サブサイトの出現

多数、かつ多彩な情報空間をナビゲートするために、ウェブユーザには構造が必要だ。個々のページという範囲を超えると、ウェブの基本的な性質の中にはもはや構造をサポートするものがない。情報のユニットと認識されるものが、ページしかないのだ。

ページという単位が、構造のメカニズムとして十分でないことは明白だ。基本的構成ユニットとしてサイトに重きを置くことを、私はウェブの初期から主張してきた。クリック1回で、世界の反対側に行けるわけだから、あらゆるページは、ユーザに場所の感覚を与える必要があり、どこに着いたのかを知らせる必要がある。基準としてお薦めできるのは、会社や組織のロゴを画面左上隅に入れておくことだ(から左に流れる言語では右上隅)。このロゴをクリックすると、そのサイトのメインのホームページに移動できる。

ウェブユーザビリティでは、サイトを意図的に構造化メカニズムとして認識させることが重要だ。だが、ほとんどのウェブサイトは大きすぎて、サイトレベルで単一の構造を提示することが難しい。ほとんどの情報は階層的に整理されているが、ページ上部に、この階層を明示して、文脈とナビゲーションを補強することができる。例えば、仮想企業BigCoのイントラネットには、以下のようなリストをつけておき、ストックホルム支社のホームページに至る入れ子階層を表す。

BigCoウェブ -> 販売 -> ヨーロッパ地域 -> スエーデン -> ストックホルム支社

階層リストの各要素は、その階層レベルに対応するトップページへのハイパーリンクにしておく。そのレベルのトップページを表示している時は、階層の最下位レベルの名前(ここでは「ストックホルム支社」)はリンクにしない点に注意して欲しい。最低レベルの名前も、そのレベルの枝ページを表示する際にはハイパーリンクにする。

簡単に階層構造に収まらない情報空間なら、サブサイトを利用するといい。構造化のメカニズムを補強してくれるはずだ。サブサイトは、階層的情報空間において、ある階層レベルを特に目立たせたい場合にも利用できる。この場合、階層構造はサブサイトの目印として使われる。

私が「サブサイト」といっているのは、大規模サイト内において、共通のスタイルとナビゲーションメカニズムを共有する一群のウェブページのことである。この一群のページは、平面空間であってもいいし、内部構造をもっていても構わない。だが、いずれにせよ、そのサブサイトのホームページと言えるようなページがひとつあるはずである。サブサイト内の各ページには、そのサブサイトのホームページと同時に、サイト全体のホームページへのリンクも設ける。また、サブサイトには、ローカルでのナビゲーションに加えて、グローバルなナビゲーションオプション(例えば、サイトのホームページや、サイト全体の検索機能)も設けておくべきだ。

サブサイトは、何千、何万、何十万というページを含んだ大規模ウェブサイトの複雑さを軽減する手法である。サブサイトを使って情報空間の一角によりローカルな構造を与えることで、ユーザは、サイトの中で自分にとって最も重要な部分になじみやすくなる。また、大規模なサイトは異質な情報が混ざり合っていることが多く、これを無理やりひとつの標準構造に押し込めることはできない。この場合も、サブサイトを利用して若干異なったルック&フィールを与えば、ユーザ体験が改善される。サブサイトは、特定のユーザ、特定の利用目的においては、大規模かつ一般的なサイトの中でのホーム環境になるものである。

サブサイトのデザイナーは、ローカル情報に固有のニーズに合わせて、完全に最適化したいという欲望にとらわれるだろうが、一方で、サイト全体の一貫性も考えなくてはならない。サブサイトには、親サイトとの関係を断ち切って独立サイトになるほどの勢いは当然ない。親サイトがあるから、文脈と豊かさが保たれるのだ。私に言わせれば、IBMの新しいAlphaWorksサブサイトは、真似すべきではない見本である。IBMは、すでに強力なサイトのアイデンティティを維持している。すべてのサブサイトで、左上にロゴが、右上部にサブサイトの傾けた画像が配されている。だが、AlphaWorksはロゴを左下部に隠したため、スタイル上の一貫性を欠いている。まるで、親サイトが恥ずかしいから隠したかったのでは、と思えるくらいだ。

よくできたサブサイトの格好の実例が、ZD NetのAnchorDeskだ。AnchorDeskは、コンピュータ業界のコメンテーターとして尊敬を受けるJesse Berstが、新しい出来事について議論し、Ziff-Davisサイト全体から集めた追加情報のお勧めリンクを掲載する場所だ。AnchorDeskサブサイトは、人間の手になる編集で圧倒的な情報空間をガイドしてくれる。おかげで、溺れてしまうようなことはない。ハイパーリンクをうまく使って、論評の根拠として利用しているのだ。

ところで、私の「ストックホルム支社」の例ではいくつかの単語が青になっていた。お詫び申し上げる。この例のような場合を除いて、ハイパーテキストリンクでない文字は絶対に青にしてはならない。ユーザはすでに、ページを斜め読みしてクリック可能な青いテキストを探す習慣を身に付けているからである。また、単語を青く(そうなっているブラウザもあった)するために用いたHTMLが適切でなかった点もお詫びしたい。カスケーディングスタイルシート(1997年に色を変えるならこれが最適だろうが)は、まだ十分に広く利用されていない。

1996年9月

公開:1996年9月1日(原文:1996年9月1日)
著者:Jakob Nielsen
原文:The rise of the subsite

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