イントラネットのソーシャル機能

今や多くの企業で、従業員の協働やオープンなコミュニケーションはビジネスの推進力となっている。だが、企業のソーシャル機能はイントラネットの他の部分との統合がうまくいってないことが多い。

4年前、初めて、イントラネット上のソーシャルネットワーキングを調査したときの結論は、「我々のケーススタディを通して見ると、ソーシャルイントラネットプロジェクトのスケジュールは3年から5年の期間で組まれていることが多いようだ」というものだった。前回のレポートで取り上げた企業のいくつかへの再訪問を行ったが、案の定、我々は正しかった。今では彼らのソーシャルプロジェクトは以前に比べ、ずっと確固としたものとなり、実験段階を終えた。つまり、早い時期にソーシャル化した企業は今、その恩恵を受けている。

こうした確立されたプロジェクトを再検討する以外にも、その後、イントラネットにソーシャル機能を追加した企業の調査も新たに実施した。したがって、今回の調査結果は、合計22の企業のソーシャルプロジェクトから得られたものである。

2回のソーシャルイントラネット調査の間の4年間に、公共のインターネットのソーシャルネットワーキングは混乱に見舞われた。Web 2.0バブルの間、我々が目にしたのはコントロール不能な熱狂である。そこでは多くの人々がFacebookの法外な金額のIPOに投機(失礼、「投資」)したが、結果、彼らが目にしたのはFacebookやGroupon、Zynga等の企業の株の崩壊だった。Facebookの登録ユーザーは十億人に達したが、そのうちの数億人はFacebookから離れてしまっており、利用をやめているか、更新情報をチェックするのに費やす時間を大幅に減らしている。

こうした浮き沈みにもかかわらず、公共のインターネット上でソーシャル機能が普及し、主流ウェブサイトがそうした機能を追加しようとしていることには疑いの余地はない(このトレンドについて詳しくは1日トレーニングコース「自分たちのサイト向けのソーシャル機能」を参照)。

同様に、従業員のコラボレーションやナレッジマネージメントの支援に、企業内でのソーシャル機能がさらに有益であることも間違いない。前回調査の要約には、「Enterprise 2.0」という少々、陳腐な用語を使ったが、新しい調査で、イントラネット上のソーシャル機能による実質的効果が、コミュニケーションをよりオープンにすることによって組織の機能の仕方を変えることであると確認された。

変わらない調査結果

ソーシャルイントラネットについての2回の調査の間の4年間で、ソーシャルネットワーキングのサイトがどれだけ変化したかを考えると、1回目の調査結果のほぼすべてがいまだ適用可能であることは注目に値する。結果のこうした安定性から考えると、今後も長く、以下の結論は有効だろう:

