1998年のWeb:
いくつかの予測

See Also: 1997年の予測はあたったか?
および
これら1998年の予測はあたったか?

ウェブの国際化

1998年は、ウェブが真に国際化する年になるだろう。自らのウェブサービスを維持するに足るほどのユーザ数を獲得した国も数多い。海外のサイトやユーザは、アメリカのそれをしのぐ勢いで成長するだろう。とはいえ、ウェブ上の主要言語はあいかわらず英語であり、ウェブユーザ全体に占める割合もアメリカ人がもっとも多い。だが、昔ほど支配的とはいえなくなるだろう。

海外ユーザの増加によって、2つの結果が生まれる。

  • あらゆるウェブサイトで国際的ユーザビリティに配慮する必要が出てくる。母国語でない人にも理解できるコンテンツになっているか?大勢の海外顧客層のために翻訳する必要はないのか?アイコンやグラフィックは外国人にも受け入れられているか?国際ユーザは、サイトの操作に困難を感じていないか?
  • 大部分のサイトは、北米各国での利用を目的としてデザインされるだろう。だが、あらゆる国で、現地の言葉を使った現地のサービスが増加するのは間違いない。純粋に現地向けのサービス以外に、おそらく地域向け、全世界向けのサービスも生まれてくるだろう。このセクターで誰が支配者となるか、なかなか興味ある見ものだ。
    1. 海外ウェブサイトは本国を出て、より広い地域へ、全世界へと拡大していくだろう。彼らの利点は、初めのうちは地元の慣習に通じていたり、(特に近隣諸国への拡大の初期段階では)現地での知名度があったりすることになるだろう。それに加えて、構造的な利点として、彼らには、自分たちのサービスがいずれは国際的なものになることが最初からわかっている(これとは対照的に、アメリカのプロジェクトは、自国以外のことなど普通は想定していない)。
    2. アメリカのウェブサイトは、あと一歩で全世界に出て行ける。すでに多数の海外ビジターを抱えるところが大部分であり、これを足がかりにして真に国際的なサービスを形成できるだろう。アメリカのサイトの多くは、より大規模であり、総合的かつ先進的なサービスを提供する能力を持っている。これを現地の条件でカスタマイズするのには、それほど手間はかからない。ソフトウェアの大部分は、すでに出来上がっているからだ。

付加価値ウェブサービス

ウェブサイトの中には、何でも自前でやる必要はないということに気が付くところが出て来るだろう。ウェブの基本はリンクである。そして、インターネットとは…そう…ネットワークなのだ。これらのテクノロジーは、自分でやりたいと思わないサービスを他のサイトに任せるには、まさにうってつけだ。すでに2つほど実例がある。クレジットカード決済承認の代行、それに討論用フォーラムの別サイトでの運営だ。現在、ほとんどの大規模ウェブサイトでは自前の検索エンジンを設置している。だが、検索なら、検索の専門家が運営する外部検索エンジンへのリンクを利用した方が簡単だ。検索結果を望みどおりのデザインのページに表示するよう、調整することも可能だ。

別の例を挙げよう。どんな企業ウェブサイトでも、本社やその他の施設への道順を示す必要があるだろう。だが、あらゆるサイトが自前で地図をデザインする必要はない。地図サービスに特化したサイトがあるからだ。お好みの地図サービスに適切なリンクを張って、道順案内とすればいい。こういった地図サービスの多くは、各ユーザの出発点から目的地までの道順を個別に表示できるようになっている。地図サービスは、自分なりのやり方で収入を得ている。現状では、それは広告を意味する。だが、将来的にはマイクロペイメントのおかげで、より高機能な地図が出てくるはずだ(状況しだいでユーザ、もしくはリンク元サイトのうち、いずれか適当な方が支払う)。

残念ながら、ウェブサービスにリンクしようと思ったら、今のところ、目的サイトで利用されているURLを制作者がリバース・エンジニアリングする以外ないことが多い。サードパーティにも望みのページを出せるように、プログラム的なやり方でリンクしやすくしているサイトはごくわずかだ。単純なリンク・スキームを用い、そのプロトコルはサイトに掲載しておくよう奨励したい。いったん仕様を決めたら、そのリンク・スキームは変えてはならない。リンク元のサービスに支障をきたし、誰にとってもいいことにはならないからだ。

将来、XMLの利用が増加すれば、サイト間で、今よりずっとインテリジェントなデータ交換ができるようになり、もっと高度な付加価値ウェブサービスが可能になるだろう。

付加価値ウェブサービスは、直接エンドユーザを対象にしてもいいだろう。例えば、家庭ユーザや小規模ビジネスが、インターネット経由でコンピュータのバックアップを取ってもらうといったものだ。毎晩、差分だけをバックアップするのなら、モデム接続でも十分だ。もちろんインターネットに流す前に、ファイルはユーザのコンピュータで暗号化しておくべきだ。バックアップ・サービスには、暗号化されたビットを安全に保管する責任があるが、中身は読めないようにしておく。総じて、権限を持ったユーザが操作する場合を除いて、あらゆるデータは暗号化されるようになると私は予想している。ネットワークを流れる時は言うまでもないが、事後の利用に備えて保存しておく場合も同様だ。暗号化がここまで普及するには、あと数年かかるだろう。政治的な問題がからんでくるからだ。とはいえ、ほとんどの場合は軽い暗号化で十分なので、いますぐにでも始められるだろう。

コンテンツと広告の自己最適化

結果としての価値を最大化するために、ウェブコンテンツは、利用統計をもとにして、もっと流動的、かつリアルタイムでの順応が可能なものになるだろう。例えば、ニュースサイトは、フロントページに並んだ記事が、それぞれどれくらいユーザにクリックされているか、常時、統計を取ることができる。人気があるとわかった記事は、より長期間フロントページに掲載される。一方、人気の低い記事は、すぐに入れ替えられる。また、見出しを最適化することも可能だ。編集者は、例えば、同じ記事に違った見出しを5本考えてみて、それら全部をオンラインに載せることができる。各見出しが、それぞれ20%のユーザに対してランダムに表示されるのだ。トラフィック量の多いサイトなら、数分も経てば、どの見出しが一番クリックされているか判断するのに十分なデータが集まるだろう。以後は、この言葉を当該記事のタイトルとして、全ユーザに表示することができる。

広告も自己最適化することができるだろう。制作物の代替案をリアルタイムにテストして、一番多くのクリックを集めたものを選び出すことが可能だ。ウェブの性質からいって、さらに徹底的にユーザを追跡して、単にクリックが多いだけではなく、目的地サイトでの売上がもっとも大きかった広告を選び出すこともできる。ただし、ここまでやろうと思ったら1時間では済まないだろう。たいていの広告のクリック率は低く、顧客の購買率となるとさらにそれを下回るからだ。そもそも、ウェブは広告にはそれほど向いていない。だが、リアルタイムに最適化すれば、購買客に何のアピールもできない広告からの損害額を押さえることはできよう。

1998年に起こらないこと

よく話題にはなるものの、次の3つは、今年は起こらないと予測する。帯域幅問題の解決、マイクロペイメント、Internet Explorer以外のブラウザの消滅

1998年1月1日