チャネル、デバイス、タッチポイントが、カスタマージャーニーに与える影響

カスタマージャーニーは、ユーザーと組織の間のタッチポイントの集合だ。そして、タッチポイントは、チャネル、デバイス、ユーザーのタスクを組み合わせることで定義される。

近年、スマートフォンやスマートウォッチ、タブレットのような新しいデバイスが市場に登場してくるにつれて、新しいタイプの顧客と組織の間のインタラクションが出てきている。いまやユーザーが利用するのは固定電話やメール、Webだけではない。最近では、他にも以下のようなさまざまな方法で彼らは組織と関わることが可能になっているからである:

  • モバイルWeb
  • モバイルやタブレットのアプリケーション
  • スマートウォッチアプリ
  • ライブチャット
  • キオスク端末
  • Eメール
  • インスタントメッセージ
  • ソーシャルネットワークページ

このため、カスタマージャーニーもかつてないほど、非常にダイナミックで、相互につながりのあるものとなってきた。今の組織は、旧態依然としたものの考え方に留まらず、自分たちとつながりのある顧客のニーズに応える戦略的ソリューションを提供しなければならないのである。

有効なオムニチャネルUX戦略を立てるために、企業はまずオムニチャネルUXの基本的概念を理解する必要がある。この知識があれば、組織は自社の顧客関与についてのエコシステムや、ユーザーがタスクを達成するためにどのようにチャネルやデバイスを利用しているかを理解することができるようになるだろう。この概念から、組織はオムニチャネルの全体的なエクスペリエンスをデザインするための知見を得られるので、デバイスを重視しすぎて、チャネルを犠牲にすることがなくなる。この記事では、オムニチャネルのエコシステムを作り出す基本的な構成要素(チャネル、デバイス、タッチポイント)と、それらがどのようにカスタマージャーニーに影響を及ぼすかを説明したい。

インタラクションチャネル

定義チャネルとは顧客と組織の間のインタラクションメディアのことである。インタラクションチャネルにはさまざまなタイプがある:

  • 双方向チャネルは、顧客と組織の間のニ方向の即時的なインタラクションをサポートする。そうしたチャネルには次のようなものがある:
    • 伝統的な1対1、あるいは物理的なチャネル。たとえば、担当者と直接、あるいは電話で話すこと、物理的な店舗内を見て回ることなど。
    • デジタルチャネル。たとえば、Webサイト、モバイルやタブレットのアプリ、SMSメッセージ、ソーシャルメディア、ライブチャット、Eメールなど。デジタルチャネルへのアクセスはスマートフォンやコンピュータ、タブレット、スマートウォッチ、スマートサーモスタットのようなコンピュータデバイス経由でおこなう。
  • 単方向チャネルは、直接的にはインタラクティブではない。通常、顧客から組織に向けての、あるいはその逆向きの、一方向のコミュニケーションをサポートするものだからである。例としては、郵便、紙媒体やテレビの広告、パッケージなどがある。(QRコードのような技術は「半分ライブなハイパーリンク」として機能することが可能で、もともと単方向のチャネルに反対方向の指向性をほんの少し追加することができる)。

どんな組織もそれぞれの関連するチャネルを組み合わせ、独自のオムニチャネルのエコシステムを作り出すことになる。銀行や小売店のような組織は物理的な店舗に大きく依存することになるだろうが、インターネットベースの企業はこうした物理的なチャネルをまったく持たず、多数のデジタルチャネルをサポートして、顧客と取引することになるかもしれない。組織の中には自社のビジネスをサポートするため、独自のチャネルを作り出すところもある。たとえば、AmazonのDash Buttonは、ワンプッシュするだけでユーザーがAmazonに商品(たとえば、洗剤など)を再注文できるWi-Fi接続型の物理デバイスである(こうしたボタンに注文を確認するディスプレイがついていない限り、これは一方向のコミュニケーションが顧客から企業へ向かっているという、珍しい単方向チャネルの例でもある)。

図
顧客と組織の間のインタラクションチャネル。
チャネルは顧客と組織の間のインタラクションの手段である。組織は自分たちのビジネスや、顧客との関係に関連したチャネルをサポートすることになる。

デバイスによってサポートするチャネルは決まっている

よくある誤解に、スマートフォンやスマートウォッチ、タブレットのようなコンピュータデバイス自体がインタラクションチャネルである、というものがある。しかしながら、デバイスはチャネルではない。デバイスは単にチャネル(通常はデジタルチャネルだが、たとえば、スマートフォンの電話機能経由で組織に電話するといった例外もあるだろう)にアクセスする手段を提供しているにすぎない。デバイスによって、利用可能なチャネルは変わってくるのである。

チャネルにはデバイス固有のものもあれば(たとえば、モバイルWebサイト、モバイルアプリ、スマートウォッチアプリなど)、複数のデバイスにわたって存在するチャネルもある(たとえば、ライブチャット、Eメールなど)。チャネルごとのエクスペリエンスは、それにアクセスするデバイスによって異なることがあるが、異なっているほうが望ましい場合もある。たとえば、Eメールのスマートウォッチ上での表示のされ方はコンピュータ上とは異なるはずである。

図
デバイスは、さまざまなチャネルにアクセスして、組織とインタラクトすることを可能にする。

タッチポイントとはインタラクションの事例である

カスタマージャーニー中、ユーザーはいろいろなチャネルを利用して、組織と何度かインタラクトすることもあるだろう。こうしたインタラクション事例がそれぞれ、顧客と組織の間のタッチポイントであるといえる。

定義タッチポイントとは、顧客と組織の間の具体的なインタラクションをさす。タッチポイントには、利用されたデバイス、インタラクションのために利用されたチャネル、達成された具体的なタスクが含まれる。

カスタマージャーニーは連続したタッチポイントによって構成され、そこでは1つ1つのタッチポイントによって具体的なインタラクションの詳細が定義される。

図
カスタマージャーニーとは、タッチポイントの連続であり、企業と顧客の間のインタラクションごとの状況を捉えたものである。
あるユーザーが映画館へ行くまでのカスタマージャーニー:
タッチポイント(1)ラップトップで上映時間を確認する。 (2)スマートフォンでチケットを購入する。 (3)映画館に電話で問い合わせる。 (4)チケットをダウンロードする。 (5)入場のためにチケットをスキャンしてもらう。

結論

自分のところのオムニチャネルのエコシステムをよく見てみよう。あなた方がサポートしているのはどのチャネルだろうか。そして、それはどのデバイスをとおしてだろうか。チャネルのソリューションにおいて、埋めなければならない重要な隙間がないかを自問してみるとよい。一般的なカスタマージャーニーにおけるタッチポイントを詳しく調べ、インタラクションごとの状況と、顧客がどのようにあなた方のソリューションを利用してタスクを達成しているかを理解しよう。こうしたやり方で自社のオムニチャネルのエコシステムを検討すれば、自分たちのチャネルと、顧客がどのように自分たちのチャネルを利用しているかを十分に理解できるようになり、顧客エクスペリエンスを戦略的に改善する原動力となるだろう。

カスタマージャーニーの調査方法と、オムニチャネルのユーザーエクスペリエンスの5つの構成要素の改善方法については、我々の1日トレーニングコース「オムニチャネルのカスタマージャーニーと顧客エクスペリエンス」で論じる。