インターネットクライアントのデザインにようやく進歩が

この7年間というもの、クライアントソフトウェアには何の進歩もなかった。1993年にMosaicがウェブの特徴を決定付けて以降、ページのレイアウトが派手になっただけで、ユーザインターフェイスは少しもよくなっていない。

このお寒い状況にも、ついに変化が現れてきた。最近出てきたいくつかのソフトウェア製品では、特定の利用目的に特化したよりよいユーザインターフェイスを備えた専用アプリケーションを導入している。

Napster: N対Nのインタラクション

だが、さらに重要なのは、Napsterがインターネットがもともと持っていたネットワーク的イデオロギーの復活の一例でもあるということだ。インターネットとは、そもそも多対多の環境だったはずで、これに比べると、ウェブは、もっぱら一対一の環境であるという点で後退してしまっている。たいていのウェブサイトは、一度にひとりのユーザに自分たちのものを閲覧させているに過ぎない。(そう、私がやっているのもまさにこれだ-このコラムそのものが、ウェブの伝統的利用法の典型的な例である)これまでに多対多をやって成功している例は少なく、eBayなどはむしろ例外だ。

Napsterは数多くのユーザを数多くのサーバに結びつけ、基本的に、インターネット全体を音楽(あるいは、可能性としてはその他のコンテンツやサービスでもよい)獲得のための集合的リソースであるかのようにユーザに提示してくれる。同時に、Napsterは、ユーザがこのリソースを豊かにするために貢献するよう奨励し、彼ら自身が所有している音楽コレクションを、全体の中の一部として利用できるようにもしている。このように、Napsterは、インターネットにおける双方向ユーザインターフェイスの一例でもあるのだ。

Macintosh版Internet Explorer 5: ユーザに主導権を

私は、Microsoftと、彼らのユーザビリティの欠如に関して、時につらくあたってきた。例えば、1997年には、ウェブナビゲーションという観点から見ると、IE 4とNetscape 4はMosaic(1993年産)と大差ないと書いたりしている。公正を旨とする私は、彼らが正しいことをやった時にはMicrosoftを誉めることもやぶさかではない。Macintosh版のIE 5は、まさにこれに値する

  • インターネット スクラップブック:このブラウザでは、今見ているウェブページのスナップショットが保存できる。これにより、まったく同じスクリーンをいつでも再現できるようになった。サーバ側では対応できないものであってもだ。注文番号や顧客サービス情報が記載された確認ページを保存するのには特に重宝する(やむなくプリントアウトするという必要はなくなった)。
  • Page Holder(IE4/Mac版から):役に立つリンクがたくさん含まれたページ(例えば、過去のコラム一覧など)に行き当たったら、そのリンクのリストを別の窓に収納でき、いちいち元のページに戻らなくてもリンクを次々にたどってみることができる。
  • 切り替え可能なスクリーン解像度:この機能は本来、権力志向(だけど無知)なウェブデザイナーにユーザーが対抗できるように用意されたものだ。彼らが、Windows上でテキストを小さく表示するようにフォント指定したおかげで、Macintosh上ではミクロサイズになってしまったりすることがあるからだ。だが、もっと重要なのは、非常に多様なディスプレイ解像度を、ブラウザがサポートするという方向性を打ち出したことで、これは、200dpiのIBM Roentgenのような次世代モニタには、ぜひとも必要な機能だ。高解像度のスクリーンは、オンラインコンテンツを快適に読むためには必要不可欠であり、新しいIBMのモニタ(2000年末に出荷予定)は、ウェブにとって今年のもっとも重要なイベントになるだろう。
  • オークション マネージャ Auction Manager:あちこちのオークションサイトで進行中の複数のオークションをまとめて監視するためのウィンドウ。競り負けている時には、前もって警告してくれるオプションも用意されている。ついにページの概念から前進することができた。だが、機能中毒の最初の兆候でもある。特定目的のための機能を、際限なくブラウザに取り入れるべきではない。さもないと、最後にはMicrosoft Officeみたいになってしまうだろう。こういった特定のアプリケーションは、必要な時に要求すればその都度インストールされるという方がユーザにとってありがたい(もちろん、自動アップデート機能や統合的なインターフェイスも合わせて備えておいた方がいい。ユーザが何100万ものアプレットのインストールを管理する必要がなくなる)。

IE5/Mac版でひとつよくないところ:ツールバーのボタンの色を、ユーザがカスタマイズできるようになっている。これは、色を伝達要素として利用する可能性をつぶしてしまい、ユーザインターフェイスの質を低下させる軽薄な機能だ。IE5/Mac版のボタンは、モノクロだってよかったはずだ。ユーザがアイコンの色を好きなように変えられるようにデザインしなくてはならないのだから。

Composite screen shot of IE 5 toolbar in Grape, Lime, and Strawberry colors
フルーティなカラーで染め上げたIE5/Mac版のツールバー(3種類のプレファレンス設定で構成)

