ブログのユーザビリティ:
デザインの間違い・トップ10
ブログは既存ユーザに焦点を合わせすぎていて、重要なユーザビリティの問題を、ないがしろにしている事が多く、サイトを理解し、著者を信頼することを、新規読者にとっては困難にしている。
ブログはウェブサイトの一種だ。そのため一般的なウェブサイトのユーザビリティガイドラインや、今年のデザイン間違いトップ10 の対象にもなる。しかしながら、ブログはウェブサイトの中でも特殊な部類のものだ。ブログには特徴があり、それ故に特有のユーザビリティ問題を抱えている。
ブログの素晴らしい利点の1つは、本質的に「ウェブデザイン」をしなくても良くなるということだ。文章を書き、ボタンをクリックすると、インターネット上でそれが公開される。ビジュアルデザインも、ページデザインも、インタラクションデザインも、情報アーキテクチャも、プログラミングも、サーバメンテナンスも必要なくなる。
ブログは、とても容易に簡単なウェブサイトを維持することを可能にし、その結果ウェブ上で執筆する人の数は爆発的に増えた。これは容易性が重要であるという、驚くべき証明だ。
ブログの2つめの利点は、それがウェブネイティブのコンテンツジャンルだということだ。リンクに依存し、短い文章が好まれる。長い記事の執筆、独自のリサーチ、報告書の作成などを行う必要がない。他のサイトで何か興味深いものを見つけ出し、コメントや追加の例などとともに、リンクを張れば良い。これは明らかに、従来型のサイトを運営するよりも楽で、コンピュータへの敷居を低くすることによる利点を表している。
3つめの利点は、ブログがプラス指向のフィードバック還元システムとして機能する、生態系の一部(Blogosphereと呼ばれることが多い)を担っていることだ。どんな内容でも、良い記事は他のサイトからのリンクによって、プロモーションが行われる。さらに多くの読者/執筆者たちが、その良い記事を読み、さらに良い記事にはさらに多くのリンクが張られることになる。その結果、リンクされる数はZipf分布を描くことになり、良い記事の方に極端に偏ることになる。
ブログの中には、実質的には、わずかな家族や親しい友人だけを相手にした、個人的な日記もある。そのようなサイトの場合、ユーザビリティガイドラインは当てはまらないことが多い。なぜなら読者の既存知識とモチベーションが、第三者ユーザのそれと比較にならないほど上回っているからだ。ただし、自分の母親以外の新しい読者に読んでもらいたいのであれば、ユーザビリティは重要になる。
また、イントラネット内のブログの読者は貴方のことを知っているかもしれないが、ユーザビリティは重要だ。なぜなら、彼等は勤務中にそれを読み、そこには労賃が発生しているからだ。
ユーザビリティ問題
新規読者を増やし、既存読者の拘束時間を尊重するには、ブログが以下のユーザビリティ問題を抱えていないか、テストすることだ。
1. 著者紹介の欠落
ビジネスブログでない限り、企業サイトのような、完全な“about us”のセクションは必要ないだろう。”about us”(私たちについて)は合理的に考えると、”about me”(私について)となる。ユーザは、どんな人のブログを読んでいるのか、知りたいのだ。
この問題は簡単な信頼性の問題だ。匿名ので執筆されたものは、署名されたものに比べて、信憑性が低い。そして、その人が並はずれて有名でない限り、ブログ・タロウ氏がこれを書いたというだけでは、不十分なのだ。読者はタロウ氏のことをもっと知りたがる。彼は、その話題について信頼しうるだけの実績や経験があるのだろうか、ということだ。(もしそのような実績がなくても、それを素直に書き、今までの略歴と、その話題になぜ関心があるのかを書けば、信頼性は上がる。)
2. 著者写真の欠落
著者紹介を載せている人でも、写真を載せない人は多い。写真は以下の2つの理由で重要だ。
- 人柄の良い印象を与えることができる。隠れようとしていないことを示すだけで、信頼性が向上する。また、顔なじみの方が、ユーザは親しみを持ってくれる。
- 仮想世界と物的世界とをつなぐことができる。過去に会ったことのある人は、写真の中の顔を認識し、貴方のサイトを読んだことのある人は、会った時に見覚えのある顔に気付く(たとえばカンファレンス、またはイントラネットのブログであれば、社内食堂で)。
人の脳の大きな割合が、人の顔を認識することに割り当てられている。多くの人は、顔を覚える方が、名前を覚えるよりも得意だ。私はこのことを、1987年にMacユーザの電子掲示板で広く配布された、HyperCardスタックをオーサリングした時、自分の写真を入れたことで、思い知った。その後の2年間、数え切れない人が「貴方の作ったスタック、気に入ったよ」と、顔を覚えていてくれて、声をかけてくれた。
また、もし仕事用にブログを運営していて、プレスで取り上げられることを望んでいるのであれば、ウェブをPRに使うためのレコメンデーションに従い、印刷に使える高解像度写真をダウンロードできるようにしておいた方が、良いだろう。
3. 不明確な記事タイトル
不幸にも、ウェブネイティブであるにもかかわらず、コンテンツを流し読みできるようにするという観点から、ウェブ用執筆ガイドラインに沿うブログ著者はまれだ。これは記事の本文にも当てはまるが、見出しの場合はもっと重要だ。ユーザは、見出しを読むだけで、記事の要点をかいつまむことが、できるべきだ。内容を読まなければ意味の判らない洒落などを、ヘッドラインには使わないようにしよう。
タイトルはマイクロコンテンツだ。それを書くために、相応の労力を費やすべきだと心得よう。単語単位で考えると、見出しの執筆が、全体の中で最も重要な執筆作業だ。
明確な見出しは、検索エンジン、ニュースフィード(RSS)、またはそれ以外の外部環境の中でのブログの見え方で、特に重要になる。そのようなコンテキストの中で、ユーザがヘッドラインしか見ず、その情報だけで記事全体を読むか判断するいということは多い。見出しと一緒に要約も表示されていたとしても、ユーザテストで彼等が見出ししか読まないことが多いということが、判っている。さらに言えば、リンクの一覧を流し読みする時、見出しの最初の3から4語しか読んでいない場合が多いのだ。
悪い見出しの例:
- 貴方は何がお望み?
