メディア消費の速度:
テレビ vs. Web

ウェブ上でのユーザーの意思決定の精度は非常に細かいが、それは、いつなんどきでも、自分のニーズを即座に満たしたいと考えているからである。コンテンツはこの迅速なペースに対応する必要がある。

このところ、源氏物語という、日本文学の名作で、1000年前に書かれ、世界で最初の小説として広く認められている本を読んでいる。こう言ってしまうことで、私の日本の友人達の気分を害することにならないと良いとは思っているが、その小説の中では物事がとにかくゆっくり進んでいく。素晴らしい本ではあるが、ストーリーをごくごくわずかに進めるのにさえ、紫式部はたくさんのページを費やしている。

歴史的な観点からすると、源氏物語のページ数がなぜ多くなってしまったのかは明らかである。その当時の日本の宮中のご婦人方には、他に読むものが何も無かったからである。つまるところ、これが世の中に存在する唯一の小説だったというわけだ。紫式部はStephen KingやTom Clancyと張り合わなければならなかったというわけでもない。

もちろん、今日の我々の状況はその逆である。我々の書く全てのものは何兆ものウェブページと競合し、そのすべてが数クリックで閲覧されていく。結果、大多数の人が実際、ウェブ上で読む内容はごくわずかである。

メディア消費の速度は劇的に増加している。殿上人の衣装を愛情深く詳細に説明した一節を、読者がじっと読んでくれたりすることはもはやない。こっちをクリックしたり、あっちをクリックしたり、彼らはそこら中をクリックはするが、一箇所には留まらない。

人々の活字メディアに対する消費の仕方はウェブサイトの使用時とは異なる。その結果、印刷物とウェブに対するデザインではいろいろな点で違いが出てくる。

メディア別の特徴

近頃のメディアはどれも以前よりも速い速度で進んでいる。昔のテレビ番組を今のものと比べてみると良い。場面の転換がより早くなっていることに気づくだろう。

さらに、テレビとウェブを比べてみると、そこにはいろいろな相違点がある。それらはオンラインメディアの方が進む速度が大幅に速いことに起因している:

テレビ ウェブ
視聴者/閲覧者 一般大衆: 皆が同じ基本チャンネルを見る。そのため、番組制作にはいろいろな要素が入らざるを得ない ニッチ: 皆、自分が何かを欲しいと思った瞬間に各自、興味のあるものを探し求める
ユーザビリティ スイッチを入れる 答を見つけ出す
テクノロジー 劣る: 画像を見せること以外は不可能で、何の機能も提供しない 強力: ほとんどなんでも可能で、たくさんの機能を提供する
アクセスするための主なUI 「同じ時間に同じチャンネルで」また来週 検索とナビゲーション
ユーザーエクスペリエンス 受動的: くつろいで座り、番組ディレクターが決めたとおりのことを受け取る 能動的: 前傾姿勢になって、自分の行きたいところを常に決めていく
フロー リニア(:線状) ハイパーテキスト(:非線状)
気を散らすもの (コマーシャル中に何か別のことをしたくなること以外には)無し。したがって番組視聴中はそれに集中したまま 多数: 他のウィンドウやタブに誘惑される(おまけに、何か重要な出来事が起きた場合にはすぐにメールをチェックすべきである)
所有者 MSM(大手メディア=大企業。放送ネットワークを経営するには高いコストがかかるから) 誰もが製作する手段を持っている。そうした産業革命によって、集中化から逆行する動きが起きている
生産価値
社会的コンテクスト ファミリールームで、誰かと一緒のことが多い オフィスや書斎で、1人でのことが普通
ブランド構築 イメージとスローガン 経験
広告宣伝向き? 向いている 向いてない(サーチ広告や3行広告を除くと)
販売サイクルの支援 需要喚起 調査、購買、(家電の)フルフィルメント(:通信販売などのデータベース・マーケティングにおける商品の受注、こん包、配送、アフターサービス、在庫管理、入金管理までの一連の作業を行うこと)、
カスタマーサポート顧客との関係性の維持

テレビはユーザビリティは容易だが機能はない、というのは、当然だが、単純化した言い方である。リモコンを見てみるとそうではないことがわかる。そのうえ、リモコンのユーザビリティは私がそれについて分析をした5年前から進歩していない。実際のところ、人々はテレビの先進的な機能を基本的には何も利用しない。それはまさに煩わしいからだ。その結果、彼らが受け取るユーザーエクスペリエンスはかなりシンプルなものになる。スイッチを入れて、椅子に寄りかかり、番組を楽しむ、ということになる。

ウェブの機能は強力だ。非線形で、ユーザー主導なため、ユーザーのサーチエンジンのクエリーに基づき、その時点での彼らのニーズを即、満たすことが出来る。モバイル上でのウェブ利用であれば、その瞬間の時間をさらに享受することが出来よう。

また、テレビに比べ、ウェブでユーザーが行うコントロールの精度はずっと細かい:

  • テレビを見ている時には、30~120分毎に決断をすればよい。見る番組や映画を選びだせば、その後はリラックスした時間だ。あぁ、なんと楽ちんなことか。
  • ウェブをサーフィンしている時には、10~120秒毎に決断をしなければならない。このページから離れるべきか、留まるべきか。このサイトからは離れるべきか、それとも留まるべきか。今、クリックすべきなのはどこか。次にクリックすべきは? 少々、ストレスではある。

こうした違いを総合してみると、ウェブ使用時のペースがなぜ速いのかがわかってくる。そこでの消費速度はテレビ使用時に見られるものよりもずっと速いのである。

ウェブビデオ: 中間のケース

ウェブ上のビデオは放送映像(テレビ)とページをベースにしたウェブナビゲーションの中間の事例に当たる。既存のデータを見る限り、たいていのウェブビデオは短い方が良く、2~10分程度であるべき場合が多い。つまり、ウェブビデオの利用時の速度はウェブとテレビの中間にあたるが、ユーザーが10~120秒毎に決断をしなければならないウェブでの速度により近いと言える。

ウェブ用のコンテンツやサービス、デザインを開発する時には、このメディアでの消費が、印刷物やテレビといった旧式のメディアよりもずっと速いということを覚えておこう。

オリジナル記事公開日: 2009 年 11 月 24 日

公開: 2009年11月24日 (原文:2009年11月24日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Velocity of Media Consumption: TV vs. the Web

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