文章作成の10のコツ:HCD専門家に求められる文章作成能力
UXデザイナーやUXリサーチャーは多様なスキルが求められますが、そのうちの1つに「文章作成能力」があります。本記事では、文章作成能力の向上に役立つ10のコツを紹介します。
はじめに
UXデザイナーやUXリサーチャーはHCDプロジェクトを推進する上で、ユーザーのインサイトや分析結果をプロジェクトメンバーに正確に届ける必要があり、実際、HCD-Netのコンピタンスマップにも「テクニカルコミュニケーション能力」の1つとして「文章作成能力」が明確に定義されています。
しかし、この文章作成能力を実務の中で体系的に訓練する場は、意外と少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、文化庁が公開している「公用文作成の考え方」をベースに、実務における文章作成に役立つポイントを10のコツとしてまとめました。公用文向けのガイドラインではありますが、基本的な文章作成にも参考になる記述があり(「Ⅲ-3 文の書き方」等)、かつ信頼性の高い情報であることからこちらの資料を参考にしました。
文章作成の10のコツ
以下に、10の基本ルールと文章例を紹介します。文章は、定量調査のレポートをイメージして作成しています。
1. 一文を短く
一文が長くなると構造が複雑になり、主語と述語の対応が曖昧になります。文を区切ることで要点を明確に伝えられます。
- 悪い例: ECサイトの利用率は回答者全体で92.3%と9割を超えており、特に20代女性の利用率が97.1%と最も高く、30代女性でも95.6%と高い水準である一方、60代男性では84.2%にとどまっており、年代差が明確に見られることから、ECサイトの利用状況には年代別の使われ方の違いがあるといえる。
- 改善例: ECサイトの利用率は回答者全体で92.3%と9割を超えている。特に20代女性の利用率が97.1%と最も高く、30代女性でも95.6%と高い。一方、60代男性では84.2%にとどまる。ECサイトの利用には、年代による違いが明確に見られる。
2. 一文の論点は一つに
一文に複数の主張を詰め込むと焦点がぼやけます。文を分けることで、何を伝えたいかを明確にできます。
- 悪い例: サイトAは回答者全体の68.5%が利用しており最も利用率が高いサービスであるが、30代女性では76.8%に達しており特に高い一方で、サイトBは配送やサポートの信頼性が高いと評価されており40代以上の利用が多いことから、サイトごとに支持される年代層と重視される価値が異なっている。
- 改善例: サイトAは回答者全体の68.5%が利用しており、最も利用率が高い。特に30代女性では76.8%に達している。一方、サイトBは配送やサポートの信頼性が評価され、40代以上の利用が多い。サイトごとに、支持される年代層と重視される価値が異なる。
3. 主語と述語の関係を明確に
「誰が」「何を」「どうした」の対応を意識することが重要です。主語が省略されたり途中で入れ替わると誤解を招きます。
- 悪い例: 特に30代女性での利用が高く、他の年代よりもサイトAの利用が進んでいる一方で、サイトBは40代以上の支持が中心になっており、信頼性が理由になっている。
- 改善例: サイトAの利用率は30代女性で特に高く、他の年代よりも高い。一方、サイトBは40代以上の利用が中心であり、配送やサポート対応への信頼がその理由として挙げられる。
4. 修飾語を整理する
修飾が多いと構造が乱れます。長い修飾は前にまとめるか、文を分けると理解しやすくなります。
- 悪い例: 返品対応や配送状況の通知などのアフターサポートが安定しており信頼性が高いと評価されているサイトBは、40代以上の利用割合が高いという点が特徴的である。
- 改善例: サイトBは、返品対応や配送状況の通知といったアフターサポートが安定している。こうした信頼性の高さが評価され、40代以上の利用割合が高い点が特徴である。
5. 指示語は近くに置く
「この傾向」「こうした特徴」が何を指すのか直感的に分かるよう、指示語の直前に対象を置きます。
- 悪い例: ECサイトでは価格やポイント還元が購入理由として挙がることが多い。40代以上では配送の確実さやサポート対応も重視されている。この傾向はサイトBのユーザーにも当てはまる。