- みんな!漫画だよ!
- 犠牲者たち放置される
良い見出しの例:
- Die Hunns と Black Halos のライブ写真
- Office Depot がアメリカ政府に 475 万ドル虚偽請求法違反の罰金として払う
(長すぎるが、はじめの単語をいくつか読んだだけで、だいたいの見当はつく) - アイスクリームトラックを教会のマーケティングに使う
この最後の見出しは、教会関連のブログで有効だ。もしアイスクリーム業界のブログを書いているのであれば、見出しの頭に「教会」という言葉を持ってこよう。この見出しの「教会」という言葉は、全てのアイスクリームに関するコンテキストの中では、最重要の情報だからだ。
上で挙げた例を抽出するために、ブログの見出しの一覧を見ていた時、全て大文字で書かれた見出しがいくつかあるのに気がついた。これはどんな時でも、やってはいけないことだ。読むスピードを10%減速し、怒鳴っているような印象を与えてしまうため、ユーザは読む気をなくしてしまうのだ。
4. リンク先が記述と異なる
多くのブログ著者は、「こんな風に考える人も中にはいる」や、「ここやここにもある」といった具合にアンカーを書くことがクールだと思っているらしい。ウェブの基本を覚えておこう。不明確なリンクをクリックしていられるほど、人生は長くない。リンク先がどこなのか、リンク先に何があるのか、明確に書こう。
一般的に言えば、アンカー文字自身か、すぐ隣で、予想のつく言葉を使うべきだ。文章に上手く収まらない言葉を補うためには、リンクタイトルを使うこともできる。(リンクタイトルがどのように機能するか見たければ、「リンクタイトル」というリンクにマウスを重ねてみよう。)
関連した間違いで、内輪の略称を使ってしまうというのがある。たとえば、他の著者やブログを引き合いに出す場合に、ファーストネームを使うなどだ。内輪だけのためのブログでない限り、閉鎖的な徒党と見間違われて、新規訪問者を追い返してしまうようなことは、してはいけない。ウェブは中学校ではないのだ。
5. 過去の名作を埋もれさせてしまう
ファン以外の読者にも、長期的に有益な記事を書いたとする。そのようなクラシックとも呼べる名作を、そのような記事が過去に(たとえば2003年の5月に)あったと知っている人しか見つけられない、書庫の奥にしまい込んでしまってはいけない。
時間が経っても古びない名作をいくつか、ナビゲーションの中でハイライトして、直接リンクを張っておこう。たとえば、私自身が書いたAlertbox記事300回分のリストは、始めに「初めての方にお勧めの記事はユーザビリティの基礎知識とウェブデザインの間違いトップ10」と書いてある。
また、新しい記事から過去の記事へリンクすることも、忘れてはいけない。読者たちが第1回から、ずっと読んでいると仮定してはいけない。彼等が貴方の考えをもっと知りたいと思うかもしれないので、読者にその話題の背景や、今までの経緯を提供しよう。
6. カレンダーだけが唯一のナビゲーション
時間軸が有効な情報アーキテクチャであることは、ほとんどない。だが、それがデフォルトになってしまっているのが、ブログだ。ほとんどのブログ用ソフトウェアは、記事のカテゴリー分けを行う機能を提供している。ユーザが簡単に、特定の話題についての記事を一覧にして見ることができるように、するためだ。この機能は大いに活用しなければいけないが、扱っているほぼ全てのカテゴリーを付記するという、ありがちな間違いを犯してはいけない。その記事が属すべき、最も適したカテゴリーをいくつか厳選しよう。
カテゴリー名は、記事を完璧に絞り込んだ一覧を、ユーザに提供できるに足りるよう、細かく設定されていなければいけない。同時に、カテゴリーの一覧に目を通すのが困難なほど、細切れになってしまっても、いけない。多く話題を構造化するにしても、10から20が妥当な数だろう。
各カテゴリーのメインページで、そのカテゴリーの名作をハイライトして、一番新しい記事から時系列に記事の一覧を載せよう。
7. イレギュラーな更新頻度
ユーザに期待を持たせ、それに応えるのが、ウェブ・ユーザビリティの原理の1つだ。ブログの場合、ユーザはいつ、そしてどれほどの頻度で更新が行われるのか、予想できなければいけない。
ほとんどのブログの場合、毎日更新するのが理想だが、扱っている話題によっては、週刊や月刊でも良いかもしれない。いずれにしろ、発行スケジュールを選択し、それを守るようにしよう。通常は毎日更新していて、たまに数ヶ月、更新をせずに放置してしまうと、最も貴重なリピーター読者の多くを失うことになる。
