Webページテンプレートの有用性をテストする
個別のウェブページのユーザビリティをテストするのは簡単だ。単にそのページをユーザに操作させてみて、彼らがそれを理解しているか、トラブルは起こらないかを見ればいい。ページテンプレートとなると話は別だ。従来のテストでは2つの問題が絡み合っていて、これを峻別するのは難しい。
- テンプレートデザインで指定されたレイアウトのユーザビリティ
- 各ページにおいて、このテンプレートに流し込まれた特定のコンテンツのユーザビリティ
膨大な数のコンテンツ制作者にページテンプレートをばらまいて、そこに指定されたとおりのデザインで何千ページもの制作を開始させる前に、テンプレート自体のユーザビリティに関するデータをもっと集めた方がいいだろう。ここで「テンプレートのユーザビリティ」という場合、これは、そのテンプレートに指定されたレイアウトのおかげで、どのくらいそのページが使いやすくなっているかということを意味する。ページ制作者がそのテンプレートを使ってデザインしやすいかどうかというのも興味ある調査テーマではあるが、これは別問題である。
Fidelity Investments社のThomas S. Tullis (tom.tullis@fmr.com)は最近、同社のイントラネット用テンプレートデザイン5案に対して、そのユーザビリティを審査する調査を行った。ユーザがページ要素を見つける上でレイアウトそのものが役に立っているかどうかをテストするために、ページ上の全テキストは「ギリシャ語化」 (greeked)された。つまり、理解できないまったく無意味な言葉(ブツブツ言葉(mumble text)ともいう)に置き換えられた。テキストが読めない以上、ユーザは、テストタスクを達成するにあたってレイアウトに内在するコミュニケーション的側面に頼らざるを得ない。テキストの内容がまったくわからなくても、レイアウトでユーザが判断できるのだとすれば、様々な執筆者がどんなに品質にばらつきのあるコンテンツで埋めようとも、そのテンプレートは生き残る見込みがある。
テストユーザは、ギリシャ語化されたページ(順不同)のプリントアウトを手渡され、ページをいくつかのブロックに分けて、それぞれが9つの標準要素のうちのいずれに該当するか分類するよう依頼された。ブロックは重なり合ってはならず、入れ子になってもいけない。もしそのページには該当する要素がないとユーザが考えるなら、「なし」とマークすること。調査は5つのテンプレートで行われた。ここではそのうちの2つを紹介する(許可を得て複製)。
各ページテンプレートには、以下の9つの標準的要素が含まれている。それぞれが、この図のどの部分に該当するか、判断してみていただきたい。
- このページのメインコンテンツ
- ページタイトル
- このページの責任者
- イントラネット範囲内でのナビゲーション(例:イントラネットのホーム、検索)
- 最終更新日
- イントラネット識別子/ロゴ
- サイトナビゲーション(例:イントラネットのこのセクション内の主なセクション)
- 機密性/セキュリティ(例:公開、マル秘など)
- サイトの新着アイテム
正解は補足記事に掲載しておいたが、ぜひ、そちらを見る前にご自分で解答を出してみていただきたい。初めてのユーザとしてこの問題に取り組めるチャンスは、たった1度きりしかないのだから。
この表に示したように、ユーザがもっともよい成績を収めたのはテンプレート3であった。標準的ページ要素の67%を正しく識別できている。また、ユーザには、そのテンプレートがどれくらい気に入ったかを、-3から+3の範囲で主観評価してもらった。表にあるとおり、テンプレート1がもっとも好まれているが、このテンプレートでの操作成績はかなり悪い。この結果からいえるのは、単にデザインだけを見せてユーザにどれが一番好きか尋ねるのは危険だということである。ユーザは、何がいいのか、自分でもわかっていないかもしれない。
正しく認識できた ページ要素 |
主観的 アピール度 |
|
---|---|---|
テンプレート1 | 52% | +1.3 |
テンプレート3 | 67% | +0.9 |
最終デザイン | 72% | +2.1 |
2つのユーザビリティ指標(パフォーマンスと満足度)でベストのスコアを収めたのが別々のデザインだったので、この結果に忠実に従い、この両者の最良の部分を組み合わせて、新しい最終デザインを作ることに決まった。この最終デザインを同様の方法論でテストしたところ、元のデザインのいずれにも勝る結果が出た。まさに進歩があったことを証明できたわけである。
ギリシャ語化技法は、ページの量産を始める前にページテンプレート候補に関するユーザビリティデータを収集する手法として、非常に手っ取り早い手法だ。無意味なページは、ユーザが実際に使うことはできないので、具体的に何かを制作する必要がない。代わりに、各デザインはプリントアウトでき、紙に書き込むこともできるわけだ。
参照情報
Tullis, T.S. “A method for evaluating Web page design concepts.” In ACM Conference on Computer-Human Interaction CHI 98 Summary (Los Angeles, CA, 18-23 April 1998), pp. 323-324.
コンファレンスの概要資料を入手するのは、そのコンファレンスに参加しない限り難しいだろう。私がこの参照情報を入れたのは、議論を完全なものにし、Tullisの論文のことを知らせるためである。しかし、私からコピーを配布することはできない。
1998年5月17日