障害者のアクセシビリティ:
実際的アプローチ

障害者にとって使いやすいウェブサイトを作るにはどうしたらいいか、というアドバイスはずいぶんしやすくなった。World Wide Web Consortium(W3C)が策定した公式のWeb Accessibility Initiative Standard(WAI) [訳注: 公式のものではないが、有志の方による日本語訳も存在する] に従えばいいのだ。

ここで提唱されているデザイン標準の中には、ユーザインターフェイス標準のユーザビリティを向上させるのに役立つことがわかっている要素が多く含まれている。中には、明確なチェックリストや、技術的にどうやって実現したらいいかの具体的な指針も示されている。唯一不足しているのは、豊富な実例だ。W3Cにしてみれば、「公式」機関であるという立場上、障害を持つユーザを軽んじるとはどういうことかを示すために、現存する企業ウェブサイトのスクリーンショットを実例に使うわけにはいかなかったのだろう。

実施方法: 優先順位の高いものから修正していこう

私が特に気に入ったのは、優先順位付きのデザインルール一覧表である。

  • 優先度の高いルール17カ条: このルールに従わないと、そのサイトをまったく利用できないユーザがたくさんできてしまう。
  • 優先度が中程度のルール33カ条: これらのルールに違反しても、そのサイトがまったく使えなくなるわけではないが、利用困難になる。
  • 優先度の低いルール16カ条: アクセシビリティの向上に役立つが、準拠しなくともユーザを大きく傷つけることはない。

優先順位の高いルールを守ることは、納得できるウェブデザインにする上で、あらゆるサイトに求められる基本的条件である。デザインの契約をする際に、これらのルールに準拠していないサイトにはクライアントはお金を払う必要がない、という全額返金保証が課せられるようになっても不思議はない。

優先順位がついていなければ、全部で66もあるルールに圧倒されてしまうサイトがたくさん出てきたはずだ。完璧にやるか、それともやらないか、という問いを突きつけられれば、たいていのプロジェクトは何もしない方を選択するだろう。だから、第三の選択を用意することでこの状況を挽回し、一番大事なことから手をつけられるようにしたわけだ。

公式の標準は、何をなすべきであるかを教えてくれる。だが実際には、大規模なサイトでは、これらの標準に優先順位をつけ、段階的にアクセシビリティを実現するよう計画する必要がある。

  1. ホームページ、およびアクセスの多いページは、優先度の高いアクセシビリティルールに準拠させるべく、ただちに再デザインすべきだ。Eコマースでの購入手続き、あるいはその他の重要な取引を首尾よく完了させる上でクリティカルパスとなるページにも、同様のことが言える。
  2. 新規のページは、すべて優先度の高いルール、および中程度のルールに準拠させるべきだ。また、準拠度のチェックは、その組織での新しいコンテンツの確認手順の一部として組み込んだ方がよい。
  3. 中程度のアクセス数のページは、優先度の高いルールに準拠するよう、徐々に再デザインすればいいだろう。
  4. 長期的目標としては、アクセスの多いページは3レベルのアクセシビリティルールすべてに準拠するよう再デザインしよう。同様に、新規ページも優先度の低いルールまでカバーできるように心がけたい。
  5. アクセス数の少ない古いページは、そこで取り扱っているテーマが特に障害を持つユーザに有益なものでない限り、そのまま放っておいてよい。

アクセシビリティ推進者の中には、こういった段階的なアプローチにがっかりする人もいるだろう。あらゆるページがすべてのルールに今すぐ従うべきだ、というわけだ。残念ながら、たいていのサイトではこれは無理な話である。実効性のあるプランを練り、最も重要な改善点から示さない限り、管理職の人たちにアクセシビリティに目を向けてもらうことはできない。

独自のアクセシビリティガイドラインへの準拠

サイト上で特定の技術を使うつもりなら、W3Cのような国際機関が策定した公式のアクセシビリティルールに加えて、その技術ベンダーが出している独自のガイドラインにも準拠するようお勧めしたい。特に、Javaアプレットを利用するつもりならSun Microsystemのユーザインターフェイスガイドラインに、ActiveXを使うつもりなら、Microsoftのユーザインターフェイスガイドラインに従おう。ベンダーが策定したガイドラインを守っていれば、こういった非標準的なウェブコンテンツのアクセシビリティを確保する上で役に立つだろう。

単一デザインのページはなくなる?

WAIは、ウェブデザインの本来の理想を追いつづけるものだ。様々な利用目的にひとつのHTMLページで応えようというのだ。巨大なモニタもあれば、小さなハンドヘルドもあり、目の見えるユーザも、目の不自由なユーザもいるというのに。

単一デザインアプローチにもいくつか納得できる点はある。例えば、どんなウィンドウサイズにも対応できるリキッドレイアウトを用い、特定のサイズのモニターにしか適用できないフローズンレイアウトは避けよう。同様に、シンプルなデザインであれば、画像に適切なALTテキストを加えるだけで、目の見える人にも、目の不自由な人にも同じようにアクセシブルなページになるだろう。

だが、この先もずっと、単一デザインのページが理想的なユーザビリティを提供できるかどうか、私は確信が持てない。例えば、近いうちに、ハイエンドのオフィス用ワークステーションと、小型のモバイル機器とでは、画面サイズにおいて極端な開きがでるだろう。このため、同じページで、この両方を満足させることはできなくなる。始めからこういったグループに向けて制作した方が、目の不自由なユーザにも、その他の障害を持つ人にも、ずっと使いやすいページになると考えている。

「テキストオンリー」版を用意するという昔からのアプローチが、復活するかもしれない。モバイルユーザと障害を持つユーザ、双方のために。とはいえ、状況が違うので、たとえテキストのみとは言っても、最終的なデザインは変わってくるだろう。

各コンテンツごとに、数多くの異なったデザインをメンテナンスしていくなんて、いったいどうやったらいいのだろうか?その答えは、テンプレート主体の、データベースに支えられた出版ということになろう。よりインテリジェントなマークアップを施されたXMLコンテンツが、対象ユーザやデバイスの種類に従って、最適なハイパーテキストユニットに分割されて送信されるのだ。

1999年6月13日

公開:1999年6月13日(原文:1999年6月13日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Disabled accessibility: the pragmatic approach

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