間違っても話題がない時に、記事を出してはいけない。無駄な情報を垂れ流し、情報汚染を行うのは罪だ。固定周期で更新を行うためには、アイディアを貯めておき、話題が見つからない時に備えるようにする。
8. 話題の多様性
もし、異なる多くの話題を扱っている場合、価値の高いリピーターを集められることはまれだろう。忙しい人は、興味のある話題についての記事を読むかもしれない。だが、彼等の興味がある話題が、他の話題の中でたまにしか出てこないのであれば、リピーターになってくれることは、ないだろう。内容に関係なく全てを読んでくれる人は、(統計的に言うと価値の低い)暇人だけだ。
内容が絞られていれば、いるほど、読者も絞り込まれる。そうした方が、そのニッチでの影響力が大きくなる。専門的なサイトがウェブを支配するのだ。ターゲットは、狭く絞った方が良い。
もし、アメリカの外交政策と、インターネット電話のビジネス戦略の両方について、言いたいことがあるならば、ブログを2つ持とう。必要があれば、いつでも相互にリンクを張ることができる。
9. 将来の上司が読むことを考えていない
ブログ、ディスカッション・グループ、電子メール、どんな形であれ、発言内容を10年後の上司が読んだらどう思うか考えてみよう。一度発言してしまえば、その発言は貴方が思いもよらない数々のサービスによって、アーカイブや、キャッシュとして残り、検索可能な形で記録される可能性がある。
何年も後になって、誰かが貴方を役職に採用しようかと思い、用心のため貴方のことについて、調べ始めたとする。(Googleの次に来るものを考えてみよう。貴方について、デジタル化されたことがある情報であれば、どんなものでも根こそぎ記録し、検索できるようなサービスは、確実に登場する。)彼の目に、貴方の名の下において発行されている、幼稚な「分析」や、醜い攻撃的な発言はどう映るだろうか。
ネット上に出してしまう前に、考え直してみよう。もし、将来の上司に読んでもらいたくない内容であるならば、その記事は中止だ。
10. ブログサービスのドメイン名を使っている
blogspot.comや、typepad.comなどのブログアドレスを持つということは、もうすぐ@aol.comの電子メールアドレスや、Geocitiesのウェブサイトを持っているのと、同じことになる。つまり、幼稚な初心者で、あまり真剣に付き合うに足らないということだ。
誰か他の人に、貴方の名前をゆだねるということは、彼等がネット上での貴方の未来を握っているということだ。サービスの品質を彼等が望めば、どこまででも悪くすることができる。価格をつり上げることも、彼等には可能だ。彼等はコンテンツの上にいくらでもポップアップ広告や、チカチカうるさいバナー広告、またはその他のユーザが嫌う広告テクニックを使うことができる。彼等は、競争相手の広告を貴方のページに載せることもできる。もちろん、貴方はそのブログサービスの使用を止めることもできるが、熱心なリピーター、他のサイトからのリンク、そして検索エンジンでのランキングという痛手を負うことになる。
他人のドメインに長くいればいるほど、独立するための代償は上がっていく。フリーのアカウントを発行してくれるブログサービスは、誘惑的ではある。簡単だし、すぐに始められ、明らかに低価格ではある。しかし、独自のドメイン名を持ち、自分の未来を自分で決める権利を維持するには、年間たったの8ドルしかかからないのだ。ブログを真剣に維持し続けようと思ったならば、すぐに他人が管理するドメイン名から離れよう。長くとどまればとどまるほど、いざ行動を起こした時の痛みが大きくなる。
その他トップ10リスト
- 現在までのウェブデザインの最悪の間違いトップ10過去のトップ 10 リストを全部まとめて、そこから要約したもの。
- ウェブデザインの間違い(1996)私が初めて作成したリスト。喜ばしいことに、この中で取り上げている間違いの多くは、あまり犯されなくなった。
- ウェブデザインの間違い(1999)
- ウェブデザインの間違い(2002)漫画つき
- ウェブデザインの間違い(2003)
- ウェブデザインの間違い(2005)
- ウェブデザインで励行すべきこと
- ホームページ・ユーザビリティの最重要ガイドライン
- 守られていないホームページのガイドライン
2005 年 10 月 17 日