イントラネットポータルの簡素化

イントラネットのポータルを調べた結果、スリム化された情報アーキテクチャと、コンテンツを新鮮に保つことへの新たな努力が見られた。担当業務内容に合わせたパーソナライゼーションなど、過去の発見も再度確認された。

前回イントラネットポータルのユーザビリティ調査を行ってから、約 3 年の月日が経った。イントラネットの平均的な再デザインは 3 年なので、イントラネットポータルのデザインを見直してみる、良い時期だろう。

現在、運用されているデザインがどのようなものなのか調べるため、新たなポータルのプロジェクトを調べ、前回の結果と比較してみた。

結果: 変化なし

全体の流れとしてみると、3 年という時間は、あまり長い時間とはいえない。そのため、最初に行った時の結果が未だ有効であっても、驚くことではない。実際、最初のレポートで報告された 45 のベストプラクティスはどれも変っていない。もちろん、新たに多くの洞察を得たが、3 年前良かったことは、今でも良いのだ。

特に、新たに調べたプロジェクトは、前回判った以下の結果をそのまま確認する結果となった。

  • ポータルソリューション製品は、未だにそのままでは、満足できるユーザビリティを提供していない。これは以前にも増して、不名誉だと思わなければいけないことだ。なぜなら私たちは、イントラネットのユーザビリティについて、以前よりもかなり多くのことを知っているからだ。ソフトウェアベンダーは、製品にその知識を反映させる必要がある。
  • 単一ログインは、未だ理想であっても、現実にはなっていない。これは最も切望され、ヘルプデスクへの問い合わせを大きく節約する機能の 1 つだが、ほとんどの企業は未だにそこまで到達していない。ユーザはタスクを行うために、未だにログインを何度も繰り返さなければいけない。しかしながら、繰り返しログインにもユーザビリティ上、都合が良いことがある。取り扱いに極めて注意が必要な機密情報などを扱う上で、安心できるのだ。
  • 各ユーザ別のパーソナライゼーションは、未だに希だ。企業は役割別のパーソナライゼーションの方が役に立つと考え、そちらを採用することが多い。たとえばいくつかの企業は、特定の情報やポートレット(portlet: ポータル内を構成する機能的な部品)を、特定の役職に付いている人、特定の場所で働く人たちだけに、提供している。
  • どんな場合でも管理方法は、技術的なことよりも、ポータルを成功させるための重要な課題になる。今回行った調査では、それが特に目立った。よく使われていた方法の 1 つに、様々な部門から代表者を集めて、舵取りを行うためのグループを作るというものだ。また、ポータルプロジェクトは、デザインの統一を計り、ポータルに情報コンテンツやアプリケーションを移行させるための、しっかりとした規則を確立する必要がある。
  • ROI があまりにも評価されなさすぎている。いくつかの企業は、私たちが作成したイントラネットテスト報告のタスクにかかる時間のベンチマークと照らし合わせ、彼等の能率向上率を他の平均的なイントラネットと比較し始めてはいるものの、良い能率向上率の計測を行っているポータルプロジェクトが、少なすぎる。それに比べて一般的なのは、ユーザの満足度と利用頻度を計測することだ。たとえば、ドイツの Fujitsu Siemens Computers では、ポータルの利用が 3 倍になったことが、判った。(私たちが調べた中では、2 倍が一般的な数字だ。)イントラネットを使うかどうかは完全に自由であるため、利用頻度の増加は、ポータルが従業員の仕事の手助けになっているという強い兆候だが、それも間接的な目安でしかない。

新しい発見

まずポータルは、(それを使うユーザや企業ではなく)そのポータル自体のために作られたようなものが多すぎる。企業の中には、複数の “portal”(正門)を持っている場合もある。これは、多くのソフトウェアベンダーがトップにのし上がろうと、自分たちが偉いと見せかけるために、その製品の中にポータルを入れているためだ。これでは機能するはずがないのは、明らかだ。なぜなら、企業のポータルは、その正門という意味の通り、イントラネットと内包する全てのコンテンツやアプリケーションへの唯一の入り口でなければいけないからだ。つまり、ポータルは 1 つしか持ってはいけない。それ以外のものは、全て従属的なものでなければ、ポータルというコンセプトは機能しないのだ。

