Webにぴったりのメタファーは電話

インターネット専門家は、ネットを説明する時にテレビをメタファーに使うことが多い。その分析の多くでは「チャンネル」「ショー」「視聴率」といった言葉が目立つ。プッシュ技術や、ますます増加するマルチメディアは、ユーザビリティ面では敗けが明らかなのにも関わらず有望視されている。テレビがメタファーに用いられるのには理由が2つある。過去最強のメディアであったことは確かだし、メディアや広告業界の重役連中にも、これなら扱い方がわかるからである。

だが、インターネット専門家のほとんどは間違っているウェブはテレビとは違う。一番コ根本的なところでは、ウェブはユーザ主導であり、絞り込んだ対象に、低い帯域幅を生かして、高度なフレキシビリティを提供するものだが、これに対して、テレビは放送マスメディアであり、広い帯域幅を生かしてフレキシビリティの低いものを提供する。フレキシビリティやカスタマイズ性に乏しいので、テレビで視聴者を獲得するには制作物の品質に頼るしかない。これから先まだ長い間、ウェブでの制作物の品質はもっと低いものになるだろう。唯一の望みは、ウェブの強み、つまりテレビとの違いを強調することである。ウェブは、インターネットとテレビの統合に役立つ可能性がある。こうなれば、テレビ視聴者への価値は高まるが、反面、このようなシステムではウェブの真の可能性は理解できないだろう。

ウェブについて考えるなら、メタファーとしては電話の方が有効だと思う。これは、何もウェブが電話そっくりのものになるだろうというのではない。むしろ、そうはならないように願いたい。電話のユーザビリティ的特性は最悪だからだ。同様に、ウェブほど強力な現象のあらゆる面をひとつで説明し尽くせるメタファーなど存在しない。Jerry Michalskiが提示したその他7つのメタファーもウェブの分析に有効だろう

電話は基本的にナローキャストメディアだ。1対1のコミュニケーションを、かなり低品質のチャンネルで行う。音質が悪いのに電話にこれほどの人気があるという事実は、ここでもやはり、コンテンツこそが重要なのだという証拠である。重要なのは通話の相手とその発言であって、同じ部屋にいるのとまったく変わらない音質かどうかということではない。これまでのところ、ビデオ電話はうまくいっていない。ひとつには、たいていの場合、それほど高い品質は求められていないというのがその原因だろう(シャワーを出たばかりの格好でも、クライアント相手に重要なビジネスの電話ができる)。当面の間、ウェブは、低い帯域幅に呪われることになるだろう。この事実を受け入れ、技術面ではなくコンテンツが優れたサイトをデザインするべきだろう。

ワントゥワン型メディアという特性があるため、ウェブでは従来の広告モデルはうまくいかない。カスタマイズ可能な付加価値リレーションシップマーケティングが可能な場では、マスマーケティングはふさわしくない。そこら中にバナー広告を貼りつけるくらいなら、企業は、顧客にとって価値あるウェブサイトを作ることに力を入れた方がいい。そして、サイト上ですぐビジネスに入れるよう、使いやすく魅力あるサイトにするべきだ。TVコマーシャルよりは、ダイレクトマーケティングの方がモデルとしては適している。重要なのは、大勢の人の目にあなたがどう映っているか(「目玉」)ではなく、それに反応(コンタクトを取る、買い物をする、その他、彼らに望みたい行動なら何であれ)する人がどれだけいるかということなのだ。

残念なことに、電話のメタファーは、夕食の際中に決まってどうでもいい売込みの電話をかけてくるテレマーケティング業者の存在にもつながってくる。インターネットにはSPAMが存在する。できるだけ早いうちに片付けてしまいたいものだ。電話の世界にはある法規制というアイデアを借りることも可能だろう(求められていない電話をかけることを、ほとんど違法としている国は数多い)。だが、インターネットで新たな解決案が開拓され(例えば、フィルタリング、「通行料」徴収方式など)、これが電話の世界に逆輸入されることになるかもしれない。

電話の基本的特性にはもうひとつある。それは、そうしたいと思ったその時に、通話がユーザによって開始されるということだ。もちろん、これはかける側にしか通用しない話ではある。かけられる側は「プッシュ」型メディアとして通話を受ける不便をこうむるわけだ。この両者のうち、どちらの立場の方が望ましいか考えれば、プッシュ型よりプル型の方がいいことがわかるだろう。もちろん、ウェブでは話相手がコンピュータになるので、ヒットされる時間の都合は関係なくなる(サーバがそれなりに強力なものならば、だが)。

一般に電話はウェブと同様、インタラクティブである。大量のコンテンツをパッケージ化してユーザに与える(テレビ番組のように)ことは考えていない。かわりに、電話通話では2者間のやり取りが行われ、相手先からの情報次第で、自分の番に何をするかが決まってくるのだ。

最後の違いは、電話ではみんなが発信者ということだ。当然ながら、TVでは、電波に乗るのはごくわずかな人間だけだ。いくら大手ウェブサイトに関心が集中するからといっても、やはり私は、ウェブ全体の価値は、何100万もの小さな専門サイトが組み合わさることで生まれていると考えている(たとえ、各サイトの収入が大手サイトに比べてはるかに小さなものだとしても))。

ウェブサイトや新しいウェブ技術について考える時、電話という側面から考えるようお薦めする。あまり拡大解釈してしまうとメタファーは危険だ。実務では、現在直面している表面的な特徴に気を取られがちである。だが、そこから一歩進めて考えようと思うなら、展望とアナロジーを得る上でメタファーは有益だ。

ニュース速報

ホームページ肥大化の傾向がついに沈静化してきた。しばらくの間、私はネット上の各種ホームページの横幅を測定し続けてきた。最初の数年間で、ページの横幅はどんどん広がっていき、グラフィックはどんどん重くなってきた。今回、ページは実際に数ピクセルではあるが前回よりスリムになった。以下にデータを示す(ページ横幅の平均値)。

年月 ページ横幅
(平均値)
1995年4月 525ピクセル
1996年1月 568ピクセル
1996年8月 598ピクセル
1997年5月 586ピクセル

1997年5月15日