プロジェクトリーダーの資質

プロジェクトリーダーというのは、苦労が多い割に報われないものかもしれない。そして、UXに関するプロジェクトのマネージメントは、一般的なもの以上に苦労する部分があるかもしれない。

これも、ソシオメディアの篠原さんとお話をしていて出てきた話なのだが、プロジェクトリーダーの資質って何だろうということ。篠原さんが言うには、時と場合によって態度を使い分けることが重要だということで、もっともな話だと思った。

そこで思い出したのが、社会心理学者の三隅の提案したPM理論。集団のリーダーにはP機能(Performance)とM機能(Maintenance)があり、前者は、強圧的になっても集団の生産性を高めようとするかどうかで、それが強いリーダーはP、弱ければpとする。後者は、集団をまとめることに配慮し、民主的な対応をするかどうかで、それが強いリーダーはM、弱ければmとする。こうすると組み合わせとしてPM、Pm、pM、pmができ、それぞれをリーダーシップの類型として考え、それぞれに対してどのようにすれば良いリーダーになれるかを論じる、という話だ。

PM理論のような類型的な話は分かりやすいものの、現実場面でリーダーが常にそのような態度をとっているとは限らないし、またもしそうであれば、その柔軟性のなさが問題になるだろう。リーダーシップに関する論をいろいろと読んでみても、リーダーはかくあるべしという、どちらかというと類型論的な理想論が多いようにおもう。

PM理論に典型的に見られる類型論では、篠原さんの言うような臨機応変性は考慮されていない。しかし、仕事の現場では、部下に対する態度、上長に対する態度、下請け業者に対する態度、同業者に対する態度、学会などでの態度などを臨機応変に変え、複数の顔をもった人格を演じなければならない。そのどれが本当かということはなく、そのすべてが本当の顔なのだ。

しかも、部下に対する態度でも、積極的な部下と消極的な部下に対する態度は当然異なるものになるし、感情的になりやすい部下とそうでない部下に対する態度も異なるものでなければならない、等々。

たとえば、感情的になりやすい部下に対して、Positiveな話とNegativeな話があった時には、Negativeな話を最初にしておいた方が良い場合が多い。それによって部下は意気消沈してしまう可能性があるが、それをPositiveな話題によって徐々に盛り返し、最後は笑顔で終えられるようにするのが良いだろう。さらにいえば、Negativeな話の持ち出し方にも注意は必要で、すべてをこちらから話すのではなく、話の流れでそれがNegativeな結論に至るのだということを相手に自覚させるようにした方がいい。これを逆順でやった場合には、せっかくPositiveな話題で盛り上がった空気が、Negativeな話題で一気に盛り下がってしまう。要するに最後の閉じ方を含めた全体のダイナミズムが大切なのだ。

さらに、近年のUX関係の職場の場合、多くは若い世代の人たちが働いているのだが、そこにはデザインの背景を持つ人、社会科学の背景を持つ人、工学系の背景を持つ人、マーケティングの背景を持つ人など、多様な価値観が混在した形になっている。そうした環境におけるリーダーは、部下の考え方の特質を見きわめ、性格を見きわめ、時に事務的に、時に友好的に、時には強圧的に、と態度を変える必要があろう。

ただ、その態度の変化に首尾一貫性やロジックがないと、あのリーダーは気分屋だ、といった評価を得ることになって逆効果だが、その意味では、その場での対応だけでなく、その場に居合わせた他のメンバーの受け止め方や、当人における事後効果などまでも配慮する必要がある。

近年盛んになっているワークショップのファシリテータは、メンバーを高揚させ、積極的に発言させ、行動させるような配慮が必要だが、リーダーとファシリテータは目的も機能も異なっており、同様に論じることはできない。

リーダー、特に中間管理職的なプロジェクトリーダーというのは損な役回りといえるかもしれない。苦労が多い割に報われないといえるかもしれない。しかし、人を見て、目的を考えて、その人と目的に適合した態度をとれなければ、組織全体の士気や生産性にも影響する。UXに関するプロジェクトのマネージメントは、多分野連携的であるだけに一般的なマネージメント以上に苦労する部分があるかもしれないが、ともかくリーダーとなった方々には是非そうした配慮を心がけていただきたい。

Original image by: Chris Owens

公開:2013年5月22日
著者:黒須教授

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