学会大会サイトのユーザビリティ
今年(2013年)の夏と初秋に参加する(した)、二つの国際会議のウェブサイトがつかいにくく、苦労した。この二つを素材にして、学会サイトのユーザビリティについて書いてみる。
今年(2013年)の夏から初秋にかけて参加する(した)二つの国際会議のウェブサイトがつかいにくく、苦労した。ウェブユーザビリティの問題については既に沢山の著書もあり、サイト構築者にとってはもう自明のことになっているのかと思いきや、なかなか周知徹底することは難しいらしい。そんなわけで、HCIに関連したこの二つを素材にして、学会サイトのユーザビリティについて書いてみることにした。できるだけURLをクリックして、実際のサイトを見ながら読んでいただきたい。
ただ、どちらも規模的にはマイナーな学会であり、ACM SIGCHIやHCI InternationalやIFIP INTERACTのような大規模なものではなく、そのために準備組織の陣容が整わず、力が及ばなかったという可能性はある。
状態の変化に対応していない、APCHI 2013のサイト
一つは、インドで開催されるAPCHI 2013である。URLは http://www.apchi2013.org/index.php 。学会の大会というものは、時間とともに状態が徐々に変化するが、それに対応していない、というのが、まず問題である。
サイトを見ていただくと分かるように、メニューバーには、左端にVenue(編注: 上記スクリーンショットではAbout City)がある。大会の開催地やホテルなどの情報である。しかし、この項目が追加されたのが7月になってから、つまり大会の2ヶ月前になる。参加者の準備の手間を考えると、この種の情報は、もっと早く決定し、ウェブにも掲載しておくべきだった。大会会場とコンファレンスホテルは同じものだが、後者についてはサイドメニューのAccommodation(宿泊施設)で見るようになっている。何をメニューバーで示し、何をサイドメニューで示すかという原則がそもそも出来ていなかったようでもある。
メニューバーのその右にはCall for Papers(論文募集)が載っている。どちらもsubmission deadlineはclosedとなっているから、もう締切は過ぎたことが分かるが、締切を過ぎたなら、この項目は除去しておくべきだと思う。
さらにその右にはAuthors(著者)とあって、さて何のことか良く分からない。クリックすると、これがどういう情報を提供しているかの説明は全くなくて、単にURLがあり、それをクリックするといきなりEasyChairというサイトに飛ばされる。さらにそこに入るには、user nameとpasswordが必要だというのだが、まず意味が分からずAPCHIという学会の外に出されてしまうと、何がおきるのか心配になってしまうのが人情ではないだろうか。何となく既に登録したような気もしたので、いつものIDとPWを入力してみると、APCHI 2013 Login for Masaaki Kurosuとなって、PCメンバーとしてログインしたことが示される。しかし、それが何を意味しているのかは分からない。さらにAPCHIのホームのアドレスや学会の説明が書かれているが、これって最初にEasyChairから入った人のためのものなのだろうか。ともかく意味不明なページである。
メニューバーのその右にあるAccepted Papersをクリックすると、アクセプトされた論文の一覧がでてくる。しかし、アクセプトされたことはさておき、多くの参加予定者にとって重要なのは、いつどこで何があるかというプログラムの情報ではないだろうか。そして、それはまだない(2013年8月9日時点)。
それより右側にあるAttendee(参加者)のところにaccommodation(宿泊施設)が入っていた。ちょっと唸る。たしかに参加者に関係する情報ではあるが、それならVenue(会場)はどうなのか、と思われる。どうにも情報構造(IA)がきちんとしていない。
シンプルさという見かけ倒しの、NES 2013のサイト
もうひとつの学会は、2013年8月11~14日にアイスランドで開催のNES 2013である。このサイトはシンプルで、メニューバーには5つの項目しかない。しかし、そのシンプルさは見かけのユーザビリティであり、実際にはとても使いづらいものだった。
Conference Information(大会インフォメーション)とProgramme(発表プログラム)はまあまあのできだったが、発表者の立場からはAbstracts(概要)というアイテムが問題だった。2013年8月19日時点ではAbstractsのところは404エラーになってしまうが、以前、そこにはSubmission Guidelinesというアイテムがあった。つまり原稿提出のガイドラインが掲載されている筈なのだが、そのページを開くと・・何もない。ただSubmission Guidelinesと書いてあるだけなのだ。そのために僕はabstractがアクセプトされてからしばらくの間、まだここには何も載っていないのだろうと思っていた。しかし、実はSubmission Guidelinesという文字列がリンクになっていたのだ(編注: 下の2013年8月9日のスクリーンショットをご覧ください)。このデザインが悪さをしたであろう証拠には、Proceedingsに載っている発表の過半数がfull paperになっておらず、abstractのままだったのだ。多分、僕のように気が付くのが遅れてfull paperがProceedingsに掲載されなかった参加者が多かったのだろうと思う。
あと、Registration(参加登録)のMy Registrationをクリックすると、自分の登録が完了しているかどうかという情報は表示されず、改めて入力フォーマットが表示されてしまう。まだ登録が完了していないのかと思ったりしたら二重登録をしてしまいかねない。
結局、NESのサイトは、シンプルさという見かけで倒した、つまり見かけ倒しのサイトだったということである。
大規模な学会のユーザビリティはまずまず
これらのサイトに比較すると、ACM SIGCHI2013のサイト http://chi2013.acm.org/ は、シンプルなURLだし、内容的にもAuthorsをクリックするともう終了してしまったところは横線で消してあるなど、それなりの配慮がなされている。HCI International 2013のサイト http://www.hcii2013.org/ や、INTERACT 2013のサイト http://www.interact2013.org/Home もそれなりに使い勝手が良くできている。こうしたサイトは、長年の経験の蓄積もあるし、規模も大きく担当者も十分に配置されているだろうから、ユーザビリティに関してはまずまずの評価を与えられるものになっているのだろう。ちなみにUXの本拠というべきUXPA 2013のサイト http://lanyrd.com/2013/uxpa/ は、既に完了したことを受けて、事後報告をする形になっていて、これはこれでアフターケアの良さを感じさせる。
2013年8月19日変更
- NES 2013のサイトについて、8月12日の初出時、「URLは https://events.artegis.com/lw/LoginPage?T=1&custom=1571&navid=4286&event=10226 である。大抵の人は検索エンジンを使ってここに到達するだろうとは思うが、中にはダイレクトにURLをタイプする人たちもいるだろう。それを考えるとこの長すぎるURLは問題である」と記載しておりました。しかし、そのURLに遷移する「www.nes2013.is」というURLが存在しましたので、その記述を削除いたしました。
- NES 2013のサイトについて、8月12日の初出時、「Abstractsをクリックしてみていただきたい」と記載しておりましたが、8月19日現在、Abstractsのページにアクセスできなくなっております。したがいまして、「Abstractsをクリックしてみていただきたい」という記述を削除し、「2013年8月19日時点ではAbstractsのところは404エラーになってしまうが」等、変更点を記載した上で、8月9日のスクリーンショットをご覧いただくよう記載いたしました。