カードソーティング:
より良い情報アーキテクチャのために、ユーザーのメンタルモデルを明らかにしよう
カードソーティングとは、トピックをユーザーに分類してもらうUX調査の手法である。この手法を利用して、ユーザーの期待に沿うIAを作成しよう。
使いやすいサイトを作ることは、探しているものをユーザーが見つけることができるように情報を整理することでもある。しかし、ユーザーではなく企業に理解できることを基準にして、コンテンツが構成されていることが多すぎる。(少し前に実施した43のWebサイトについての調査で、最も多かったユーザビリティの問題がこれだった)。ユーザーのメンタルモデルに最も一致する分類体系を見つけ出す基本的な方法の1つがカードソーティングである。
定義:カードソーティングとは、調査参加者が、自分が理解できる基準に従って、ノートカード(メモカード)に書かれたそれぞれのラベルを分類するというUX調査手法である。この手法によって、ターゲットオーディエンスの該当分野に対する知識がどのような構成になっているかが明らかになり、ユーザーの期待に合う情報アーキテクチャを作成する役に立つ。
レンタカーのサイトをデザインしていると想像してみよう。あなた方の会社では、顧客が選べる車種を約60種提供している。では、そうした車をどのようなカテゴリーに分類すれば、ユーザーが自分にとって理想的なレンタカーをブラウズしてすぐ見つけられるようになるだろうか。あなたの会社では、「ファミリーカー」とか「エグゼクティブカー」、「大型ラグジュアリーカー」といった専門用語を使っているかもしれない。しかし、こうしたカテゴリーの違いがユーザーにはまったくわからないこともありうる。カードソーティングが役立つのはここだ。すなわち、ユーザーに、彼らが理解できるように車を分類してもらい、そうしてからどんなパターンが浮かび上がってくるかを観察するとよい。
カードソーティングの実施
一般に、カードソーティングのプロセスは以下のように進んでいく:
- 一連のトピックを選び出す。このトピックのセットには、サイトのメインコンテンツにあたるアイテムが40~80個入っていなければならない。トピックは1枚のインデックスカードに1つずつ書こう。
ヒント:複数のトピックに同じ言い回しが入ることがないようにしよう。参加者はそうしたカードを同じグループにする傾向があるからだ。 - ユーザーにトピックを分類してもらう。カードをシャッフルし、参加者に渡そう。そして、カードを1枚ずつよく見て、同類のカードを束にするように依頼しよう。そうした束は大きくなることもあれば小さいこともあるだろう。参加者があるカードについて確信がもてなかったり、カードの意味がわからない場合は、そのカードはどけて、脇に寄せておけばよい。手当たり次第にカードを分類してもらうよりは、「わかりません」や「確信がありません」というカードを用意するとさらにいいだろう。
注:- 目指すべき束の数というものは決まっていない。小さな束をたくさん作るユーザーもいれば、最終的には大きな束を数個だけ作るユーザーもいるだろう。すべてはユーザー個々人のメンタルモデル次第ということだ。
- 作業中に気が変わっても構わないということをユーザーは認識したほうがよい。つまり、彼らはある束に置いたカードを別の束に移したり、2つの束を合体させたり、1つの束を複数の束に分け直すといったことをしてもよい。カードソーティングのプロセスは、詳細なものから全体を組み立てていくボトムアップ型なので、スタート時の失敗は想定内である。
- ユーザーにグループに名前を付けてもらう。参加者がすべてのカードを納得いくまでグループ分けしたところで、白紙のカードを渡して、彼らが各グループに付けた名前を書き込んでもらおう。このステップによって、トピックの範囲についてのユーザーのメンタルモデルがわかるだろう。また、ナビゲーションカテゴリーのアイデアもいくつか得ることができるかもしれない。しかし、参加者が有効なラベルを作成してくれるだろうとは期待しないことだ。
ヒント:この命名ステップは分類がすべて終わってからおこなうことが重要だ。分類の作業中、ユーザーがカテゴリーにとらわれずにすむからだ。ユーザーはいつなんどきでも自分の作ったグループを自由に作り直せなくてはならない。 - ユーザー本人にデブリーフィングしてもらう。(このステップは任意だが、実施することを強く推奨する)。ユーザーに彼らが作成したグループの論理的な根拠を説明してもらおう。他にも以下のような質問が考えられるだろう:
- 配置するのが特に容易または困難だったアイテムはありましたか。
- 2つ以上のグループに入りそうなアイテムはありましたか。
