受動態、見出しには使えます!

能動態が、コンテンツを書くときには一番だ。しかし、見出しや宣伝文句、導入文の中の重要なキーワードを先に出そうと思うなら、受動態を使うこと。そうすれば、読者の目を引き、効果的なSEO(検索エンジン最適化)を実現できる。

物書きのためのガイドラインには、受動態の利用についての明確な記述が古くからある。

  • 最悪の書き方: 受動態の利用は、避けられるべきである。
  • 悪い書き方: 物書きによる受動態の利用は、避けられるべきである。
  • 良い書き方: 物書きは、受動態の利用を避けるべきである。
  • 最良の書き方: 物書きは、能動態を使うべきである。

文構成においては、能動態“行為者が対象に対してXを行う” )が受動態 “対象が行為者によってXされる” )よりも良しとされる場合が多い。その方が、行為が直接的に表されるため、事象を理解するために必要となる認知的な負荷が少なくなるからだ。

同じ理由で、否定的な表現 “Yを避ける” )よりも肯定的な表現 “Xを行う” )の方が好ましいとされる場合が多い。二重否定 “Xをしないようにすることを避ける” )は以ての外だ。頭の中で言い換える必要のないシンプルな文章ほど、理解は容易になる。

行為者がはっきりしない受動態の文を理解することは非常に難しい。ユーザが行為者を誤解するようなことがあれば、ユーザビリティの問題に発展することにもなる。たとえば、 “社会保障税は毎月支払われなければなりません” という文を読んだ人は、従業員が税を納めなければならないと解釈するかもしれない。 “雇用主は社会保障税を毎月納めなければなりません” と書かれていれば、誤解なく読める。

  • 頭の中で言い換えることなく行為につなげられる文は、ユーザビリティを高めてくれる。

文体は、ウェブサイトの収益に影響する。理解しやすい容易な文ほど、顧客に読み進めてもらえるからだ。ユーザは重労働を嫌うのだ。(肯定的な表現で読みやすくするなら)ユーザは労せず読めるサイトを好む、ということである。

受動態がお金に変わるとき

タブの正しい使い方”と題した最近のAlertboxの要約、最初の草稿は次のようなものだった。

Yahoo Financeは、13のデザインガイドラインに従ってタブを使っている。しかし、AJAXの使い過ぎや改善の余地が残るカスタマイゼーションのページなどを見る限り、ユーザビリティはまだ上げられる。

能動態。確かに。

分かりやすく書けている。問題なし。

文として、完結している。否定的なニュアンスもない。

万事オーケー。ただ一つ、どうにも拭えないある疑問を除いては。この要約、肝心の仕事をしているだろうか? 検索エンジンが検索結果を表示するページ、つまりSERPに並ぶリストを斜め読みするユーザの興味を引くという役割を果たせているだろうか? 否、それは全く果たせていない。

それをやり遂げなければ、200ドルは手に入らない。

ユーザは、 Fを描くようにウェブサイトのコンテンツを眺める読むのは、段落の最初に並ぶ単語2つのみだ。先の草稿の冒頭に並ぶ2つの単語と言えば、“Yahoo Finance”である。想定する読者に嗅ぎつけてもらえそうな情報のニオイはゼロである。

アプリケーションのデザインについて書いたコラムなので、GUIに使われるウィジェットに関心を寄せる読者の興味を引く必要があった。Yahooや投資に関心を寄せる読者は想定していない。

(一例としてYahoo Financeをとりあげただけで、サイトを細かく評価したわけではない。確かに、ポータルページとしてのYahoo投資家向けの広報ページについて書いた。しかし、それらについての詳しい記事はどこか別のURLにある。“Yahoo Finance”という出だしが醸し出す情報のニオイに導かれるようにしてサイトを訪れたユーザは、欲しい情報を決して見つけられないだろう。)

