未来は過去とは別物である。WWWブラウザの場合は特にそうだ。昔のブラウザは2つのタイプしかなかった。テキスト型かMosaicのいずれかである。だが、今や選択肢には事欠かない。Netscapeは、ほとんど一夜にしてインターネットを支配できることを証明してみせた。その市場シェアは、1994年最後の2ヵ月間で1%未満から約70%へと急増したのだ。ここまで急激な変化はインターネットならではの特徴であり、他のほとんどの市場では市場リーダのシェアはもっと永続的で、衰退もゆっくりしている。インターネットでは、ニュースと顧客の評判はあっという間に世界中に広まり、「在庫量」を制限するものは、ベンダーのサーバ能力と接続速度しかない(確かに、もし彼らのFTPサイトがあれほど混み合っていなければ、Netscapeの普及はおそらくもっと急速だっただろう)。

インターネットとWWWで唯一確実なトレンドは、インターネットにはトレンドなどないということだ。あまりにも変化が激しいので、何が起こるか予想するのは不可能だ。一夜のうちに、新しいトレンドが起こり、衰退することさえありうる。とはいえ、私は、以下のような変化が起こるべきだと思っている。これらが次なるトレンドになることを祈りたい。

WWWブラウザには、例えば、ビデオのようなストリーミング型のデータを扱う機能が必要だ。サーバとネゴシエートして、ダウンロード帯域幅に合わせた適切な品質(例えば秒あたりのフレーム数)になるようにしておくべきだ。この先は、ハイエンドのクライアントにも、ローエンドのクライアントにも同じファイルを送信するのは、よほどバカなサーバだけ、ということになるだろう。

ISMAPを操作する際に、言葉のレベルでのフィードバックが必要になるだろう。Sunの新しいホームページをデザインする際のユーザ調査でわかったもっとも大きな問題は、イメージマップのどこをクリックしたらいいのかわからないということだった。このフィードバックは、恐らくHyperCardでボタンがハイライトになるのに似た形になる可能性が高い。SunホームページJava版は、これの実現方法に関するひとつのアイデアである(注意しておくが、この効果を見られるのは、HotJava、もしくはそれ以外のJava対応のブラウザだけだ)。

「1枚のキャンバス」モデルからは、脱却しなくてはならない。ハイパーテキストのモデルでいうholy scrollerとcard sharkのもっとも優れた部分を組み合わせるために、ページ内にスクロールしない部分(表計算ソフトでは「固定ペイン」モードと呼ばれる)を作れるようにするべきだ。非標準的なHTMLタグを導入するのが好きな人たちなら、<TOP>というタグを作って、これでスクロールしない情報を表わし、ウィンドウ上部(<BOTTOM>ならウィンドウ下部)に常時表示されるようにすることもできるだろう。このテクニックは、ヘッダやフッタを作るのに応用できる。そのページがウィンドウのサイズより長くても、ユーザのナビゲーションオプションはこれで常時表示できるわけだ。

1996年3月追記: 1995年7月に私がここで言っているウェブページの一部をスクロールしないようにするという考えは、Netscapeバージョン2.0で導入されたフレームなるものとは、かなり異なったものである。フレームのユーザビリティはひどい。ウェブブラウザのナビゲーション機能のほとんどが動作しなくなってしまうからだ(ブックマーク、後退、それにURLへの移動が、すべて機能しない)。ウェブページにスクロールしないセクションを設けるのは、「知るべきこと(ナビゲーションの単位)はすべて見えている(ウィンドウ)」というウェブブラウジングのハイパーテキストモデルを壊さないでも可能だったはずだ。私が求めているのは、HTML 3に導入されたbanner機能や、(2000年8月追記)HTML 4のinlineフレームのようなものだ。

経済的な情報利用モデルが求められている。ここで言っているのは、情報提供者への支払い(これも必要だとは思うが)のことではなく、リソースの理想的な活用のことである。例えば、ブラウザはサーバとネゴシエートして、負荷のピーク時には、小さめのビットマップをダウンロードするようにしたり、あるいは、1ページあたりの読み込みは、最長でも10秒以内に終わるようにするという指定ができるようにしておくべきだ。ページ定義をコード化しておけば、情報の優先順位が付けられるようになり、大きな要素には代替となる表示形態を用意できるようになるだろう。こうすれば、そのクライアント/サーバソリューションは、与えられた制約の中でもっとも有用な情報をダウンロードできることになる。ユーザが行動していない時間を利用して、ブラウザに情報を先読みさせることも可能だろう。これは、経済的なWWW利用モデルに関わる問題だ。すばやいブラウジングは、あなたにとってどれくらい優先順位が高いだろうか?高速なブラウジングに相当の価値を認めるなら、かなりのリソースを割いて、後で必要になるかもしれないデータを、コンピュータにダウンロードさせることになるだろう。先読みは(加入したサーバから)夜間に行なう場合もあるだろうし、現在見ているページから外部に張られたハイパーテキストリンクを幅の広い順にたどって行く場合もあるだろう。

もちろん、ホットリスト管理にも改善の余地がある。大量の情報を使うための、先進的なユーザインターフェイスが必要なのだ。同様に、ブラウザにはreadwear、関心度の投票、グループでの注釈付け、それにナビゲーション履歴/構造の見取り図といったものをサポートするべきだろう。これは、無限ズーム可能なキャンバスを利用したものになるかもしれない。

Netsscapeのインターフェイスをざっと眺めてみると、9つのハイパーテキストナビゲーション機構が利用できることがわかる。これはかなり多いように思うかもしれないが、ハイパーテキストの標準的教科書には、主なハイパーテキスト機構だけでも、現在のWWWブラウザに欠けているものが、少なくとも15種類は挙げられている。あらゆるハイパーテキストシステムにこれらの機構が必要なわけではない(未来主義は、遠ざけるべきデザイン病である)。だが、将来、ユーザのニーズに応えようと思うなら、先進的なWWWブラウザには、より多くのナビゲーション機能が必要である。

1画面に収めるというのは、WWWページのデザイン原則のうちで、もっとも重要なもののひとつだ。そう考えると、こんなに長いコラムを書く私はどうかしているが、そこで扱われている話題に本当に興味のある人は、長いテキストでも読んでくれるということがわかっている。このコラムの後半は、インターネット上のハイパーテキストについて、本当に関心のある人だけに向けて書かれたものだ。

1995年7月