不適切な調査スキルがユーザーの問題解決を抑制する

問題に対処するためのより良い方法を探す代わりに、検索エンジンによってリストアップされた個々のページに依存する傾向が、ユーザーにますます強まっている。

アナリストの中には検索の優勢という調査結果に疑問を呈する人もいるが、ユーザーの行動で、年々、強まってきているものがまさにそれである。今日、ユーザーの多くがあまりにも検索に依存しているため、彼らの問題解決能力は弱体化してきている。皮肉なことに、検索の質が上がれば上がるほど、その危険性は増す。なぜならば、検索エンジンが吐き出したものなら何であれ、答えそのものであるに違いないと人々がますます思うようになってしまうからである。

最近の調査で、ある参加者はタスクが与えられたときに行く場所を、「私の昔からの友人であるGoogle」と言った。このことは、今では、人々がいかに検索と密接に結びついているかを顕著に示している。

先月のアジア太平洋地区でのユーザーテストの間、ユーザーが様々なタスクのために100回以上検索を行うのを私は見た。しかし、ユーザーが方策を変えるのを見たのは、たった一度きりだった

方策の変更がほぼないと仮定すると、それがどのくらいの頻度で起きているかを正確に予測するためには、さらに多くのデータが必要だろう。今回のユーザー調査での我々の目的は、「ウェブユーザビリティの基本ガイドライン」セミナーの内容をアップデートすることにあった。そこで、検索エンジンの統計データではなく、ウェブデザインに焦点を絞ることにした。

そうはいっても、我々の手元にあるデータから概算して、以下のことが明らかである。ユーザーが検索という方策を変更するのは確率として1%に過ぎない。つまり、99%の場合、彼らはゆるぎないただ一本の道をとぼとぼと進むのである。その正確な数値が2%だろうが、0.5%だろうが、全体的な結論に変わりはない。すなわち、ウェブ上で問題を解決することに関して言えば、ユーザーが持っているのは、極めて不適切な調査スキルなのである。

例えば、我々の調査で、あるインテリアデザイナーは彼女の利用しているのがどの検索システムなのか、つまり、そのシステムがウェブ全体を検索するものなのか、それとも彼女がいるサイト上だけを検索するものなのかをまるで理解していない状態で、無差別に目に付いたあらゆるテキストボックスに検索キーワードを入力していた

この例が提示しているのは、混乱したメンタルモデルについての印象的な事例である。また、検索についての今の大きな問題をも映し出している。それは検索によって概念的知識を高めることはできない、というものだ。なぜならば、検索にはウェブサイトへの素早い出入りが必要だからである。

調査の方策を変更する: 1つの例

我々の最近の調査から得られた肯定的ケーススタディはただ1件のみだった。そこでは、調査参加者は(喉の痛みのような)様々な症状を前提に、友達が風邪を引いているのか、それともインフルエンザにかかっているのかを見つけ出すということに取り組んでいた。

最初に、そのユーザーは様々なやり方で、その内容を描写して、症状で検索した。このような検索キーワードのシンプルな再構築は方策の変更とは見なされない。なぜならば、それは本質的に1つのアプローチの変形だからである。(ビデオの時間を見ないと我々の調査で何人のユーザーが一般的な検索キーワードの言い回しを変えたのかは正確に言えない。しかし、割合として、約10~20%というのが、一般的なところだったと思う)。

症状での検索はそれ単体では実りのないアプローチである。ユーザーは様々な迷信と手作りの薬についての役に立たないサイトの羅列に圧倒されていた。これらのほとんどはきわめて善意のディスカッショングループや患者の支援サイトではあった。しかし、そのコンテンツが示しているものは、現在の医学や、信頼できるアドバイスでは全くなかったのである。

主要な検索エンジンが、現時点では有用なサイトよりも人気のあるサイトを優先しているがために、膨大な数の患者が誤った医療アドバイスをインターネットから得ていると思うと残念である。

しばらくして、そのユーザーは症状で検索しても成果が得られないということに気がついた。そこで、彼は検索の方策を転換し、病気について検索し始めた。その2つの病気の症状を特定すれば、区別できるのではないかと考えたのである。このやり方はずっとうまくいった。彼は症状についてのまともな説明がある、評判の良い医療サイトをいくつか見つけた。

アドバンストサーチ: 利用されない

別のテスト参加者は弁護士で、この調査セッションの数か月前に言い渡され、議論を呼んだ、ある判決から読み取れる内容についてのプレゼンテーションを準備しているところだった。彼の目的は他の専門家がその判決についてどう言ったかを探し出すことにあった。

判例を説明する様々なキーワードを検索することで、その弁護士は、マスコミによるニュースや、ブログでの議論、別の法律事務所の報告書等、関連のある情報を簡単に見つけ出した。しかしながら、これらのほぼ全てはその裁定が出たときに書かれたもので、その判決の長期的な影響についての分析は入っていなかった。それらは基本的に、その判決について、と、なぜそれが良いのか、あるいは悪いのか、について述べたものだったのである。

