説明がきちんとなされており、短時間で実行可能なワークフローが提供されていなければならない。例えば、我々が調査したところによると、iGoogleによる「30秒足らずで」個人の簡単なホームページが作れるといううたい文句はうまくいっており、そのサービスを試してみようという気をユーザーに起こさせていた。

製品のカスタマイゼーションでは、発見しやすさが足りないことによって、さらにたくさんの問題が起きており、製品カスタマイゼーションのサイト上での見つけにくさからくるタスクの失敗は全体の45%に上っていた。また、複雑過ぎるワークフローも多くの問題を引き起こしていた。ユーザーは作業ステップを間違ったり、自分の望む製品をうまくデザインするために何が求められているかを誤解したりしてしまうことが多々あった。例えば、あるサイトではまとめてフォントサイズを指定するようにユーザーに求めていたが、なぜ、まとめてフォントを指定するかは普通の人にとってはさっぱり意味がわからないことで、その結果、ユーザーはいらいらしながら、いろんな数字を試行錯誤しながら打ち込んでいた。デフォルトとして選ばれていたフォントサイズが、不幸にもほとんどのユーザーにとって小さすぎることもこの問題をさらにややこしくしていた。

優れたデフォルトの重要性

メリットがあるにもかかわらず、カスタマイズ機能を役立てていないユーザーは多い。ユーザーが示すのは、単に、ウェブ上でやりたいことを終わらせたいという強い志向であり、プリファレンス設定をいじるのに時間を費やしたいということではない。

デザインの問題を解決するために、単に、あらゆるオプションをプリファレンス設定として提供して、ユーザー自身にインタフェースを決めさせようというのは安易すぎる。デザインチームで優れた一貫性のあるユーザーエクスペリエンスを1つだけ決めた方がユーザーにとってありがたいことは多い。カスタマイゼーションのオプションは実際にユーザーにメリットをもたらす機能のために用意されるべきである。それによって、タスクの達成のためではなく、UIのカスタマイズにユーザーが使った時間を埋め合わせることができる。

どんな場合にも、たとえ、インタフェースのカスタマイゼーションがどれほど簡単で意味があるものであろうと、絶対にカスタマイズをしないユーザーというのはいるものだ。したがって、カスタマイズをしないユーザーのために、デフォルトのデザインの質を高く保つことは不可欠なのである。

カスタマイゼーションは正しく実装されたときに効果が出る

我々が調査したどのサイトも、根拠なくカスタマイゼーションを提供しているわけではなかった。各サイトはカスタマイゼーションによる恩恵を受けていたし、カスタマイゼーションによる利点を生かしたいユーザーには大きな利益がもたらされていた。こうしたサイトに対して、ユーザーがどのように行動しているかを観察すると、そこではうまいやり方と、まずいやり方の双方が見受けられ、我々はそこからカスタマイゼーションのデザインのための46のガイドラインを導き出した。これらのガイドラインが示すのはデザインの原則であり、それに従えば、カスタマイゼーションへ取り組むことによって、効果的かつ効率的で満足のいくエクスペリエンスをユーザーに間違いなく提供できるだろう。

カスタマイゼーションとは複雑なものである。それは技術的にも、デザイン的にも当てはまる。白紙の状態から、十分にカスタマイズされたインタフェースや製品にユーザーを着地させるには、並外れたデザインスキルが必要だ。また、ユーザブルなカスタマイゼーションの道筋をまとめて、整理し、設計するには複数のグループ間での協力も欠かせない。カスタマイゼーションは数週間のやっつけ仕事でできるような類のものではないし、そうしたやり方で取り組むと、その企業の評判や収益を下げるリスクがあるだろう。

さらに詳しく

カスタマイゼーションのユーザビリティのための46のデザインガイドラインを含むレポート(93ページ)がダウンロード可能である(有料)。

公開: 2009年8月17日 (原文:2009年8月17日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Customization of UIs and Products