Doc Searlsの売上が止まった理由

新しい納品(fulfillment)プロバイダに変更したがために、売上のすべてを失ったウェブサイトがある。ユーザビリティの低さがその理由だ。将来、評価管理とウェブウォレットが普及すれば、条件は平準化されるだろう。今のところ、最良の納品プロバイダという評価を受けているのはAmazonだが、このアドバンテージも長くは続かない。

Doc Searlsは、ウェブの利用に関するパラドックスを発見した。

  • かつて、彼のサイトではたくさん本が売れていた。Amazonにリンクして、納品を任せていたのだ。
  • サイトを変更して、独立系書店Wordsworthにリンクし、納品を任せるようになって以降、本はまだ1冊も売れていない

納品プロバイダを変えただけで、どうして売上がストップしたりしてしまうのだろう?

その答えは、1999年11月に発表した私のAlertboxにある。ユーザビリティが参入障壁になっているのだ。ウェブユーザはますます忍耐力がなくなっていて、すぐに見返りを求めたがる。新しいインターフェイスを学習するなんてまっぴらごめんだ

  • 平均的ユーザにとって、Wordsworthは新規の納品チャンネルだった。このため、わざわざ時間を割いてまで、その使い方を学ぼうという気にはならなかったのだ。一方、Amazonの使い方なら、ほとんどの人がすでに心得ている。
  • 新しいユーザインターフェイスを学習するだけでは済まない。ユーザは、新しいサイトで登録しなおすというわずらわしさに打ち勝つ必要がある。一方、Amazonになら、ほとんどの人がクレジットカード番号と送り先住所をすでに登録済みである。

現在のWordsworthのデザインは、購入しようとする人にとって、さらなる障壁となっている。なぜなら、非標準的なデザイン要素がいくつか採用されているからだ。

  1. ショッピングカートのことを、「カート」と言わず「バッグ」と呼んでいる。ここが目にとまるユーザも、数人はいるはずだ。
  2. 「バッグに追加」を選択しても、ショッピングカートとその中身を表示する確認画面が出てこない。同じページに戻るだけだ。これでは、何も起こらなかったと思い込むユーザがたくさん出るだろう(唯一それが確認できるのは、画面のはじっこの微妙な変化、「アイテム数」という欄が1に変わるということだけだ)。このサイトは機能していないと思い込んで、たいていのユーザがここでつまづいてしまうだろう。クリックしてバッグに追加しても(見かけ上は)何も変わらないからだ。ダウンしているように見えるサイトに付き合ってくれるようなヒマ人はいない。
  3. はっきりしたチェックアウトボタンがない(「チェックアウト」という言葉は書いてあるのだが、白色のテキストなのでハイパーテキストリンクには見えないのだ)。ここまで生き残ってきたユーザも、ほとんどがここで立ち往生してしまうだろう。どうやったらいいかがひと目でわかるようになっていない場合に、サイトの使い方をわざわざ調べてくれるようなヒマ人はいない。

私がこれまで何度も口を酸っぱくして言っているとおり、非標準的なデザインは、即、売上の減少に直結する。

注意して欲しいのは、以上の議論は、すべて経験を積んだウェブユーザに限った話だということだ。新規ユーザにとっては、AmazonであろうがWordsworthであろうが、学習への意欲には影響がない。だが、新規ユーザがThe Searls Groupのような専門的なサイトにたどりついて、そこで始めてEコマースを体験するなんてことはめったにないことだろう。

ブランドは一過性のアドバンテージ

新規ユーザといえども、WordsworthよりAmazonに傾きがちだ。これは、Amazonが現状、ブランド力で優位に立っているからだ。

  • ユーザは、一杯食わされるんじゃないかということが、とても心配だ。荷物はちゃんと着くだろうか?間違った品物が届くんじゃないだろうか?
  • 終わりなきマーケティング合戦の渦中に巻き込まれるのではないか、というのもユーザの不安のタネだ。「特価品」のお知らせで、メールボックスがあふれ返るかもしれない。

