UXインタビューのための効果的なガイドの書き方
ユーザーインタビューのガイドを用意することで、調査課題に関するトピックがカバーされ、インタビューでユーザーの生活やニーズに関する詳細な情報を得ることができる。
製品開発の発見フェーズで、ユーザーインタビューはユーザーの背景や信念、動機、欲求、ニーズなど、ユーザーに関する重要な情報を得るためによく利用される。通常、この段階でおこなわれるインタビューは半構造化インタビューだ(マーケットリサーチャーはこのインタビューを「デプスインタビュー」と呼ぶ)。つまり、一般に、あらかじめ決められた構造を持つが、その一方で、参加者がおこなった重要な発言に対してインタビュアーが柔軟にフォローアップすることも可能なものである。
半構造化インタビューでは、インタビュアーはインタビューガイド(ディスカッションガイドともいう)を使用する。構造化インタビューで使われるインタビュースクリプトとは異なり、インタビューガイドは柔軟に利用することができる。インタビュアーは、適切と思われる順序で質問をすることもできれば、質問を省略したり、ガイドに記載されていない質問も可能だ。
良いインタビューガイドは、参加者との自然に流れる深い対話を可能にする。(もちろん、インタビューはどのように実施するのかも重要だ。しかし、それは別の記事に譲ることとする!) インタビューガイドには、簡潔なオープンエンド型(自由回答式)の質問をいくつか入れて、参加者が自分たちのストーリーについて語ることを促すべきだ。こうした質問のあとには、そこで語られた行動や発言の背後にある動機や信念を明らかにするためのよく練られた深堀りする質問が来ることになる。
良いインタビューガイドを構築するには注意が必要で、時間がかかる。1つのインタビューガイドを作り上げるのに丸1日かかることも珍しいことではない。しかしながら、インタビューから最大限の成果を引き出すには、そうしたインタビューガイドを用意しておくことが重要だ。インタビューガイドがないと、以下のようなリスクを冒すことになるからである:
- その場で質問を考えようとする際に誘導尋問をしてしまう。
- 各インタビューで調査課題に関するトピックをカバーしていない。
結局のところ、インタビューガイドがないと、データの妥当性が損なわれる危険性があるということだ。この記事では、初めてインタビューガイドを作成する人のために、インタビューガイド作成の手順を紹介する。
ステップ1:調査課題を書き出そう
調査課題は、明確でわかりやすいこともあれば、そうでない場合もある。とはいえ、あなた方も自分たちがユーザーについて何も知らないからこそ、彼らに話を聞く必要があると気づいたのではないだろうか。よろしい! ところで、ユーザーから聞き出したいこととは何だろうか。それこそがあなた方の調査課題だ。インタビューガイドに取り組む前に、まずこの調査課題を書き出そう。というのも、それがインタビューの質問をかたちづくることになるからである。以下に調査課題の例を示す:
- この状況で、ユーザーは何を期待しているのか。
- この状況で、ユーザーはどのように意思決定を行うのか。
- ユーザーはこれまではどのようにしてこの問題を解決してきたのか。
- ユーザーはこの製品のどのような点を重視しているのか。それはなぜか。
ステップ2:インタビューの質問をブレインストーミングしよう
次に、頭に浮かんだインタビューの質問をすべて書き出そう。質問の良し悪しは重要ではない。それはあとで考えればいいことだからだ。ここでは、マインドマップでもデジタルホワイトボードでもシンプルなリストでも、自分たちに合うものを使えばよい! ときにはこの段階でさらに調査課題が出てくることもあるが、問題ない。それは調査課題のリストに追加しておけばよい。
ステップ3:質問の幅を広げよう
ステップ2が終わると、クローズド型(選択式)の質問が大半を占める長いリストが出来上がるのが一般的だ。しかし、この種の質問からは素晴らしいインタビューは生まれない。そうした質問から予想外のストーリーや発言を引き出すことは不可能だし、参加者と信頼関係を築くのにも限度があるからだ。(参加者から正確で詳細な情報を収集したい場合は、彼らとの信頼関係が重要である)。
そこで、質問のリストを見直し、インタビューのそれぞれの質問ごとに、代わりにその質問をもっと広範な自由回答式の聞き方にできないだろうか、と自問してみよう。
たとえば、従業員とのインタビューで質問されることが想定される以下のクローズド型質問について考えてみよう。
- オフィスで働いていますか。
- 仕事は主にデスクワークやペーパーワークですか。
- 仕事中に会議に出席する必要がありますか。
- チームで仕事をしていますか。
上記の質問は、参加者に職場での典型的な1日を説明してもらうことで答えが得られる可能性がある。そうした質問をすれば、参加者は上記のすべてまたは多くの質問についての情報を提供してくれるだろう。参加者がすべての質問に言及していない場合には、言及のなかった質問のいくつかをフォローアップ質問として聞いてもよい。
