Webにおける関係性
1997年1月更新:
この予想は当たったか?
ようこそ、1996年へ。今年、ウェブサイトの生き残りのカギを握るのは何だろうか? 私の読みでは、それはサイトとユーザの間の関係性構築にあるとにらんでいる。
過去数年間、ウェブサイトで支配的なスタイルはどんなものだったか、まずは振り返ってみよう。
- 1993年:ウェブ上にサーバを構えているだけで、パイオニアと呼ぶにふさわしかった!毎日欠かさず「NCSA MosaicのWhat’s New」を見て、ウェブ上に誰がどんなものをアップしたかチェックしていたのを覚えている。あっという間に消え去ってしまうようなページであっても、それが世界の反対側からやってきたというだけで、十分新鮮だったのだ。
- 1994年:1994年で最大の出来事は、ユーザが手にしている情報の量を知らしめたことだろう。この年は、単なるにぎやかなホットリストの域を出ないホームページの年だった。リンクを集めた長大な箇条書きのページだ。ウェブにとって比較的初期のこの段階でも、本当に役立つコンテンツなら間違いなく人々の印象に残った。
- 1995年:増え続ける一方の情報洪水にユーザが苦しむようになったため、焦点の絞られた付加価値情報がキーとなってきた。1995年における好ましいホームページデザインのスタイルは、ユーザに対して優先順位をはっきりと提示し、質の高い情報だけに絞り込んで掲載することである。ユーザは、通常1回のサイト訪問で5ページ以上閲覧することはない。まずはこのことを認識しよう。Sunのホームページのデザインは、この原則にのっとって作成された。控えめなほどよい、というのが絶対的なキーデザイン戦略となった。
そして、1996年の今、私はウェブサーフィンは死んだと考えている。もちろん、時には新しいサイトをいくつかチェックしてみたりはするだろう。空港のニューススタンドで、暇つぶしに新しい雑誌を買ってみたりするのと同じことだ。引き続き雑誌の喩えを続けるなら、ほとんどのユーザは、その時間の大部分を少数のウェブサイト上で過ごしている。それは品質と内容の点で、自分の要求に見合ったサイトである。ホットリストは膨れ上がる一方だ(特に、今のウェブブラウザのブックマーク管理用インターフェイスはひどいので、なおさらだ)。よって、相当数のリピート客を獲得できるのは、ごく少数のウェブサイトに限られるだろう。
ユーザが、少数の主要なウェブサイトと関係を持つだけでなく、ウェブサイトの方も、ユーザを個人として取扱うようになるだろう。貪欲に寄り集まってくる数多くのGETリクエストすべてに、同じエサをもって報いるというやり方は取らない。
ウェブサイトとユーザの関係はさらに強いものにできる。例えば、特定の情報オブジェクトに興味があることをユーザから意思表示すれば、そのオブジェクトに変化があったり、かなりの更新(ちょっとした綴りの間違いを直したくらいでいちいちユーザをわずらわせたくはないだろう)が行われた時には、そのユーザに知らせが届くようにする、といったことが考えられる。Sunでは、バグフィックスに関して、まさにこういうことをやってきた。特定のバグに悩まされている顧客が申し込んでおくと、SunSolveのページを監視してくれて、その問題に関するパッチが出たら知らせてもらえるのだ。
HotWiredのユーザインターフェイスは大嫌いだが、彼らのカスタマイズ可能なWhat’s Newは評価に値するものだ。HotWiredでは各ユーザの最後の訪問日時を記録していて、それ以降に追加された記事が目立つようにしてある。またWhat’s Newページをカスタマイズして、サイト内の興味のあるセクションだけが表示されるようにもできる。情報洪水を切り抜けるには、ユーザの注意を集中(かつクギ付けに)させるのが一番だ。
ユーザとの関係をサポートするなら、もっとおもしろいやり方もある。それはZiff-DavisがやっているZD Netのパーソナライズビューだ。ユーザは、興味のある対象のプロフィールをサーバに登録しておく。すると、それ以降の訪問では、自分の興味のある新着記事がリストされるようになるのだ。もちろん、キーワード検索にもとづいた単純な情報フィルタリングでは、完璧な仕事はできない。だが、もっとも関心のありそうな記事に目を向けさせる上では役立っているようだ。よって、この機能は私とZiffの関係を強化することに成功している。将来的には、パーソナル化されたビューサーバが、先進的な情報フィルタリング手法を応用して、関連性フィードバックやその他の同意語検索に関するアイデアを導入するようになるだろう。さらに、関連する情報を見つけるために、ユーザ同士がお互いに助け合うようになるかもしれない。
関係構築の最後の例は、Amazon書店がやっている新刊書のお知らせサービスだ。これは、例えば、私の新しい著書が出たら知らせてほしい、といった時に利用する。実際の製品の販売が始まらないうちから顧客をつかむことができる。売り手と買い手、双方にとってメリットのあるすばらしいウェブの活用法だ。
1996年1月