- (もしあれば)仕分けされずに残ったアイテムについてどのようにお考えでしょうか。
また、ユーザーに最初のグループ分けの間、思考発話をやってもらってもよい。そうすることで、詳細な情報が入手できるが、分析に時間がかかるようにもなるだろう。たとえば、ユーザーが次のようなことを言うかもしれないからだ。「『トマト』のカードを『野菜』の束に入れようと思います。でも、待ってください、トマトは実際には果物なので、本当はそこには当てはまりませんね。『果物』のところのほうがいいと思います」。この発話から、この参加者は、トマトは『果物』のグループのほうがよりふさわしいが、『野菜』にもそこそこ当てはまると考えていたに違いないという判断ができる。この情報のおかげで、『野菜』と『果物』をクロスリンクさせることになるかもしれないし、そうしたほうがいいと思われる理由が他にもある場合は、トマトをもしかすると『野菜』に割り振ることもあるだろう。
- 必要とあれば、もっと実用的なグループ数にしてくれるようにユーザーに依頼する。1回目の仕分け中は(ステップ1~3)、参加者に自分の願望を押しつけたり、バイアスをかけたりしてはならない。しかし、ユーザーの望み通りにグループが定まり、最初のデブリーフィングが済めば、大きなグループをもっと小さなサブグループに分けてもらうように、もちろん参加者に依頼してもよい。あるいは、その逆に、小さなグループをもっと大きなカテゴリーにまとめてもらうことも可能だ。
- 15~20人のユーザーでもう一度カードソーティングを実施する。ユーザーのメンタルモデルのパターンを見つけるには十分な数のユーザーが必要だ。カードソーティングの場合は15人の参加者を推奨する。それよりも人数が増えれば、ユーザーが追加されるたびに収穫逓減になり、それよりも減ると、分類体系内で重複しているパターンを明らかにするのに十分なデータが集まらなくなってしまう。
- データを分析する。すべてのデータが集まったら、共通するグループやカテゴリー名、テーマがないか、また、よく一緒にされているアイテムがないかを探そう。脇に寄せられていることが多いアイテムがある場合には、そのカードのラベルがわかりにくいからなのか、それとも、カードの内容がそのカード以外の他のトピックとは関係なさそうにみえるからなのかを判断しよう。確認したそうしたパターンとデブリーフィングからの定性的な知見を組み合わせれば、どんな分類体系にするとユーザーにとって最も効果的なのかがわかりやすくなる。(カードソーティングの結果の分析についてはここに挙げている以外にもいろいろとあるが、それは別記事で扱う)。
カードソーティングのバリエーション
カードソーティングのバリエーションには、ユーザーが自分でカテゴリー名を作成できるのかどうか、ファシリテーターがセッションを進行するのかどうか、調査で使われるツールは紙かデジタルか、などがある。それぞれに利点やデメリットがあるので、以下でその概要を簡潔に述べることにする。
オープンカードソーティングとクローズドカードソーティング
- オープンカードソーティングとは、最も一般的なカードソーティングのやり方で、ここまで説明したもののことだ。UX実践者が「カードソーティング」という言葉を使うとき、通常、それはオープンカードソーティングのことを意味する。オープンカードソーティングでは、ユーザーはカードを積み重ねて作ったグループに自分の好きな名前を自由に付けることができる。
- クローズドカードソーティングとは、ユーザーにあらかじめ決められたカテゴリー名のセットを渡して、カードを1枚ずつその既定のカテゴリーに分類してもらうというバリエーションである。クローズドカードソーティングからは、ユーザーが一連のトピックをどのように概念化しているかは示されない。そうではなく、既存のカテゴリー構造がコンテンツをどの程度サポートできているかをユーザー視点で評価するときにこのバリエーションは利用される。クローズドカードソーティングへの批判として、これでテストできるのはコンテンツを「正しい」バケツに当てはめるユーザーの能力である。つまり、ユーザーにとってこの手法は、どちらかというとパズルを解いているような感じで、コンテンツをカテゴリーに自然に一致させているのではない、というものがある。この手法には、コンテンツをどう自然にブラウズしていくかということは反映されない。ユーザーはまずカテゴリーを流し読みし、情報の匂いを基準にして選択をしていくからだ。そのため、ナビゲーションカテゴリーを評価する手段としては、クローズドカードソーティングの代わりに、ツリーテスト(逆カードソーティング(reverse card sorting)ともいう)を我々は推奨している。