具体例について聞く質問(example question)とは、ある出来事を思い出すように促す質問で、クリティカルインシデント法で使用されるものと似ているが、ストーリーや予想外の発言を収集するのに適している。たとえば、自宅で料理をするときのエクスペリエンスについて知るためのインタビューをしているところだとしよう。具体例について聞く以下の質問は、参加者がさまざまなストーリーを伝え、我々が彼らの生活を垣間見る機会を提供してくれる。
- 一番最近、家で料理をしたときのことについて教えてください。
- 何か新しい料理を作ったときのことについて教えてください。
- 何か料理を作って、うまくいったときのことについて教えてください。
- 何か料理を作って、思ったようにならなかったときのことについて教えてください。
- 何か料理をしようと思っていたけれど、そうではなくテイクアウトすることにしたときのことについて教えてください。
ステップ4:不足している調査課題について補完しよう
インタビューの各質問を調査課題に対応させよう。調査課題の中にインタビュー質問のどれにも対応しないものがある場合は、インタビューの質問をさらに追加で作成して、不足している部分を埋める必要がある。そして、必要に応じて、ステップ3を繰り返そう。
インタビューガイドに調査課題を記載することも可能だ。リサーチャーの中には、ガイドの一番上やインタビューの質問と一緒に調査課題を表示させることで、調査の目的を忘れないようにしたい人もいる。
ステップ5:質問の順番を整えよう
会話が論理的な順序で進み、自然に感じられるように、質問の最適な順番を考えよう。たとえば、ユーザーが経験したエクスペリエンスについてのやり取りをしている際には、時系列に沿って話を進めるのが理にかなっている。ただし、そのエクスペリエンスに、ユーザージャーニーマップやサービスブループリント、エクスペリエンスマップに記載したフェーズ(「発見」「選択」「購入」「使用」「レビュー」など)がある場合には、そうしたフェーズに沿った順序で質問をするといいだろう。だが、必ずしもインタビューでこの順序から外れてはいけないというわけではない!
また、インタビューの冒頭で信頼関係を築くために、答えやすいオープンエンド型のウォーミングアップ用の質問を用意しておくことも検討すべきだ。例を挙げると、「あなたのことを少し教えてください」というのは、参加者の話を引き出す冒頭の質問の典型的なものである。一方、熟考する必要がある質問は必ずガイドの後半に入れなければならない。あまり早い段階でそうした質問をしてしまうと、参加者が圧倒されてしまって、ステレオタイプの回答しか得られない可能性があるからだ。その段階ではまだ参加者にそうした出来事や感情を思い出して判断を下すひまがないからである。
ステップ6:追加の、深堀りやフォローアップの質問を用意しよう
質問の順番を決めたら、それぞれの質問に目を通し、「これが起こったとき、あなたはどこにいましたか」「それはいつ起こりましたか」「なぜそれをしたのかを教えてください」などといった、さらに詳しい情報や説明を得るためのフォローアップ質問を用意しよう。
また、「そのことについてもっと詳しく教えてください」「なぜそのように感じたのか教えてください」「なぜそれがあなたにとって重要なのですか」などの、深堀り質問をするのを忘れないように、こうした質問もガイドに入れておくといいだろう。
ステップ7:ガイドのパイロットテストをしよう
ガイドのパイロットテストをすることで、以下のことがわかる:
- 聞くべきなのに、まだガイドに記載されていない質問。
- 表現を変える必要がある質問。
- 質問の順番がうまくいっているかどうか。
- すべての質問を聞けるだけの時間があるかどうか。
パイロットテストの参加者を募集し、変更のための時間を十分確保しよう。インタビューを通してガイドを修正していっても構わないが、ガイドをパイロットテストすることの意味は、調査開始前に明らかな問題を修正してしまうことにある。
要約
ガイドがあれば、インタビューの焦点が定まり、インタビューを成功させることができる。インタビューガイドは、参加者が自分のエクスペリエンスについて詳しく伝えることができるように、広範なオープンエンド型の質問で構成する必要がある。また、そうした質問に加えて、さらに詳細を把握し、説明を得るための深堀りとフォローアップ質問が多数行われることになる。インタビューガイドの例をダウンロードできるので、自分たちのインタビューガイドを作成する際の参考にしてほしい。
さらに詳しくは: UXカンファレンスの1日トレーニングコース「User Interviews, Advanced techniques to uncover values, motivations, and desires」にて。