実燃費の疑問を、給油データ分析で解明!

自動車の燃費への関心が高まる今、カタログ燃費だけでなく実際の燃費も知りたい、という方も多いのではないでしょうか。今回は、イードが保有する給油ログデータを使い、実燃費に関する疑問にお答えします。

  • U-Site編集部
  • 2015年10月15日

ハイブリッドシステムや過給小排気量エンジン、そしてクリーンディーゼルと、自動車の低燃費化技術は各メーカーがしのぎを削っており、エンジニア達は燃費を伸ばすための研究開発を続けています。

「10・15モード法」あるいは「JC08モード法」という一定の条件で測定された「カタログ燃費」は、燃費性能を示すひとつの指標として広く知られていますが、現実世界での燃費(実燃費)とカタログ燃費とのかい離の問題も顕在化しています。

10・15モード法(国土交通省「自動車燃費一覧(H17.3)」
日本の都市交通の走行実態を反映させたもので、シャシダイナモメータ上でこのモードに沿って自動車を走らせ、排出ガスを測定するもの。10のモード(走行パターン)での3回、15のモードでの1回を加えた計4回で測定。
JC08モード法(国土交通省 燃費性能に関する公表関係情報「乗用車・貨物車の2015年度燃費基準スタート」
10・15モード法に比べ、より実際の走行に近くなるように新しく設けられた試験方法。(細かい速度変化での測定、エンジンが冷えた状態からスタートするなど)一般的に燃費消費率はやや低くなる傾向がある。

今月末に開催される東京モーターショーで自動車に対する社会的関心が高まる時期でもあり、今回は、給油情報をもとにした数十万件規模の給油燃費データから実燃費の傾向を分析してみました。

今回、「燃費に地域差はある?」「季節による燃費変動は?」など、4つの疑問について、e燃費データを活用し、分析・検証した結果、東京や神奈川といった渋滞の多い大都市圏や、エアコンを使用する夏期や冬期で燃費は悪化すること、またハイブリッド車は「渋滞でも燃費が落ちない」「冬季の落ち幅が大きい」という特性がe燃費データからも言えることが分かりました。

e燃費データとは、イードが運営するマイカー燃費管理サービス「e燃費」(記事の最後でご紹介)に登録している車種情報や満タン給油法による実際の利用状況下での燃費に関する情報を多く含むログデータです。

地域別分析: 燃費に地域差はある? ハイブリッド車は渋滞に強い?

先ず、地域別の燃費変動を見る際に全国の渋滞状況を見てみると、沖縄県・東京都・神奈川県が上位3都道府県として挙げられました(図1参照)。そこで、特に渋滞の多い東京や神奈川(沖縄はサンプル数が少ないので割愛しました)と、その他の地域で燃費の違いを見ていくことにします。

図1 都道府県別渋滞状況 2014年e燃費アンケートより 都道府県別渋滞状況 TOP2計(渋滞の多い順) e燃費ユーザーに対して定形調査項目や各年でトピックス調査項目を設けて実施した意識調査 調査時期:2014年12月〜2015年1月 調査方法:PCおよびモバイル端末(スマートフォン・フィーチャーフォン等)でのWEBアンケート調査。
図1 都道府県別渋滞状況
2014年e燃費アンケートより 都道府県別渋滞状況 TOP2計(渋滞の多い順)
e燃費ユーザーに対して定形調査項目や各年でトピックス調査項目を設けて実施した意識調査
調査時期:2014年12月〜2015年1月
調査方法:PCおよびモバイル端末(スマートフォン・フィーチャーフォン等)でのWEBアンケート調査。

東京・神奈川とその他の地域で、トヨタ プリウスやアクアといったハイブリッド車や、燃費の良い軽四輪車、小型ハッチバック系、ミニバン/キャブワゴン別に平均燃費を比較しました(図2参照)。いずれの車型においても東京・神奈川の平均燃費がその他地域より劣っていることがわかります。

ただし、全国平均に対する東京・神奈川の平均燃費落ち幅(東京・神奈川÷全国平均)を見ると、e燃費全体(全車種平均)が84.1%であるのに対し、プリウス/アクアのハイブリッド車では97.6%と落ち幅が少ないことがわかります。渋滞に強いというハイブリッド車の特性(減速時に回生ブレーキで回収したエネルギーをバッテリーに貯めて、動き出しなどエンジン効率の悪い場面でバッテリーに貯めた電力を使いモーターで駆動する)が見られます。

また、比較的燃費のよい軽四輪車と小型ハッチバック系を比較してみると、軽四輪車の落ち幅が小さいことがわかります。これは、車重の軽い軽四輪車は加速に使うエネルギーが少ない為と考えられます。

これらの地域別燃費変動要因をe燃費データからも言えることがわかりました。

図2 地域別、車種別平均燃費
()内は全国に対する東京・神奈川の燃費落ち幅比率
e燃費登録データ(2014/1~12月)の燃費データを集計
総給油登録データ(714,727データ)を個人別加重平均後に集計

季節別分析: 季節による燃費変動は? ハイブリッド車は冬季の燃費落ち幅が大きい?

続いて、季節別の燃費変動を見るために同じ車両タイプごとに月別の平均燃費を比較しました(図3参照)。
月別平均燃費をみると、気温が低いため暖房を使うであろう12月・1月・2月や、気温が高いためクーラーを使うであろう7月・8月に平均燃費が悪いことがわかります。

また、車種別にみても同様の傾向がみられますが、燃費のよいクルマほど燃費の変動幅が大きいことがわかります。特にプリウス/アクアといったハイブリッド車でその傾向は顕著にみられ、暖房に弱いハイブリッド車の特性が現れています(ハイブリッド車は不要な時はエンジンを停止するので、普段の発熱量が少ないがゆえに低温時の暖機ロスが大きい)。

これらの季節別燃費変動要因についてもe燃費データからも言えることがわかりました。

図3 車種別、月別平均燃費
e燃費登録データ(2014/1~12月)の燃費データを集計
総給油登録データ(714,727データ)を個人別加重平均後に集計

e燃費とは

e燃費

イードが運営する「e燃費」は、クルマの燃費を携帯電話・スマートフォンから登録し、マイカーをオンラインで管理する“楽しく節約、楽しくエコロジー”するサービスです。実燃費の計測、全国のスタンド情報、ユーザー同士のクチコミ情報など、様々なコンテンツが用意されています。

現在の累計会員は63万人超、2000年のサービス開始以来の累計燃費データが1100万件を超える、日本最大級の燃費情報サービスです。

またe燃費では、ガソリン車だけでなく電気自動車(EV)をはじめとする、次世代自動車に関するサービスのご提供や調査レポートも行っております。

最後に

この記事の詳細は、イードまでお問い合わせください。

イードのリサーチ事業本部では、e燃費データを扱った分析や検証、また、e燃費登録ユーザーへの追加アンケート調査と合わせて分析する他にも、このようなログデータとアンケートを組み合わせた調査・分析を行っております。お問い合わせ・お見積りは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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2015年10月15日14時修正: 「図1 都道府県別渋滞状況」の中で、当初、左側の渋滞の多い地域を「ベスト」、右側の少ない地域を「ワースト」と記載しておりました。それを見た読者の方から、逆なのではないかとのご指摘をいただき、そのとおりでしたので、先ほど、「渋滞の多い地域」「渋滞の少ない地域」と修正いたしました。