ほとんどのユーザーは最初に出た検索エンジン結果ページ(SERP)の先には全く行かなかったが、この気の毒なユーザーはSERPのリストにある大量のページをかき分けていき、より新しい内容のものを見つけよう、という他のユーザーとは異なる意向を示した。

彼の主たる判断基準が新しさにあったことを考えると、そのユーザーはもっとずっと簡単なアプローチを取ることもできたはずである。つまり、結果を日付で絞り込むためにアドバンストサーチを利用することができたのである。しかしながら、彼は決してそうはしなかった(この人が弁護士だったということを思い出してほしい。彼は高度な教育を受け、常に大量の情報を管理している人なのである。平均的なユーザーなら状況はもっと悪いものになっていただろう)。

一般的に言って、ユーザーがアドバンストサーチを利用するのを目にすることはまずない。そのうえ、彼らは利用するときには、間違ったやり方で使うことが多い。めったに使わないので、それがどう機能するかを実際まるで学んでいないというのもあるだろう。

ここから得られる教訓ははっきりしている:

  • アドバンストサーチがサイトの助けになると思ってはならない。つまり、あなた方はそうした機能を構築しているかもしれないが、例外的な事例でしか人々はそれを利用しないだろう。
  • リソースの大半は通常の検索機能(シンプル検索)の向上に費やそう。

1つの考えにとらわれた調査方策: 1つの例

補足記事で、1つの例について詳しく述べている。それは調査の方策を修正しなかったがために、ほとんど上がらない成果に対して、多大な労力を浪費したユーザーの例である。そのユーザーは世界で一番人口の多い都市を探そうとして、(検索エンジンを含む)8つのサイトにわたったページビューが22回にもなっていた。彼女は答えを見つけるには見つけたが、それに決めた理由は間違っており、そこにある根本的な問題を理解してはいなかった。すなわち、都市の人口の数え方は、郊外を入れるか入れないかによって、2種類あるのである。

この結果は、そのユーザーが学校の教師であり、生徒にはオンライン上の情報ソースを厳密に評価することを教える必要があると力説していた人だったので、なおさら印象的だった。

ユーザーの中には最初に出会った答えをただ選んで、それで最後までいく人もいるだろう。しかし、この例の教師のようにもっと注意深いユーザーは、結局それほどメリットが増えないにもかかわらず、多くの時間を費やしてしまうことが多い。なぜならば、彼らは検索エンジン結果というものにとらわれているからである。

(人口1200万~3400万人までの)「大都市」の推定値が大きくいくつかに分かれていることを発見した後は、調査の方策を変更して都市部の人口を扱う信頼できるサイトを探そうとするのが妥当なやり方だっただろう。こうした転換をしていれば、他の話題を専門に扱う、データの由来を説明していない多くのサイトに載せられた簡略的なリストに頼るより、ずっと多くの知見が得られていたに違いない。

検索は良すぎる

上の例の、そして、我々の最近のテストでの他の多くのユーザーにとっての問題は、検索エンジンが「回答エンジン」に変わってきているということにある。ユーザーはSERPのリストに含まれているページだけに頼るように訓練されつつある。 実際に、多くの問題では、実際の答えがまさにそこにはある。しかし、検索リスト以外のところに時には行かなければならないという概念は失われていっている。

多くの問題では、単にSERPの下のほうまでスクロールするより優れたアプローチが存在する。例えば、その問題に特化したサイトを探してみてはどうだろう。あるいは、症状が風邪かインフルエンザかという問題に関してなら、その問題についての考え方を単に変えればいいのかもしれない。

悲しいことに、あるアプローチがあまりにも簡単だと(そして、たいていの場合には機能するようだと)、努力が必要とされる調査スキルをユーザーは全く磨こうとしなくなるか、あるいは、他のアプローチについて考えることすらしなくなる。

これに対して我々には何ができるだろうか。

  • 現在のウェブデザインのプロジェクトに関して、我々がしなければならないのは世の中のやり方に合わせたデザインであって、そうだったらいいのにと自分たちが考えているやり方に合わせたデザインではない。このことが意味するのは、検索が優勢であることを受け入れ、調査スキルの貧弱なユーザーを手助けしようということである。例えば、都市の人口を載せたサイトなら、特に説明も加えず推定値を単に1つだけ示すのではなく、人口を見積もる方法は2つあることを明確に述べることが可能だろう。そして、適切な医療サイトは、情報についての医者の考え方に合わせるのではなく、患者の情報の検索方法に合わせて、ページをデザインすることができるだろう。
  • 長期的には、世の中の欠点に合わせるためにデザインをするのではなく、世の中を良くしていくために努力すべきである。これをどうやって行うかという一例として、我々は学校でインターネットを使ったより良質な調査スキルを教えるということを行っている。