HotJavaが歴史から学ぶべきこと

残念ながら、World Wide Webのユーザには、ハイパーテキストの分野ですでに豊かな歴史があることを知らない人が多い。1993年のMosaicのリリースや、あるいは(せいぜい)1991年のCERNのラインモードブラウザに端を発するものと思い込んでいる人が多いのだ。ご承知の通り、ハイパーテキストは1945年のVannevar Bush、1965年のTed Nelsonにまで遡ることができるし、それ以前のハイパーテキスト製品で得られた教訓は、その多くがWWWにも応用できるものだ。

最近開催されたブラウザ関連技術のイベントで、SunはJava言語とHotJavaブラウザを発表した。「アプレット」を作成すれば、ウェブのクライアント側にダイナミックな動きを加えることができる。この機能はかなりパワフルで、これによって新しく、ドラマチックとさえ呼べるようなアプリケーションが生まれて来るのは間違いないだろう。ハイパーテキストの分野でこれに近いものと言われて思い付くのは、1987年のHyperCardの登場くらいだ。HyperCardもやはり無料だった(そのため急速に広まった)し、その年、もっともホットなテクノロジーと見られていた。それまで、Macintoshでダイナミックな動きをプログラムするなどまったく無縁だった広範囲なユーザコミュニティに、新しい自由を与えたのだ(HyperCardが登場するまで、MacでGUIを実装するというのはじつに大変な作業だった。私の研究室の学生も、画面にごく単純な動きを付けるだけで、2ヶ月くらいかかるのが普通だった)。

HyperCardにはひとつ不運な側面があって、これは恐らくHotJavaでも繰り返されることになるはずだ。すなわち、新たに生まれる大量の作品の中には、かなりの量の完璧なガラクタが含まれることになるだろうということだ。こういった作品では、アニメーションによる画面遷移テクニックを変なところで使ってみたり、妙なフォントを組み合わせていたり、あるいは背景がどうしようもなく醜悪なビットマップになっていたりする。UIの見識を持たない新米のデザイナーが犯しがちな、ダメなユーザインターフェイスデザインの特徴は、そのままHotJavaには当てはまらないかもしれない。だが、いくつかは必ず出てくるはずだ。よく考えられたユーザインターフェイスのスタイルガイドができるまでは、Javaによるデザインアイデアの採用は慎重に行うようお薦めする。適切に利用しないと、新技術は、ユーザを助けるどころか、かえって遠ざけることになってしまうだろう。

新技術がかえってユーザを遠ざけてしまうなんて信じられない、というのなら、ちょっと考えてみて欲しい。Netscape 1.1の新機能を使って背景にテクスチャのパターンを設定しているWWWページのうちで、意味もなく単にユーザの識字速度を妨げているだけ、というものがどれくらいの割合あるだろうか。(さらに、コンピュータで読む速度は、紙に比べて25~30%ほど低下するということを考えれば、画面フォントをなおさら読みにくくするようなページデザインはまったく不要だ)。

HotJavaに新たなユーザインターフェイス要素を導入することに関して、現時点での私のアドバイスは、かなり保守的なものだ。ユーザインターフェイスの基本的なデザイン原則はミニマリズムである。たいていの場合、簡素な方がいいのである。ユーザの役に立たない機能を取り除いていくことで、ユーザインターフェイスを改善できるというわけだ。簡単な思考実験をしてみよう。そのデザイン要素を削ったら、UIにどんな影響が出るだろうか?以前と同じくらいうまくインターフェイスが機能しているなら、そのデザイン要素は恐らく削除してかまわないはずだ。

1995年6月

公開:1995年6月1日(原文:1995年6月1日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Warning against pitfalls in Java and HotJava user interfaces

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