オンラインサービスの世代
※オンライン出版の方向性に関するコラムへの補足記事
オンライン・サービスのUIは、一般にコンピュータのUIより10年遅れていると言われる。帯域幅が足りないのと、最小公分母的なアプローチを取ることがその原因だ。例えば、ウィンドウベースの直接的な操作インターフェイスがマス・マーケットのパーソナル・コンピュータに導入されたのは1984年のことだが、これと同等のユーザ体験が大手オンライン・サービスで提供されたのは、ようやく1995年になってからのことだ。
第1世代:インタラクションのないオンライン・サービス
初期のオンライン・サービスには、ユーザ・インタラクションにあたるものが一切なかった。あったのは、やむことのないデータの流れだけだ。チッカーテープとAPのニュース網が、この世代のオンライン・サービスの代表例だ。
第2世代:文字ベースのユーザ・インターフェイス
オリジナルの文字ベースのCompuServeインターフェイスは、第2世代のオンライン・サービスの代表例だ。ほとんどのBBS(掲示板システム)は、いまだに文字ベースのインターフェイスしか提供していない。従来の行指向のインターネット・インターフェイス(例:FTP)もまた、このカテゴリーに入る。基本的に、ユーザに許された選択肢は、取得する情報を選ぶためにコマンドラインからタイプするしかない。この情報は、スクロールする文字として表示されるが、その文字の内容については、ユーザは操作のしようがない。
第3世代:化粧直しのGUI
America Online、CompuServe用のグラフィカル・フロントエンド、eWorld、Prodigy、Minitelのような文字放送サービス、それにWWW(Javaアプレットのような動的コンテンツを除く)といったものは、つまるところ、すべて古き良きIBM 3270スタイルのインタラクションをなぞったものだ。システムがページ単位で情報を表示し、ユーザはそのページから要素をひとつ選んで、次のページに移動する(いわゆる非同期的対話)。こういったインターフェイスを気の利いたアイコンで飾ることはできるが、ユーザが本当に情報とインタラクトすることできない。次の画面を選ぶことだけが、残された選択肢である。
第4世代:完全ウィンドウ指向のデザイン
初めからユーザ・インターフェイスの専門家によってデザインされたサービス。最新式のウィンドウ・ベースのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスを前提として、最適のユーザ体験を提供する。現在の例でいうと、AT&T InterchangeとMicrosoft Networkがこれにあたる。第4世代のオンライン・インターフェイスには、複数のダイアログ要素が画面上に同時に表示され、ユーザはひとつのダイアログ要素を操作することで、他方のダイアログを動的に変化させられる。
Javaを使ったWWWサービスは、第4世代インターフェイスになる可能性を秘めている。クライアント側に動的なコンテンツを備えた、真のクライアント=サーバ・ソリューションになりうるからだ。Javaサービスの実装は、AOLのような一人前のオンライン・サービスを立ち上げることに比べれば、段違いにたやすい仕事だ。このシンプルさのおかげで、サービスを構築する企業がたくさん増え、幅広いアイデアが実装されることになるだろう。反面、プロジェクトのスケールが小さくなるため、デザインを主導するユーザ・インターフェイスの専門家を雇えないところが大多数となる。だが、デザインのダーウィン主義は、デザインの適者生存につながるだろう。
第5世代:データ中心の統合化
将来的には、オンライン・サービスはユーザのコンピュータ環境と完全に統合され、独立単体のアプリケーションではなくなるだろう。アプリケーション中心のモデルから、データ中心のオブジェクト指向デザインへの移行が進むと、例えば、電子メールで受け取ったレポートが、インターネット・サーバにリンクしていて、書き終えた後で変更のあった段落が1、2箇所ほど自動的に更新される、といったシナリオが実現に近づく。あるいは、表計算シートの重要な数字に変更があり次第、自動的にウェブサーバが書き換わるようにもなるだろう。