2つめに、時とともに増える古くなったポータルコンテンツだ。ポータルの管理者はそれに対抗するために、事細かな努力をするようになった。Defense Finance and Accounting Service の Project CleanSweep は、徹底的にポータルの中のページを検査し、オーナーに対して古くなったコンテンツをいつまでに更新しなければ、削除されると、警告する。他のポータルでは、コンテンツ管理システム( CMS )を使い、全てのページの更新予定日や、賞味期限を追跡できるようにしていて、コンテンツの作者はそれを作成した時、または更新した時、その予定日を決めなければならない。

3つめに、多くのポータルソフトウェアが未だに複雑すぎるため、ポータル管理者はポータルの機能を使うためのトレーニングの必要性を認識し始めてるということだ。たとえば、とある大企業が調べた結果、26 %のページが間違えたカテゴリのメタデータを含んでいたことが判った。メタデータのような、複雑なコンセプトを誰もが理解できると、思いこんではいけないということだ。

4つめに、ユーザによる受容には、特に注意が必要だということだ。ある(匿名希望の)大企業は、これが原因で、完全にポータルプロジェクトに失敗した。その性能は悲惨ともいえるほど遅く、ユーザビリティも悪すぎて、従業員が単純に利用するのを単純に拒否したのだ。その度合いは、古いポータルの方が 8 倍も利用されていたほどだった。そのポータルプロジェクトは独りよがりでしか、なかったのだ。そのイントラネットを救うべく、新しいポータルは 1 年も使われないうちに、廃棄された。

ポータルのプロジェクトは、最初からユーザのニーズに注意を払い、様々なテクニックを使ってユーザの受容性を高めれば、大概はもっとハッピーな結果となる。たとえば、ポータルのホームページでの、マルチメディアやビデオクリップの有効利用が見られ始めている。ユーザ投票のような、ちょっとしたお遊びだけでも、ポータルを魅力的で楽しいものにしてくれる。

5つめに、情報アーキテクチャ(IA)が簡素化しているということだ。たとえば、Sprint はポータルのタブの数を、それに対応する主なカテゴリの減少に伴い、8 から 5 へと減らした。イントラネットでの良いユーザ体験をどのように造るか学ぶとともに、ポータルチームは、社内全域で調べて蓄積した結果を活用し、最も役に立っている部分を強調して力を注ぐことができる。

ポータルのホームページに使われるポートレットにも、同じようなトレンドが見られる。数を減らし、もっと便利にするということだ。以前のポータルはポートレットを、それを設置する理由には不十分なコンテンツと機能しか提供していなくても、可能だというだけの理由で実装してきた。他のデザインの簡略化として挙げられるのは、タブを二重構造にして、タブの中にタブを造るというのは、時代遅れのものになったということだ。こちらも、良い厄介払いだ。

最後に、組織がポータルの使い方を変え始めていることについて。かつてのポータルは、純粋な情報集合体でしかなかったが、アプリケーション管理システムとして使われることが多くなってきた。多くの企業は今、多種多様のキラーアプリを提供し、ポータルにそれを移行させることが多くなってきた。これは、ツール指向のアプローチの方が明らかに実用的だと感じるため、ユーザの受容性を高めることにもなる。

全体としてイントラネットポータルは、明らかに進化している。ユーザインターフェイスは簡単になり、イントラネットチームはポータルそのものの管理と、他の部署やコンテンツ提供者との関係を管理する腕を上げている。確かに私たちは、もっと良い ROI 計測方法を必要としている。それでもなお、多くのポータルは劇的な改良を成し遂げている。これは見事な失敗を見分けるのと同じくらい、簡単に判ることだ。

もっとくわしく

98 枚のスクリーンショットを含む、イントラネットポータルのユーザビリティについての 190 ページのレポートがダウンロード可能。

2005 年 10 月 24 日