OK、Microsoft、われわれ庶民のためのすばらしい機能を出荷するのは今だ。でも、Windows版IEの色の設定のことは、きれいさっぱり忘れてほしい。

Yahoo FinanceVision: ウェブに統合されたマルチメディア

私は、相変わらずウェブ上でのビデオの使用は時期尚早だと、大筋では考えている。2004年あたりまでは、ほとんどのユーザが十分な帯域幅を持てるようにはならないだろう。

しかし、そろそろウェブ上で、本当のマルチメディア利用に向けた実験を始める時期だ。従来のテレビ放送をユーザに向けてストリーミングするだけでは不十分だ。ウェブユーザにとって、ただ受動的に見るだけなどという体験は、ただ退屈なだけだ。彼らは、自分たちが主導権を持つことに慣れている。

本物のマルチメディアを目指すなら、複数のメディアを統合する必要がある。単体のメディア(例えばビデオ)では不十分だ。

Yahoo FinanceVisionは、ビデオとウェブでの体験をひとつに統合しようという試みとしては、初期段階のものである。FinanceVisionには興味ある点が2つある。

  • FinanceVisionは特化したアプリケーションであり、よりよいインターフェイスを提供するために、ウェブウラウザの枠を打ち破っている。にも関わらず、ダウンロードには時間がかからない(1MB)。インターネット接続、ウェブ画面の描画、ビデオ再生といった機能は、もともとユーザのコンピュータに備わったコードを利用しているからだ。標準的なウェブコンポーネントをオペレーティングシステムに組み込むことの是非については大きな議論になっているが、このおかげでYahooのような独立のソフトウェアベンダーが、ゼロからすべてを作り直すことなく、豊かなプラットフォームを利用するだけで済むようにもなっているわけだ。
  • FinanceVisionのウィンドウには、ビデオ映像、ビデオ映像の切り替え専用ボタン、それに操作用エリア(右上部)がまとめられている。操作用エリアには、ビデオに合わせて補足的な情報や操作用の画面を表示する。このエリアには付加価値のついたリンクが含まれていることがあって、このリンクをたどると、ビデオで流れている映像に関する、より詳しい情報を得ることができる。生放送のインタビューの最中には、操作エリアを通じてユーザが質問を投稿できるようになっている。さらに、操作エリアを通じて、アンケート調査を始めとした、多数のユーザの参加を求めるような手段を放送中に利用できるようにもなっている。

Yahoo FinanceVisionアプリケーションウィンドウのスクリーンショット

インターネットにふさわしいビデオ作りになっている点に注意:

  • 背景はモノクロ。より小さく圧縮できるし、余計なディテールが入り込まない。
  • 人物ひとりに絞ったクローズアップ:小さなビデオウィンドウにはぴったりだ。
  • ホストはシンプルなモノクロの衣装を身に着けている(ゲストはTV放送に出演するときと同じような格好をしていることが多い:PR責任者は、事前の忠告を怠ったようだ)
  • 落ち着いたカメラワーク:ズームやパン、あるいはカットやフェードはめったに使わない。

スクリーンショットにも見られるように、ユーザが操作エリア、もしくは生データ配信(下部左)に現れるリンクをクリックすると、FinanceVisionウィンドウの右下エリアにウェブ情報が表示される。ユーザがよほど大きな画面を使っていない限り、このせまいエリアに表示されるウェブページは、かなり見苦しいものになるだろう。もちろん、将来的には大画面も珍しくなくなるだろうが。

FinanceVisionの重要なところは、異なった形態のメディア(ビデオ、データ配信、操作、フィードバック、ウェブページ)を複数の仕切りで統合し、配置した点にある。

FinanceVisionは、ビデオとウェブを統合しようという試みのほんの端緒でしかない。ビデオウィンドウで放送が続いている最中に、並行してウェブページを読もうとすると、ちょっと混乱してしまう。将来のバージョンでは、個人用ビデオサーバの教訓を生かして、「静止」ボタンを用意するべきだ。こうすれば、届いてくるビデオをハードディスクに保存でき、その間、ウェブコンテンツにユーザが集中できるようになる。

ビデオエリアと操作エリアが、視覚的にほとんどかみ合っていないのも気になる。司会者は、ほかのエリアの中のどこをクリックすればいいのか、どの質問に答えればいいのか(時には、個人的に電子メールで質問することもある、と司会者のひとりは語ってくれた)、簡単に指示できるようになっていていいはずだ。気の利いたアニメーションを使えば、ビデオ司会者が調査を中断して、操作フィールドに引き渡してしまうことだってできるだろう。1997年2月の私のコラムテレビとウェブの出会いでは、ビデオの中でもっとうまくウェブコンテンツを活用するためのひとつの試案を視覚的に展開してある。統合化のために、半透明のオーバーレイを使うのも一法だろう。

2000年4月30日