よく知っている会社を利用したほうがいい。

ウェブ上のどこと取引するか判断する際にユーザが利用する手段としては、将来的に、ブランド力は、評価管理システムにその地位を譲ることになるだろう。ウェブサイトにアクセスすると、その会社が過去に顧客に対してどういう対応をしてきたかを示すフラッグが、画面上に表示されるようになる。バナー広告も同様だ(もし、バナー広告がそのころまで残っていたとすれば、の話だが)。すべての広告には、独立の評価機関によるレーティングがつくようになり、信頼できるものか、眉に唾した方がいいものか、教えてくれるようになるだろう。ひっかけ広告よ、さらば。

評価管理システムがあれば、ユーザは、大企業と同じように、小さな無名の企業とも安心して取引ができるようになる。事実、小さな会社の方がよりよい顧客サービスを提供しているのが普通なので、ブランド力から評価システムへのシフトによって一番得をするのは彼らなのだ。

ユーザビリティ障壁も低くなるだろう。シンプルかつユーザ中心のデザインにする必要性を、より多くのサイトが認識するようになるからだ。ウェブユーザビリティの基本法則に従えば、より平準化が進展することだろう。

ウェブウォレットで入力の障壁を乗り越える

登録して、個人情報を山ほど入力させられるというのは、新たなサイトを利用するにあたっての大きな障壁になる。広く受け入れられたスタンダードとして適切なウェブウォレットが利用できるようになれば、この問題はたちまち解決するだろう。

ユーザは、インターネット上のありとあらゆるサイトで「1.5クリックショッピング」ができるようになる。ウェブ上で気に入った製品を見つけたら、それがどこであろうと、「WebWalletで購入」などと書いてあるボタンを押すだけでよくなるのだ。そうすると、シンプルなダイアログボックスが出てきて、ユーザは課金を承認できるようになる。ウォレットサーバは販売者に支払いを行い(ユーザに課金し)、プライバシーを保護しながら、送付先住所を販売者の納品部門に送信する手段を提供する。

昔からある名簿屋は、送付先住所を守るということにかけては、実に見事な手法を編み出している。ウォレットサービスは、時折、ダミー住所を使ってテスト注文を出すのだ。この住所あてに少しでもスパムのようなものが届いたら、個人情報を悪用したということでその業者はシステムから締め出される。売上が大事だと思うなら、犯すべきリスクではない。

Amazonは過大評価されているかもしれない

このコラムで分析したことから、2つの正反対の結論が導き出される。

  • 短期的には、Amazonは無敵だ。他のサイトはAmazonからお客を奪うのに大変な苦労を強いられるだろう。驚異的に優れたユーザビリティを提供しない限り、これは難しい。こういったサイトにとって不運なことに、Amazonは、常に優れたユーザビリティを備えている。これを乗り越えるのは非常に難しい。
  • 長期的には、Amazonは現在の特別な地位を失い、他のサイトと平等に戦うことを強いられるようになるだろう。ブランド力のおかげでAmazonが得ているマーケティング上の優位性を、評価管理システムが無効にしてしまうのだ。Amazonがワンクリックショッピングで築いたユーザビリティ上の優位性も、ウェブウォレットで帳消しになる。

たとえ他のサイトと同じ土俵の上で戦うことになったとしても、Amazonは勝ち残るだろうと私は考えている。ウェブサイトのほとんどが基本的なユーザビリティの法則に反していて、Amazonよりもずっと使いにくいからだ。Amazonがユーザビリティ面でリードを保っている限り、現状の優位性を2つ失っても何とかなるはずだ。

とは言うものの、Amazonの株式評価は、現実よりもリードの幅を過大評価している可能性がある。確かに、ほとんどのウェブサイトは五里霧中といっていいが、中にはデザインをシンプルにし、見た目の華やかさよりも顧客のニーズにフォーカスを置いた優れたサイトも出てきているのだ。

2000年8月6日

公開: 2000年8月6日 (原文:2000年8月6日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Why Doc Searls Doesn't Sell Any Books

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