Webページは永遠に

いったんウェブ上にページを載せてしまったら、以後も、その場所に存在し続けるように努めなくてはならない。

  • 他のサイトからリンクされているかもしれない。ページを動かすと、リンク切れを起こしてしまう。新しいユーザを追い返せば、それだけビジネスチャンスは失われてしまう。
  • そのページにブックマークをつけているユーザがいるかもしれない。こうすれば、いちいちあなたのサイトのホームページからリンクをたどらなくても、興味あるエリアに直接アクセスできるからだ。
  • 検索エンジンのデータベースは、そう頻繁にはアップデートされない。あなたがページを削除してしまうと、ユーザは路頭に迷うことになる。
  • 古いコンテンツはサイトの価値を高める。ユーザの中には、昔のページが役に立つ人もいるだろう。どうして、こういった顧客へのサービスをやめてしまうのかね?

はじめの3つの理由は、実際には、なぜ、URLを永久に生かしておかなくてはならないのかという議論なのだ。一度でも外部の世界にさらされたURLは、訪問してきた人に対して、何かしら意味のあるものを返し続けなくてはならない。なぜなら、その可能性は実際にあるからである。ウェブマスターの間ではよくある経験なのだが、サービスを停止したURLへのアクセスは、数年たってもなくならないのだ。

あなたは、古いページの価値はゼロだと思うかもしれないが、それでもなお、古いURLはサポートすべきであり、サイト内でもっとも関係の近いページへ転送するようにしておくべきだ。

古いコンテンツの価値

たいていの古いページには、何かしらユーザにとって価値あるものが含まれているものだ。よって、私は、ページそれ自体を存続させることをお薦めする。もちろん、新しいページの方が古いコンテンツより有益ではあるだろう。だが、古いコンテンツの方が数は多いはずだ。例をあげよう。毎週新しいコンテンツを掲載しているサイトがあるとする。1年後には、このサイトは51の過去の号と、ひとつの新しい号で成り立っていることになる。新しいコンテンツに過去のコンテンツの10倍の価値があるとしても、サイトの値打ちの84%は、過去のコンテンツから生まれていることになるのだ。

4ヶ月前にユーザビリティに関する記事がThe New York Timesに掲載されたのだが、この記事からリンクをたどって私のサイトにやってくるビジターが毎週50人もいる(警告:Timesへのアクセスは無料だが、登録が必要)。リンクのクリック率から逆算すると、この新聞社が古い記事をサーバに保存しておいたことで利益を得た読者の数は、もっとずっと多いということになる。報道記録に関して堅実なオンラインサービスを行う企業という評価を確立するには、とてもよい方法だ。

別の例をあげよう。1996年に私が書いたウェブデザインの間違いトップ10についての記事がある。表に示したとおり、この記事の読者は年を追うごとに増えている。

Year ページビュー
1996年 50,061
1997年 72,454
1998年 149,520
1999年 226,320
2000年 387,884

確かに、「間違いトップ10」のAlertbox記事は、ある意味でウェブ界の古典になっている。だが、平均的なAlertboxコラムでも、「古く」なった後の方が、たくさんの読者を得たという記事が他にたくさんある。典型的なAlertbox記事は、時間の経過と共に約8万のページビューを集めるのだが、そのうちで、「最新」コラムである期間に稼ぐ数は2万にしかならない。

ユーザは古いコンテンツに価値を認める。その理由は以下のとおり。

  • それは、本質的におもしろいので、新奇性が薄れたからといって読む値打ちがなくなるというものではないのかもしれない(例えば、よく書けたエッセイ)。
  • 後の出来事によって、関心が新たになるということもありうる(新しくライバル会社のCEOになった人は、この2つ前の職場では何をやっていたんだろう?)。
  • 歴史的に興味あるものかもしれない(風と共に去りぬは、公開当初、批評家からどのような評価を受けていたのだろう?)
  • 古い製品を調べるのに役立つ(近所の人が、1995年製のHP社のプリンタを売りに出している。自分のニーズはそれで満たせるだろうか?)
  • ウェブサイトに背景知識や、豊かな質感を与えてくれる。ウェブでの真のキラーアプリは、多様性である(Amazon.comは、古い本をたくさんリストすることで多くの売上を上げている。以前なら、そんな古い本は年数冊しか売れなかった。絶版本をリストしても売上は上がらないのだが、これによってサービスの価値は高まり、ユーザが帰ってきてくれる確率は高くなる)。

古いコンテンツのコスト

サイト管理の観点から言うと、古いコンテンツを維持するコストは取るに足りないものだ。ハードディスク容量にかかる経費はほとんどゼロ。しかも、そのページがHTMLの標準に則して開発されているか、あるいは出版データベースに格納されたものであるなら、古いファイルを維持するコストも、ごく低く押さえられる。

古いコンテンツの価値を高めようと思うなら、コンテンツの手入れに少々力を割いておくことをお薦めする。

  • 新しい記事から古いコンテンツへリンクしておくこと。背景知識や補足情報として活用しよう。新しいコンテンツを書く人は、昔のことを知らないこともありうる。そういう場合、この種のリンクを追加するのは編集者の仕事になることが多い。
  • 古いファイルの中のリンクを維持する。実情に合わなくなったものは削除するか、他のものに置き換える。
  • 古いページには、新しいページへの順行リンクを追加する。そうしないと、ユーザは、その後に出た製品や新しい展開について、永遠に気づかない可能性がある。
  • 時代遅れになった情報、誤解の元になる情報を取り除く。最新のデータや、最新のリンクに入れ替えよう(例えば、カンファレンス開催や新製品発売の案内は、そのイベントの議事録や報告書に入れ替えておこう。同時に、今年のカンファレンスへの順行リンクも忘れずに付け加えておくこと)

古いコンテンツを維持するのに必要なコストは、もともとそのコンテンツを開発するのにかかった経費の約10%ほどで済むはずだ。だが、こうすることで、ウェブサイトの値打ちは2倍以上に高まる。なかなか悪くない投資だろう。

時間情報を明確に

最新情報を捜し求めているユーザは、古いコンテンツに出くわして当惑するかもしれない。以下のことを守れば、混乱は最小限に押さえられる。

  • そのページがいつ書かれたのか、はっきりと日付を記載する(年も含む)
  • 目立つように注意書きを付け加えておく。そのページの内容はすでに無効であることを明らかにするためだ(例:「この製品は製造を終了しています」)。
  • 同じトピックを扱う最新のページへの順行リンク

検索結果では古いコンテンツのランクを下げる

何年かして古いコンテンツがたまってくると、検索結果の一覧は古いページへのリンクだらけになってしまう恐れがある。新しいコンテンツの優先順位が高くなるよう、必要な処置を講じておかねばならない。

もっとも簡単な解決策は、検索エンジンで、古いページのウエイトを低くすることである。ウエイトは、そのページの制作日時に基づいてつけるべきであり、最終更新日時(よくメンテナンスしてあるページなら、古いコンテンツでも最近の日付になっていることが多い)にもとづいてはならない点、注意しておきたい。

検索を、単純にキーワードの個数を数える仕事と考えるのではなく、サイトへのインデックスとしてとらえる方が、解決策としてはより進んだものである。このモデルでは、古いコンテンツの検索時のウエイトは、個別の問合せ内容に応じて変化する。完璧にこれを実現するのは難しい調査課題だ。手動でこれに近いことをやるとすれば、コンテンツを手入れする人が、現在の関連性に着目して、メタキーワードひとつひとつの検索ウエイトを変えるということになるだろう。

1998年11月29日