ユーザー調査を踏まえて行動を起こす

ユーザー調査は、ユーザー行動の理解を築くための学習機会を与えてくれる。しかし、調査の結果と自分の信念との間にできる違いを埋める必要がある。

ユーザー調査の恩恵は、オンラインシステムでのユーザー行動に関する大量の知識の構築だ。企業が、ウェブサイトやイントラネットのデザインを勘だけで行わなければいけない時代は遠い過去の話だ。問題は、蓄積された調査結果の膨大な量に圧倒されてしまうかもしれないということだ。さらに問題となるのは、ユーザー調査は理解して、それに基づいた行動を起こさなければ、1 円の利益も生まないということだ。

ここに現在私たちが持っているユーザビリティ知識の量を測るための目安を示す:私たちは合計 3,326 ページのユーザビリティ調査の報告書を発行した。これら報告書の中には 1,217 の基本的なデザインガイドラインと、1,961 のスクリーンショットを含んでいる。これら全てには、どのような特定デザインが実際のユーザーの手助け、又は妨げになったかという情報をもっている。他の研究者たちも調査書を発行しているし、あなたの会社の中にも特定分野について研究しているユーザビリティ部門や、専門のコンサルタントがいるかもしれない。

結果として、ユーザー調査によって得られた知識の大きな塊ができているわけだ。では、どうやってこれら知識を活かせばよいのだろうか。

初期ステップ

ユーザー調査はリアリティチェックだ。人々がコンピュータを使用したとき、現実では何が起きるのかを教えてくれる。顧客ニーズを思索することもできるが、見つけ出すこともできる。後者のほうが成果を出しやすいアプローチだ。

調査は、ユーザーがオンラインで実際どのように行動するのかを教えてくれる。そしてそれは、デザインを組み立てる上で確固とした基礎になる。今でも私は、自分でつくったデザインにユーザーテストを行うことを勧めている。何か新しいアイディアを思い浮かんだら、まずはペーパープロトタイプをつくり、テストを行えば、機能しないアイディアを実装するのに経費の無駄遣いをする必要もなくなる。しかし、もし実際の人間行動に基づいたデザインアイディアからはじめるならば、仮説的または理想的なユーザーを想定したデザインよりも、ユーザビリティの問題をかなりの数、回避することができる。

長い調査結果のリストを見て、はじめは圧倒されてしまうかもしれない。少しずつ取り入れるようにお勧めする。たとえば、自社のホームページや典型的なコンテンツページを、調査結果を念頭において見直してみるのだ。プリントアウトしたものに、デザインガイドラインに違反している部分、またはユーザーの障碍になりそうな部分に印を付ければよい。

なじみのある事例に重ね合わせて、一般的な事柄を明確にする。これは理解を深め、将来のデザインプロジェクトに役立たせることができる、よい手法だ。

調査結果をチェックリストとして使うことも可能だ。作ったデザインが、各ガイドラインに沿っているか確認しよう。もし違反している箇所を見つけた場合は、そのガイドラインはどのような調査結果に基づいているのか、さらに詳しく調べればよい。そこで得た新しい知識に基づいて、あなたはデザインを変えて一般的なユーザー行動に沿ったものに変えようと判断するかもしれない。あるいは、もちろん、調査結果に異論をもつかもしれない。

異論への対処

人々が、調査研究とその結果に異論を唱える主な理由は 2 つある。自分の行った調査が異なる結果を示しているからか、または個人的な意見や好みが調査結果の推奨しているものと異なるからだ。

発行されている調査結果と、あなたの調査結果が食い違っている場合、2 つの選択肢がある。まず、あなたが行った調査に方法論的な欠陥があった可能性がある。そのため、その調査をもう一方の結果と照らし合わせて見直すべきだ。正しくユーザーテストを行ううえで考慮しなければいけない問題は、無数にあるのだ。次に、もしかしたらばあなたが扱っているケースは例外で、本当にあなたの結果は発行されているものと違うのかもしれない。そのようなケースは存在することは確かだ。しかしそのような例外は、人々が期待するよりもっと希少なのだが。

もしあなたの直観が発行されている調査結果と食い違う場合、将来の洞察を改善することができる学習機会と考えよう。デザインは宗教ではない。先駆者たちの教えを、全て守る必要はないのだ。デザインは経営判断だ。あなたはデータに基づいて、あなたの企業の利益が最大になることをすればよく、デザイン賞を勝ち取るのが目的ではないのだ。

もし強く異論を唱えるなら、あなたのデザインが希少な例外なのかを判断するための調査をいつでも行うことは可能だ。基本的なユーザビリティガイドラインは 90 %のケースで正しい。残りの 10 %を例外にする特別な状況は、沢山ある。そのような場合、解決策は一般的なレコメンデーションとは異なるものになる。

もしオンラインビジネスを経営しているのであれば、あなたはユーザーエクスペリエンス業界にいることになる。全ての評価は、ユーザーインタフェースを通して行われる。ユーザー調査を解釈し、いつユーザビリティ調査を行なうべきか判断できるような専門的な知識を身につけることは肝要になる。これはあなたがユーザビリティの専門家でなく、調査を自分で行いたいとは思っていなくても、同じことが言える。そのような場合でも調査報告書と対峙し、調査結果をビジネスの中で活かせなければいけないのだ。

公開:2004年11月8日
著者:Jakob Nielsen
原文:Acting on User Research

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