収穫逓増・逓減の概念

ウェブサイトの収穫逓増に関するコラムへの補足記事

人間の経済活動は、ほとんどが収穫逓減に苦しんでいる。例えば、農業で言うと、農夫はもっとも豊かな土地から始めて、そこからもっとも価値のある収穫を得る。農場の経営を拡大しようと思えば、農夫は痩せた土地も耕作せざるを得なくなり、(もっとも価値の高い収穫への需要が満たされると)収穫の価値は徐々に低下する。一般に事業規模が大きくなればなるほど、新しい投資の期待値と現実がかけ離れていく。管理職の人間が機を見るに敏で、もっとも有望な領域から手をつけるものだと仮定すれば、収穫逓減はビジネスの基本法則のように思える。最初の数件の取引がもっともおいしい部分で、それ以降は徐々に価値を減じるのである。

収穫逓減が支配する世間一般とは違って、ある種の業界には変わった傾向が見られる。特にソフトウェア業界は、収穫逓増の原理で動いているようで、取引規模を拡大した方が、得るものも大きくなるのである。ソフトウェアの製造費(フロッピーやCD)は、そもそもコードを開発するのにかかったR&Dの費用に比べれば、非常に安価だ。従って、本当に儲けようと思ったら数を売る以外にない。さらに、顧客は大手ベンダーの製品を買うことに、より大きな価値を見出している。なぜなら、そのソフトを使っている人が他にもたくさんいるからである。ファイル形式はそのままでも、ファイルのやり取りが簡単だし、そのソフトを使える人を雇うのも難しくない。使い方を書いた本だってすぐに見つかるだろう。言い換えると、あるソフトウェア製品を購入した他人の数が多いほど、自分も買う確率が高い

簡単に言って、事業規模を2倍にすれば、多少なりとも2倍に近い価値が出せるのだろうか?従来の産業では収穫逓減の原理が働いて、100%拡大しても、たとえば90%くらいの価値しか生み出せない。収穫逓増が支配するソフトウェアやその他の産業では、100%の拡大が、例えば150%の価値を生む。大きいことがいい(まあ、だいたいはそうだが)ことかどうかではなく、大きくなればよくなるかどうかが問題なのだ。

公開:1997年4月15日
著者:Jakob Nielsen

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