- 改善例: 40代以上では配送の確実さやサポート対応を重視する傾向がある。こうした安心感の重視という傾向は、サイトBのユーザーにも当てはまる。配送状況の通知や返品対応への満足度が高く、支持の理由となっている。
6. 受け身をむやみに使わない
受け身が続くと主体が不明確になります。行為者を明示できる場合は能動形にすることで、明瞭な文章になります。
- 悪い例: ポイント還元率の高さが評価されていると考えられる一方で、配送スピードについては十分でないと感じられているケースも見られる。
- 改善例: 多くの利用者がポイント還元率の高さを評価している。一方で、一部の利用者は配送スピードに不満を持っており、セール時などに商品到着まで時間がかかる点を課題と感じている。
7. 接続助詞を多用しない
「が」「で」「て」をつなげすぎると文が冗長になります。文を分けて、論理関係を整理します。
- 悪い例: 20〜30代は週1回以上ECサイトで買い物をする人が3割を超えており、購入行動が習慣化していて、ポイント還元やセール情報をこまめに確認しながら効率的に買い物をしている傾向が見られる。
- 改善例: 20〜30代では週1回以上ECサイトを利用する人が3割を超える。購入が習慣化している層が多い。また、ポイント還元やセール情報をこまめに確認し、効率的に買い物を行う傾向がある。
8. 同じ助詞を重ねない
「の」「に」「も」などの助詞を重ねると、幼く読みにくい印象になります。文を言い換えて整理します。
- 悪い例: サイトAの利用の目的の中心の一つは、価格の安さの訴求であり、日用品をできるだけ安い価格で購入したいというニーズの高さが背景にある。
- 改善例: サイトAを利用する主な目的は、価格の安さである。日用品をできるだけ低価格で購入したいというニーズが背景にある。
9. 二重否定を避ける
「〜しないわけではない」などは曖昧で分かりにくく、読み手に不要な解釈のコストを強います。肯定文に書き換えることで明確になります。
- 悪い例: 50代以上ではECサイトの利用頻度が低いとは言えないものの、若年層のように週1回以上の頻度で継続的に利用しているとは必ずしも言えない。
- 改善例: 50代以上でもECサイトを利用する人は一定数存在する。ただし、週1回以上の頻度で継続的に利用している層は若年層に比べて少なく、目的買いが中心である。
10. 3つ以上の情報は箇条書きに
文中に並列情報を並べると視認性が下がります。箇条書きを使うことで情報を整理し、読みやすくできます。
- 悪い例: ECサイトを利用する主な理由としては、価格が安いこと、品揃えが多いこと、配送が早いこと、ポイントが貯まることの4点が挙げられ、特に若年層では価格の安さを重視する声が多く、一方で40代以上では配送や返品対応といった安心感が重視されている。
- 改善例: ECサイトを利用する主な理由は次の4点である。
・価格が安い
・品揃えが多い
・配送が早い
・ポイントが貯まる
特に若年層は価格の安さを重視する。一方、40代以上では配送や返品対応などの安心感が重視される。
おわりに
プロジェクトメンバーに共有するドキュメントの作成において、正しい日本語を用いること自体は目的ではありません。本来の目的は、読み手がストレスなく情報を取得し、正確な意思決定を行えるようにすることにあります。
今回ご紹介したコツのうち特に1から5までの項目は社内文書やレポート作成にとどまらず、アプリやWebサイト内の説明文、マニュアルを作成する際にも活用できると思いますので、是非ご活用ください。
近年では生成AIによる文章補正の精度が高まっており、ドキュメントの作成や修正は格段に容易になりました。しかし、ツールが出力した文章が本当に伝わりやすい構造になっているかを最終的に判断するのは、人間の役割です。AIを活用する際のプロンプトの指針や、出力結果のレビュー基準といった基本の確認としても、これらのルールを活用してみてください。
【まとめ】文章作成能力を向上させる10のコツ一覧
- 一文を短く
- 一文の論点は一つに
- 主語と述語の関係を明確に
- 修飾語を整理する
- 指示語は近くに置く
- 受け身をむやみに使わない
- 接続助詞を多用しない
- 同じ助詞を重ねない
- 二重否定を避ける
- 3つ以上の情報は箇条書きに
コツと例文をまとめたExcelファイルを以下からダウンロードできます。
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