要約は次のように書き直された。成果につながりそうなキーワードを文頭に持ってきて、受動態を使ったのだ。

13のデザインガイドラインを守ってタブを使っているサイトにYahoo Financeがある。しかし、AJAXの使い過ぎや改善の余地が残るカスタマイゼーションのページなどを見る限り、ユーザビリティはまだ上げられる。

“13”はとても短いので、この要約を初めて目にするユーザには、冒頭の単語2つ(“13 design”)ではなく、3つ(“13 design guideline”)に目を留めてもらえそうだ。また、情報検索時には単語よりも数字の方が視線を勝ち取りやすいことを考えると“13”を文頭に持ってくるのは悪くないだろう。

ではなぜ、“タブの使い方”で書き出さないのか? 記事の内容や想定読者から言うと、この書き出しが一番中身を伝えられそうなのに。理由は単純で、要約がいつもページタイトルの真下に表示されるからである。今回の例では、“タブ”で始まるページタイトルのすぐ下に要約がくるからだ。

ほんの数語ずつを拾い読みするのがユーザの読み方なのだから、キーワードの重複はできるだけ少なく抑えたい

  • タイトルと要約、書き出しに同じキーワードを使うのは止めよう。論旨を伝えるのに単語を4つ使えるのだから、4つの異なる 単語を使うのだ。(お気づきのとおり、今回の記事でこのガイドラインをほんの少し破っている。タイトルの書き出しは“passive voice(受動態)”、要約の書き出しは“active voice(能動態)”になっている。しかし、今回の記事は発声に関するものではないので、“voice”が単独でキーワードになることはない。それに、能動態と受動態のどちらかに引き寄せられる読者も捕まえたかった。どちらも2語で1つの用語なので、切り分けられなかったのだ。
  • タイトルや見出しに使った単語を要約の中で繰り返すのは避けよう。繰り返したとしても、せいぜい1つか2つ、重要なキーワードに限りたい。要約の中盤以降でなら、敢えて繰り返して強調し、タイトルで読み飛ばしてしまった人に読み取ってもらうのも手である。

投資対効果:受動態vs.能動態

シンプルな文構造と能動態での肯定的な表現は、ウェブ向けに文章を書くときの主要なガイドラインとして10年以上言われ続けていることである。これに反する書き方はして欲しくない。これを守っておけば、コンテンツのユーザビリティはたいてい向上する。特に本文については間違いない。

しかし、アイトラッキング調査をして最近分かったのは、書き出しの2語をうまく使うことの重要性が極めて高いことである。ユーザがウェブページを眺めるときに目が行くのは、その2語だからだ。そういうわけで、ガイドラインを少し修正しなければならない。特に、ユーザの視線が向きがちなタイトルや見出し、要約、キャプション、ハイパーテキストリンク、箇条書きなどの書き方については。

ウェブサイトがお金になるかどうかは、言葉の使い方にかかっている。ページタイトルの最初の2語をどう選ぶかが、ROI(投資対効果)の向上に効く一番の決め手になるのはおそらく間違いない。重要なキーワードを前に持ってくることが、他のどんなデザインよりも奏功するのだ。

続いて、要約の冒頭2語が2番手になる。決め手の単語をタイトルに使ってしまった場合、要約には一歩譲って受動態を使ってみるのも良いだろう。

ページタイトルと要約の重要性は、従来の検索エンジン最適化(SEO)やGYMでの上位獲得(Google、Yahoo、Microsoftの各社による検索結果リストで上位に表示されること)に的を絞ること以上の大きな意味を持つ。ページ内検索の結果が分かりやすく、そして見やすく表示されれば、コンバージョンレートもきっと上がるだろう。検索のユーザビリティは、イントラネットの生産性向上にも寄与するはずだ。

シンプルな文構造があくまでも原則である。ただし、受動態がROIを上げてくれる場合もある。お使いのときは、どうぞ慎重に。

2007 年 10 月 22 日

公開:2007年10月22日(原文:2007年10月22日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Passive Voice Is Redeemed For Web Headings

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