ユーザーはWebをどう読んでいるか
答えはノーだ。ウェブを一言一句たんねんに読んでいる人はめったにいない。かわりに彼らはページを流し読みしている。個々の単語や文をつまみ読みしているのだ。
最近の調査で、John Morkesと私は、テストユーザーの79%がどんなページに出くわしても流し読みしていることを発見した。逐語的に読んでいた人はたった16%しかいなかった。
このため、ウェブページは流し読みに対応したテキストを採用する必要がある。具体的には、
- キーワードを強調する(ハイパーテキストリンクは一種の強調としての働きを持つ。他に書体の変化や色が挙げられる)
- 意味のある小見出し(「気の利いた」ものではない)
- 箇条書きリスト
- 1段落1アイデア(ユーザーが段落始めの数語でつかめなかったアイデアは、その後で言っても飛ばされてしまう)
- 逆ピラミッド型の文体、結論から先に。
- 通常の文章に比べて語数は半分(あるいはそれ以下)に
ウェブユーザーにとっては信憑性が重要だということもわかった。ウェブでは、情報発信者の身元がはっきりしないため、そのページの言うことを信じていいかどうかわからないからである。信憑性は、高品質なグラフィック、良質な文章、外部へのハイパーテキストリンクによって向上させることができる。他のサイトへのリンクは、そのサイトの作者がやるべきことをやっていて、読者が他のサイトに行くことを恐れていないという証明になる。
ユーザーは「売り文句(marketese)」に激しい抵抗を示した。現状、ウェブで幅を利かせているのは、自慢たらたらの自分勝手な主張(「いまだかつてない最高の」)からなる宣伝風の文体だ。ウェブユーザーは忙しい。彼らは率直に事実だけを知りたがっている。また、そのサイトが明らかに大げさなことをいっているとわかれば、信憑性も低下する。
ウェブ文書の改善効果測定
私たちの割り出したコンテンツガイドラインを適用すると、どれくらい効果が上がるのだろうか。これを測定するために、私たちは同じウェブサイトを形を変えて5バージョン作ってみた(基本的情報は同じ。言葉使いは違う。サイトナビゲーションは同じ)。そして、ユーザーに同じタスクを与え、これを別々のサイトで実行してもらった。表に示したとおり、ユーザビリティ測定結果をみると、簡潔バージョン(58%上)、流し読み対応バージョン(47%上)が劇的な好成績を収めている。文体改善のためのアイデアを3つ合わせて取り入れたサイトでは、実にきら星のごとき成績が出た。ユーザビリティ向上度は124%に達したのである。
サイトのバージョン | 段落サンプル | ユーザビリティ向上度 (比較対照との相対値) |
---|---|---|
宣伝風文体(比較対照) 商業ウェブサイトでよく見かける「売り文句」を使ったもの |
ネブラスカ州には世界的に有名なアトラクションがいっぱい。毎年確実に大勢の人たちが押し寄せます。1996年にもっとも人気のあった場所をいくつか挙げましょう。Fort Robinson州立公園(訪問者数:35万5000人)、Scotts Bluff国定記念物(13万3266人)、Arbor Lodge州立歴史公園および博物館(10万人)、Carhenge(8万6598人)、Stuhr大草原開拓者博物館(6万2人)、Buffalo Bill Ranch州立歴史公園(2万8446人)。 | 0% (定義により) |
簡潔なテキスト 対照条件比で語数を半分にしたもの |
1996年に、ネブラスカ州で集客率の高かったアトラクションを6つ挙げましょう。Fort Robinson州立公園、Scotts Bluff国定記念物、Arbor Lodge州立歴史公園および博物館、Carhenge、Stuhr大草原開拓者博物館、Buffalo Bill Ranch州立歴史公園。 | 58% |
流し読みできるレイアウト 対照条件と同じテキストを流し読みしやすいレイアウトにしたもの |
ネブラスカ州には世界的に有名なアトラクションがいっぱい。毎年確実に大勢の人たちが押し寄せます。1996年にもっとも人気のあった場所をいくつか挙げましょう。
|
47% |
客観的表現 主観的で自慢たらたらの誇張ではなく中立的な表現を用いたもの(それ以外は対象条件と同じ) |
ネブラスカ州にはいくつかアトラクションがあります。1996年に訪問客の多かった場所をいくつか挙げましょう。Fort Robinson州立公園(訪問者数:35万5000人)、Scotts Bluff国定記念物(13万3266人)、Arbor Lodge州立歴史公園および博物館(10万人)、Carhenge(8万6598人)、Stuhr大草原開拓者博物館(6万2人)、Buffalo Bill Ranch州立歴史公園(2万8446人)。 | 27% |
併用バージョン 文体上の改善点を3つともすべて取り入れたもの:簡潔、流し読み対応、客観的 |
1996年にネブラスカ州でもっとも訪問者数の多かった場所を6つ挙げると:
|
124% |
客観的表現バージョンにも、かなりのユーザビリティ上の改善(27%向上)が見られたのはちょっとした驚きだった。こちらのバージョンの方が、宣伝風サイトよりもユーザーの受けはいいだろうとは予想していたが(実際にそうだったのだが)、パフォーマンスの測定値には大した違いはないだろうと考えていた。ふたを開けてみると、4つのパフォーマンス測定値(時間、間違い、記憶、それにサイト構造)に関しても、客観的バージョンの方が宣伝風バージョンより良い成績を収めていた。この結果から推測されるのは、宣伝風表現が認知上の足かせになっているのではないかということだ。ユーザーは、誇張部分を取り除いて事実だけを取り出すために労力を使わねばならない。「ネブラスカ州には世界的に有名なアトラクションがいっぱい」で始まる段落を読んだ時のユーザーの反応はこうだ。ウソ、そんなはずはない。そして、この考えが彼らの足を引っ張り、そのサイトを利用しようという気持ちも失せてしまうのである。
(補足記事「なぜWebユーザーは流し読みするのか」)