  • 必要とされるトレーニングはほぼない。適切な労働状況においてしかるべき理由で与えられれば、ユーザーは容易にソーシャルツールになじむ。トレーニングや移行のための時間はほぼ要らないし、人々に参加を促す必要もない。したがって、一般に、ソーシャルツールは従業員が特別なトレーニングをしなくても容易に利用できるようにデザインすべきである。ユーザビリティガイドラインに従いつつ、AmazonやNetflixの五つ星評価システムのような、インターネット上で人気のあるデザインをまねることで、このゴールは達成可能だ。心に留めて置くべき大切な点は、他にも2点ある:
    • インターネットのソーシャル機能を頻繁に利用している人でも、企業という状況におけるソーシャルツール利用についての適切な行動規範トレーニングを受けることはためになるはずである。
    • 新しいツールを「新ツール」として告知するのはやめよう。そうではなく、単に既存のイントラネットに統合してしまおう。そうすれば、ユーザーは自然にそれに対面することになる。例えば、既存のブックマーク(あるいは「クイックリンク」)機能を派手な告知抜きで、ソーシャルネットワーキング上で共有されるブックマーク機能に変えてしまってもよい。
  • イントラネット向けのソーシャルメディアのデザインは、似たような仕事を担当するインターネットデザイナーに比べると、ずっと有利である。興味を持たれそうな内容を事前に選ぶのに十分なだけ、自社の従業員や業務についてよく知っているからである。例えば、関連情報が入ったニュースのフィードを事前設定することも可能だろう。ユーザーがカスタマイズするための空白の画面を提供すると、ユーザーは、作家が壁にぶち当たって何も書けなくなってしまうのと似たような状態にソーシャルメディア上で陥ってしまいがちだ。
  • 従業員がソーシャルツールを不適切に利用するのではないかという企業側の懸念に反して、規律違反はまれである。ソーシャルツールを使っている企業では、利用条件を作ってそれを守らせる、という穏やかな手段を取っているところが多い。コミュニティ管理者のほとんどは、横道に逸れてしまった会話を建設的な方向に誘導することしかしていない。帰属(筆者)を示す箇所があり、帰属の明示が条件となっている限り、コミュニティには自警機能があるからである。
  • ソーシャルな環境ではコミュニティの管理が不可欠である。コミュニティ管理者は会話をコントロールするというよりはガイドするという、軽い管理を行うのが最も効果的だ。指名されたコミュニティ管理者は世話役兼司会者の役割を果たすことになる。彼らは盛り上がってないエリアを再度焚きつけることもする。最終的にコミュニティ管理者は実情を正確に把握することによって、締め切りが過ぎた話題を追い立てる代わりに、いつ手を引いたらよいかわかるようになるだろう。
  • ユーザー全員が何かを生み出すわけではない。ソーシャルソフトウェアが成熟してきたにもかかわらず、参加寄与率は横ばいの状態が続いている。オープンなインターネットと同様に、企業のコミュニティでもかなりの程度で参加状態にはばらつきがある。つまり、頻繁に参加する従業員もいる一方、目立たないように利用する人もいる。したがって、投稿と利用の状態を組み合わせたものをベースにして、コミュニティを評価することが重要だ。なぜならば、目立たないように利用する人もコミュニティからの恩恵を受けているからである。ROIを算出するとき、あなたがたのEnterprise 2.0の第一歩は、増加した知識や理解をベースにその従業員がどれだけ会社に貢献したかという値によって評価することが重要である。
    • 数人の積極的な貢献者によって、組織の他の部分にかなりの価値が付加される場合もある。我々のケーススタディで、こうした例はタグ付けやレーティングシステムに関してよく見受けられた。こうした機能は、評判の悪い不安定なイントラネット検索ツールの検索結果の優先順位の質を大幅に向上させられるからだ。ウェブ上での関連度を使う従来の方法も、規模の小さいたいていのイントラネット上ではうまくいかないものである。例えば、リンク数のカウントは、膨大な数のリンクを横断して行うときに限り、有効となる。しかし、ほんの数人の従業員が一定のキーワードを用いて、あるページに付けたタグも、その組織内というコンテクストにおいては、そのクエリーに対して良好な検索結果を生み出す可能性がある。
  • 「公式」コンテンツとユーザー生成コンテンツの関係には絶妙なバランスを要する。ユーザーが作成したイントラネット上のコンテンツは、成長するにしたがい、従業員が取り組む多くの問題を支援することもできる。しかしながら、公式な方針や立場についての「公式」コンテンツの役割も残っている。これら2種類のコンテンツは分離すべきではないし、例えば、単一のイントラネット連合検索を提供する、というガイドラインは、依然としてこれまで以上の意味を持つ。しかし、あなたのデザインには、SERP(検索エンジン結果ページ)や他のリストの流し読みをしやすくするために、公式な情報はそのようにラベルをつけ、可能であれば色分けもして、異なるタイプのコンテンツは異なった状態で反映すべきである。
  • 検索は統合される必要がある。企業において、情報の検索は常に難題だ。ソーシャル化することで、複雑さはさらに増し、解析しなければならないデータ量も飛躍的に増加する。ソーシャルストリームは流れるスピードが速く、情報量も多いので、現実的には、検索がそうした情報を利用するための唯一の手段となる。イントラネットでの検索についてのユーザー調査で、イントラネットの全リソースを横断する、単一の、統合された検索システムを提供することが不可欠であることがわかっている。この結論はイントラネットでのソーシャル機能にも当てはまる。一つ一つのソーシャルツールのために個別の組織縦割り型検索エンジンを用意するよりも、イントラネット全体の検索の一部分として、ソーシャル機能も検索されるべきである。実装によっては、統合された検索システムの必要性は、アウトソーシングやホスティングのソーシャルソフトウェアに対する強い反対理由となることはあり得る。なぜならば多くのSaaSサービスは連合検索に対応していないからである。

ビジネスニーズであって、ツールでも流行でもない

2回の調査両方での最も重要な結論とは、そうしたソーシャルイントラネットのプロジェクトは、解決しようとしている課題や弱点というビジネスニーズがその推進力とならなければならないということである。例えば、カナダのデジタルマーケティング会社、Klickは毎週の進捗ミーティングにお金をかけすぎていた。そこで、こうしたレビュー用にイントラネットでのコラボレーションソリューションを開発した結果、年間で30万ドル以上もの費用が削減ができた。(この機能を構築するのにかかった費用が53,900ドルだということを考えると、ROIは非常に良いと言える)。

リバースプロセスは普及してはいるが、命取りにもなりうる。「Twitterやマイクロブログはかっこいいし、Yammerについても良い評判を聞く」からといって、何かを始めるのはやめよう。我々のレポートでもYammerについてほめているが、だからといって、自分のところのイントラネットにそれを放り込む必要はない。あなたがたのビジネスニーズはまったく違うものである可能性もある。

