SharePointはイントラネットのデザインを損なうか
イントラネットのプロジェクトは強力な実装プラットフォームの恩恵を受けるが、4つの成功事例が示すように、開発チームはその組織特有のニーズに向けたユーザーエクスペリエンス(UX)の最適化に集中すべきである。
最近のユーザビリティウィークカンファレンスで参加者の何人かから、イントラネットがSharePoint上で構築されることがさらに増えていったら、イントラネットのデザイナーにとって、厳しいことになると思うかという質問があった。
ゼロから開発したり、大量のウェブサイト志向のツールを寄せ集めて作っていくのとは違い、イントラネットをそれに最適化されたシステムをベースに構築すれば工数が減るのは確かだ。しかし、工数が減るからといってゼロになるわけではない。また、もちろん、それによってユーザビリティに関わる作業がなくなるわけでもない。
すべてのユーザビリティの基礎になるのは、次の2つの問いに対して、どのようにデザインで答えていくかということである。ユーザーは誰なのか。そして、彼らのタスクは何なのか。その答を見れば、イントラネットがいかにウェブサイトと違うかは明らかである:
- ユーザー = 顧客ではなく従業員
- タスク = 買い物ではなく仕事
こうした相違点こそが、なぜイントラネット専用のユーザビリティガイドラインに意味があるのか、なぜSharePointのような製品が存在しているのかの理由である。(他のベンダーからも似たようなソリューションが提供されてはいるが、ここではSharePointを例として取りあげている。ユーザビリティの優劣を競うイントラネットデザイン年次ベスト10に入賞した企業の間で、最も広範囲に利用されていたプラットフォームだからである。我々は特定のどんなソフトウェアも推奨したりはしない)。
イントラネットはそれぞれ違う
イントラネット同士には高いレベルでの類似性があるが、一旦、細かい部分を見始めると、いろいろと違いがあることも見えてくる。一例として、2010年 イントラネットベスト10から、4つのデザインについて考えてみよう。それらはどれもSharePointを利用しているが、外観はまるで違う:
その違いはカラースキームやイメージの選択といった表面的特徴のレベルを大きく超えている。下の2つのイントラネットはポータルのような感じで、いろいろなウィジェットをページ上に置いているが、上の2つはもっとホームページのような感じだ。
また、カレンダーを載せているところもあれば、道路情報を載せているところもあるというように、ホームページ上に採用する価値があると見なされたツールもイントラネットごとに違っている。
トップナビゲーションカテゴリーを見てみよう:
Huron Consulting Group | Enbridge | SCANA Corp. | Jet Propulsion Laboratory |
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サポートとリソース | ブックマーク |
今回の小さなサンプルを見ただけでも、「Xについて」や人事(HR)のようないくつかのナビゲーションカテゴリーがイントラネット上でかなり一般的であるのがわかる。なお、もっと大規模なサンプルを見たい方は56のイントラネットの情報アーキテクチャ(IA)に関する分析を参照して欲しい。
その一方、注目に値する相違点もいろいろとある。例えば、「クライアントマネージメント」をトップレベルのメニューに置いていたのはコンサルティング会社1社だけである。そして、「興味深いトピックス」 というカテゴリーは、多くのより一般的な企業以上にJPLのような科学をベースにした組織にふさわしい。
重要なのはこうしたごく基本的なデザインに関する選択ですら、組織の性質によって決められるということだ。
イントラネットのデザインをもっと詳細に検討していくと、さらに大きな違いが明らかになってくる。例えば、ほとんどのイントラネットには従業員名簿が載せられているが、従業員を検索するために使われる条件には劇的な違いがある。知識集約型組織では同僚をその専門知識によって検索できるよう、能力というものが強調されているのに対し、それ以外のタイプの組織ではその他の属性の方がより重要であると見なされているように感じられる。同様に、個々の従業員のプロフィールのページ上にどういう情報が表示されるかは、産業ごとに違うだけでなく、社風にも大きく左右される。
SharePointのようなプラットフォームを選んだ後にも、企業にデザイン上の選択肢が無数に残されていることは疑う余地がない。そして、ここで取る選択肢によって、従業員の生産性やイントラネットの成功に対して、非常に大きな影響を与えることは可能である。
実際のところ、イントラネットの基本的インフラの構築が容易になればなるほど、イントラネットにいかに有用な機能を組み込んで、そうした機能のための効率的なユーザーインタフェースを創り出せるかが重要になってくる。将来的にイントラネットに必要なプログラミング作業は減るかもしれない。しかし、ユーザーエクスペリエンスに関わる作業が今よりもずっと必要になっていくのは間違いないだろう。