カードソーティングにおけるモデレーションの有無
- モデレーションありのカードソーティングには、前セクションで概略したステップ4、すなわち、ユーザーによるデブリーフィング(や、実際にカードソーティングしている最中の思考発話法)が含まれる。このステップは、分類についてのユーザーの論理的根拠に関する定性的な知見を得られる非常に貴重な機会といえる。必要に応じて、疑問を投げかけてもいいし、理解を深めるために質問攻めにすることもできるし、特定のカードについて聞くことも可能だからだ。スケジュールや予算が許せば、カードソーティングはこうした知見を得るためにモデレーションしながら実施することを我々は推奨する。
- モデレーションなしのカードソーティングでは、ユーザーは通常、オンラインツール経由で、コンテンツをひとりで分類することになるので、ファシリテーターとのやりとりはない。この手法は、リサーチャーが各ユーザーと話す必要がないというシンプルな理由から、一般にモデレーションありのカードソーティングよりも時間や費用がかからない。モデレーションなしのカードソーティングはモデレーションありのカードソーティングセッションの補完として役に立つ。たとえば、ある調査で、明確な違いのあるオーディエンスグループが必要になったとする。調査チームは、3つのオーディエンスグループのそれぞれに20人ずつという、計60人のユーザーでカードソーティングを実施することを決めた。この場合、モデレーションありのカードソーティングのセッションを60人分おこなうと恐ろしく費用がかかる。そこで、そうではなく、5~10人のモデレーションありのセッションという小規模な調査をグループごとに実施し、続いて残りのセッションでは、モデレーションなしのカードソーティングをおこなうことにすればよい。
カードソーティングを紙でやるかデジタルでやるか
- ペーパーカードソーティングとは、従来からあるカードソーティングのことである。トピックはインデックスカードに書かれていて、ユーザーは広い作業スペース上でそれをグループにするように依頼される。ペーパーカードソーティングの最大のメリットは、調査参加者に学習曲線が存在しないことだ。彼らがやらなければならないのは、テーブルの上で紙を束に積み上げることだけだからだ。プロセスとしても寛容で柔軟である。ユーザーは容易にあちこちカードを移動できるし、最初からやり直すことすら可能だ。また、一目で見える範囲にすべてを表示できないことが多いコンピュータの画面でたくさんのオブジェクトを扱うより、大きなテーブルの上で非常に多くのカードを扱うほうがユーザーにとっては楽なものだ。ペーパーカードソーティングの弱点は、リサーチャーが手作業で、参加グループごとの記録をおこない、それを分析用のツールに入力しなければならないことである。
- デジタルカードソーティングでは、ソフトウェアやWebベースのツールを使って、トピックのカードをモデル化し、ユーザーはそれらをドラッグアンドドロップしてグループにする。この手法はリサーチャーにとっては最も楽であることが多い。というのも、ソフトウェアがすべての参加者の結果を分析して、1つのグループにまとめられることが最も多かったアイテムや、ユーザーが付けたカテゴリーの名前、2つのアイテムが一緒にされる確率を示してくれるからだ。弱点は、ツール自体のユーザビリティがセッションの成否に影響を及ぼすことである。たとえば、技術的な問題によって、ユーザーがイライラすることもあるし、彼らの希望通りにグループが作れなくなることすらありうる。
カードソーティングは、情報アーキテクチャの分野における確立された手法である。実際、今日実施されるカードソーティング調査の見た目は、ソフトウェアではなく、少なくとも物理的なカードを使っている場合には、我々が23年前におこなった調査の写真とまったく同じになるだろう。この調査にはさまざまな実施方法があるので、上に挙げたバリエーションによって、考えられるすべての種類のカードソーティングを包括的に説明できているわけではない。しかし、それらは最もよく利用されているものだ。カードソーティング調査を計画するときには、自分たちの目的とリソースに最も適したやり方を選択するといいだろう。
結論
カードソーティングは、情報アーキテクチャにおける非常に有益なテクニックだ。コンテンツについてユーザーがどのように考えているのかを理解するために利用できるからだ。このテクニックを使えば、企業側の視点ではなく、ユーザーのメンタルモデルに合うようにコンテンツを整理することができるようになる。また、カードソーティングを情報アーキテクチャに関する他の手法で補完することで、カテゴリー構造にある課題を特定することも可能である。