5年後のネット環境

5年後シリーズの最後としてネットの5年後を考えてみたい。ネットの普及は本当に驚異的だった。これほど急速に、多様な使い方がされるようになり、多数の人が利用するようになるとは思っていなかった。もっとも現在でも紙や物体をベースに仕事をしている人はかなりいるので、その利用人口はこれからも増加すると考えられる。

ネットの利用で現在ネックになっていることの一つは、自分の欲しい情報がなかなか手に入らない、あるいは手にいれるのに手間がかかる、ということだろう。Googleなどの検索エンジンは確かに高性能だし、アクセス数に応じたソートをしたりして、その利便性を高めるような改善をしてきてはいるが、最終的に得られるのはURLの羅列である。その中に自分の欲しい情報があるとしても、ヒット数が1000だったとして、それを全部チェックすることは不可能だ。検索キーを増やしてヒット数を減らすこともできるが、それによってもしかすると必要な情報も削除されてしまったという可能性が残る。

そういう状況を打破するために現在semantic webといった技術の開発がなされている。いろいろ面白い考え方が入ってはいるが、それが何時になったら普及するか、あるいは本当に普及するかは現時点では不明である。

どうせ実現性が不確かなら、ということで希望的コンセプトを書いてみることにしよう。ユーザの希望することは、その一部であっても実現されれば嬉しいことがあるからだ。それは書いてしまえば簡単なことなのだが、要するに、テキスト解析技術を多様した情報検索ということになる。あるユーザがどのような関心をもっているか、どのような行動をしているかということは、HPを自分でもっている人ならそれを中心にして知ることができる。その他に、パソコンを利用して作成した文書、電子メールの内容、そして過去にアクセスした情報のログなど、パソコンの中に入っている情報には、その人の関心事や趣味、従事している仕事、スケジュールなどさまざまな個人情報が含まれている。現在考えられている検索システムは、あくまでも検索システムに入ってからのユーザの入力にもとづいて検索を行っているが、前述のような個人データに基づいて、ユーザのコンピュータの中にその個人のユーザモデルを構築することができれば、その情報を利用して、もっと精度の高い情報検索を行うことができるようになる。

もちろん検索システムだから、その駆動にはユーザからの入力が必要になる。しかし、その入力は「今日の会議はどこだっけ」とか「今Wordで書いている文書に参考になる文献はないかなあ。分かりやすく解説してあるものがいいんだけど」、「この間見た女の子の画像をみたい」といったようなものでいいことにする。また単に「ニュース」でもいい。この場合は、その人の関心事に応じて、イラク問題に関心がある人ならそのニュース、自分の持っている株の値動きであればその情報、ということになる。

なんだ、ただの自然語QAシステムの焼き直しか、と思われる方もいるだろう。確かにそうだ。しかし、今回はインターネットを経由して関連する膨大な情報から適切なフィルタリングを行い、ユーザが読むことのできる程度に情報を編集し、提供する、という点が大きく違っている。これまでの自然語QAが特定のデータベースに基づいていたのに対し、今回は世界中の情報が対象となる。それと、個人がパソコンを使って作成なり利用していた情報をベースにして個人のユーザモデルを構築し、それを利用して検索を行うというところが違っている。

こうしたシステムがあれば、小学生には小学生に、大学生には大学生に、ビジネスマンにはビジネスマンに、著述家には著述家に向いた形で情報が編集されて表示されることになる。こうなればe-learningの形も変わってくるだろう。現在は所定のカリキュラムをベースにして教材提示を行ったり、テストを行ったり、コミュニティ支援を行ったりしているが、少なくとも情報の摂取という点では、カリキュラムにすべての情報を書きこんでおく必要はなくなる。そのコアのキーワードさえあれば、カリキュラム編成者のユーザモデルをベースにして、適切な提供情報が整理され、受講者のユーザモデルをベースにして、適切な情報提供の表現形態が決定される。そんな動的なe-learningシステムができると思われる。

検索システムを取り上げてwebの将来像を考えてみた。もっともこれでは5年後は無理かもしれない。

公開:2004年1月27日
著者:黒須教授

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