ユーザビリティに関するNPO法人設立

まだちょっと早いのだが、ユーザビリティに関するNPO法人の設立を検討している。できれば2004年の10月には活動を開始したいと考えている。

以前からユーザビリティに関して活動を行う組織を設立したいという気持ちを持っていた。ユーザビリティに関する国内組織としてはヒューマンインタフェース学会のユーザビリティ専門研究会があったが、これは学会組織としてそれなりの大きな意義はあるのだが、もう少し現場寄りの活動をしたいという気持ちがあったからだ。ユーザ(消費者)の声を集約する場として、学会組織というのは必ずしも適当ではないと思っていた。ユーザの立場からマスコミや政府、自治体に声をあげるための拠点として何らかの組織化が必要であり、そうした実務を行うための組織が必要だったのだ。市場に出回っている商品のユーザビリティに関する評価を行い、マーキングシステムを実施したいというのも理由の一つだった。また、ユニバーサルデザインと関連してユーザビリティに関する問題意識が企業や法人、自治体などで高まってきているが、その受け口となる母体組織がない、ということもあった。

また個人的な理由としては、これまで私に宛てて国内外の企業やコンサルタントからいろいろな事案の相談がきており、時には私自身でそれを受け、受託研究の形で実施することもあった。しかし私の本務での研究費には不足はなく(個人的な収入は慢性的に不足気味ではあるが・・)、せっかく研究費をいただいてもむしろその使い方に困ってしまうような状況だった。さらにそのための時間が十分にとれないという事情もあった。そのため、多くの場合は知り合いのユーザビリティコンサルタント企業に案件を回して対応していただいていた。ともかく、せっかく依頼されてきたユーザビリティに関する要望をお断りすることは、国内外におけるユーザビリティ意識の活性化にとってマイナスとなるため、何らかの形では対応させていただく、という方針でやってきた。

こうしたことから、数年前からその受け口としてユーザ工学研究所という組織を個人的に立ち上げようという考えを持ってきた。ただ個人的な組織だと活動能力にどうしても限界がある。そこで法人組織、ということを考えたわけだ。

具体的な組織の構成やその活動内容については、これからきちんと詰めてゆくことになるが、まずは学会や企業でユーザビリティに関して中心的な活動をしておられる方々にコアメンバーとなっていただこうと思っている。組織の方針を決めるのを私の独断でやるつもりはない。ユーザビリティの中にも様々な専門領域があって、それぞれの専門のお立場からいろいろとご意見をいただき、それを集約する形で活動方針を決めてゆくのがいいだろうと考えている。

それから企業やコンサルタントとしてユーザビリティの実務を担当しておられる方々にもメンバーになっていただきたい。そうした理由から、専任メンバーとしては経理などの事務担当だけで、それ以外の皆さんには本来の業務時間以外、つまり週末などに活動に参加していただく、という形を考えている。もちろんユーザの声を集めるにはHPの立ち上げや電話窓口の設置も必要であり、そうした作業を手伝ってくださる学生さんや主婦の方々の協力にも期待している。

活動資金を蓄えるために、いろいろな案件をお引き受けすることもやっていくことになるだろう。ただ私としてもっとやりたいのは、一般のユーザ(消費者)と彼らに対して製品やサービスを提供する企業関係者、そしてそうした動きに対する制度やシステムを構築する立場にある政府や自治体関係者に対してユーザビリティという意識をさらに強く深く根付かせたい、というところにある。それは究極的には生活の質の向上とは何か、という問題について皆がきちんと考えるようになる状態を目指したものである。現在、ユーザの生活意識の調査を行ったり、ユーザビリティの専門家を対象にして、Quality in Use、すなわち利用品質(ユーザビリティ)とQuality of Life、すなわち生活の質の関係について調査を行ったりしている。こうした調査にもとづいて、私自身の中で概念整理を行い、こうした活動の目標設定につなげて行きたいと思っている。

設立が具体的な段階に入ったら、改めてここでアナウンスをしたい。その時は、このサイトにこられている多くの方がご協力くださることを期待している。

公開: 2004年3月22日
著者: 黒須教授

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