正しい順番は4年前と変わらない。つまり、ビジネスニーズが必要なソリューションの推進力となる。したがって、その後、そのソリューションによって、購入あるいは構築すべきツールは決まってくるのだ。

草の根の動きから経営陣の支援を受けるまでに

2回目の調査で大きく変化したのが、企業でのソーシャル機能に対する組織支援のレベルである。1回目ではケーススタディの多くが、公式な資金援助のない草の根プロジェクトで、そこでの姿勢は、とにかくやってみよう、というものだった。

今日では、多くの企業がイントラネットでの情報共有等のソーシャル機能を競争上の強みをきちんともたらすもの、として受け止めている。おもしろいから作るというようなものではく、仕事用の基本サービスなのである。ソーシャルツールはナレッジワーカーの標準ツールキットの一部として期待され、経営陣の多くがこうした認識を持っている。

多くの企業がソーシャルイントラネットを公式に支援しているが、まだその準備ができていない企業もある。オープンな態度やコミュニケーションを重んじる企業文化にはソーシャルプロジェクトの成功は不可欠だ。しかし、そうした文化のない企業では、大規模なソーシャル機能の追加は無駄な努力となるだろう。従業員やマネージャー層はそんなものを使いたくないからである。

企業内でのソーシャルメディアの使用が広がることで、コミュニケーションの壁が取り払われる。そう聞くとよい感じがするが、それによって、情報やコミュニケーションを独占することに慣れている人々が脅かされることもありうる。皮肉なことに、コミュニケーションを広げる動きに対して、企業広報部門が抵抗することもある。しかしながら、彼らはその動きをつぶそうとするよりは、新しいメディアの価値を増加させる方法を見つけることに取り組んだほうがよい。

したがって、イントラネット上のコラボレーションツールを実装する前に、自社の企業文化については必ず考える必要がある。従業員が「知識こそが力なり」という考えを固く信じており、知識を共有したくないのであれば、情報共有のための技術がうまく機能するはずはない。

また、職場でのソーシャルツールであるということを考えると、社員がそれに無駄に時間を使ってしまって、仕事が何も終わらないのではないか、という懸念も残っている。しかし、実際にわかったのは、活気のあるソーシャルプラットフォームを持つ会社では、ソーシャルツールがなかったころと比べて、予想したほどには、従業員はソーシャルツールを使っての業務以外のコミュニケーションで労働時間を無駄にはしない、ということだった。

またもサイロが出現

ソーシャルイントラネットを何年も利用している企業の多くが、ソーシャルスタックがもう1つのサイロ(訳注: 縦割り型システム)であることに気づき始めている。つまり、そこでは他のコンポーネントとの統合が行われる代わりに、企業のテクノロジーが1か所に詰め込まれている。これに加えて、テクノロジーの断片化がユーザーエクスペリエンスの断片化をも引き起こしている。

ソーシャル化が企業のさらなるサイロになるという考えはやや逆説的ではある。ソーシャルツールは本来、役割や肩書き、地理的に離れていることが理由になっているサイロを打ち壊すのに効果的だからである。しかしながら、その企業の既存のイントラネットやポータルと並列して存在するソーシャルスタックは、さらなる情報サイロになりかねない。そこにある情報は管理され、検索の対象になるべきであり、理想的にはその企業のより大きな情報世界に統合されたほうがよい。しかし、たいていの企業ではまだそうなってはいない。

高度なソーシャルプラットフォームを持つ企業ですら、ソーシャルなプラットフォームやツールセットとの関係を作るだけにとどまらない、企業のポータルへの統合という難事業に取り組み始めたに過ぎない。

それ以外の組織ではそれが課題であると認識はしているが、まだ、その両者を分けたままでなんとかしようとしているところであり、双方を融合させようという複雑な課題には向き合ってない。

ソーシャル機能の統合には多くの課題が伴う。例えば、UIについての課題もあるし、インフラの課題もあれば、政治的な課題もあるのが普通だ。ソーシャル機能と従来のイントラネットの融合というと聞こえはいいが、その現状はどっちがどっちを飲み込むかという問題である。その上、構造についても政治についても決断を下すのは容易ではない。

ソーシャル機能をメインのイントラネットと統合するのが重要である理由はいくつもあるが、最も重要な理由は、ユーザーの二度手間を防ぐためだろう。従業員が従来からある従業員名簿とFacebook的なソーシャルコネクションツールの両方で、プロフィールや写真をアップデートするのはおかしいし、例えば、探している結果を見つけるためにどっちの名簿を検索すべきかを知っておく必要はないはずだ。こうした移行を実現させるには厳しい選択をしなければならないが、そうすることで最後には統合が実現するはずである。

フルレポート

217ページの、イントラネットのソーシャル機能に関するレポート(英語)がダウンロード可能である。

さらに詳しく

調査レポート

関連記事


Original image by Zaskoda

公開:2013年3月19日(原文:2013年3月2日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Intranet Social Features

分類キーワード: