2000年のWebを予測する
1999年、ウェブにはたいした変化がなかった。だが、2000年には、もっと根本的な変化が起こるだろうと考えている。
マイクロペイメントの開始
ウェブ上での高品質なサービス、そして継続的なビジネスモデルのためにはマイクロペイメント(小額課金システム)が必要だと、私はもう何年も言い続けてきた(なぜなら広告は役に立たないからである)。そして、何年もの間、マイクロペイメントの実現が遅々として進まないことに失望してきた。特に、DigitalがCompaqに買収された際に、MilliCentが闇に葬られてしまったのは悲しかった。インターネット経済界の連邦準備銀行になれたかもしれないのに、無策にもただ手をこまねいてじっとしているだけだったのだ。
2000年には、マイクロペイメントサービスの第1波がやってくると確信している。MilliCentにだってまだチャンスがあるが、他にも同じくらい、あるいはもっとよさそうなソリューションが出現している。
最初のうち、マイクロペイメントは、ユーザがどうしても手に入れたくなるほど重要なコンテンツ、サービスにのみ利用されるだろう。最初のうち、ユーザーは支払いサービスのソフトをダウンロードし、インストールし、加入申し込みするのは面倒くさいと思うはずだ。特に複数の支払いサービスが並存競合している状況では、何度もこのプロセスを繰り返さなくてはならない。オペレーティングシステムに統合されれば、マイクロペイメントを取り巻く状況はかなり改善するだろう。誰かがひとつのサービスを選んで、あらかじめインストールしておくのだ。だが、現状ではユーザが苦労するしかない。このために、2000年中には、普段のブラウジングでマイクロペイメントが利用されるまでには至らないだろう。
2000年中は、マイクロペイメントの利用は垂直マーケット、および付加価値コンテンツに限られるだろう。この種のコンテンツのほとんどはかなり値打ちのあるものなので、マイクロペイメントとは言えない価格になるかもしれない。
もし特殊なソフトウェアをインストールしなくてはいけないのなら、映画評といったものには、課金システムは利用できない。マイクロペイメントを利用できるユーザが十分に増えた時点で、たとえ、絶対必要というほどでないコンテンツでも、よくできたものには課金するということが普通に行われるようになるだろう。2002年には、こういう状況になると期待している。
モバイルウェブ
1999年に行ったモバイルアクセスについての予測は外れたが、ようやく2000年には実現するだろうと考えている。
ワイヤレスでインターネットにアクセスしたことのある人は、たいていその経験を絶賛している。例えば、Ricochetユーザーはレビューで最高点をつけている。クオリティの高さと、帯域の速さ(現在は28.8だが、まもなく128kbpsになる)が評価されたのだ。残念ながらRicochetが利用できるのはシリコンバレー、シアトル、ワシントンDCだけだ。売れっ子のコンピュータコンサルタントで、Microsoftへ行くことがあり、連邦政府ではロビー活動をやる人間にはこれでも十分かもしれない。だが、カバーしている地域がこれだけでは、平均的なビジネス旅行者のニーズはまず満たせない。
Ricochetはすでに6億ドルの資金を調達し、これを使って2000年中ごろまでに全国をカバーすると言っている。これが、2000年にワイヤレスでのウェブアクセスが大きく躍進する要因のひとつだ。電話会社の中にもワイヤレスインターネットアクセスを提供するところがある。だが、それらはサービスエリアが狭いし、スピードも遅く、加入者を詰め込み過ぎてキャパシティを超えている。最悪なのは、開かれたIPの未来を否定するものでもあることだ。
こうした問題にも関わらず、モバイルインターネット接続は2000年内に倍増するだろう。ワイヤレスモデムが標準で組み込まれたPDAが発表されれば、最大の進歩になるだろう。Palm Pilot VIIが最初だったが、もちろん、これはウェブデバイスとしてはほんの始まりにしか過ぎない。
モバイルウェブのバリエーションとして、操作性の限られた携帯電話というのは、ひとつの可能性だ。もちろん、電話がまともな画面を備えた本物のPDAみたいになることはないだろう。だが、2000年の時点での一時的なソリューションとしては、たいへん興味ある動きを見せるはずだ。
サービスの切り売り
モバイルウェブサービスのひとつとして、PCS電話(PHS)を通じてAmazon.comで買い物ができるようになることが期待される。書籍はISBN番号で完全に特定でき、ISBNは、電話の番号ボタンからでも簡単に入力できるからである。このサービスが軌道に乗れば、独立系書店の多くは廃業に追い込まれるだろう。わざわざ出かけていって、好みの本を探すということは不要になる。レジで並ばされた挙句、その後、買い物の続きで、重たい荷物を持ってモールを歩き回る必要もない。電話を取り出して、ISBNを入力、30%割引価格で書籍が届く。
一般的に、ウェブは、もっとも安い価格で製品を購入するのには役立つ。一方、顧客が欲しい商品を見つけるのに役立っているか、というと、(現在、さかんに喧伝されている事実に反して)モノを売るウェブサイトは、ますます信頼できなくなっているのが現状だ。
解決方法:異なったレベルのサービスを分業化する。アドバイスはある情報源から、実際に物を買うのはまた別のところから。そして、両方が支払いを受ける。モノを売るサイトは、売上から利益を得られればよいだろう(現状、そうでないことは承知している)。さまざまなアドバイスを提供するサイトは、マイクロペイメントと提携プログラムで利益を上げるのだ。
ぶらぶら見て回って、物理的な製品に触れ、実際に試してみるために料金を支払うという物理的体験環境が出現するのではないかと私は予想している。とはいえ、物理的体験を切り離すのは、2002年くらいまでは一般化しないだろう。
2000年問題
インターネットのインフラそのものには、支障はないだろう。だが、個々のウェブサイトでは2000年問題に見舞われるところもでてくるだろう。上級ソフトウェア設計者の監督を受けることなく、急ごしらえででっちあげたソフトで動いているサイトがあまりにも多いからである。
例:ParamountのStar Trekウェブサイトでは、「Fair Haven」の放送日が1900年1月1日になっている。
1999年12月26日