ISO 13407の改訂
ISOの規格は数年に一度、改訂されることになっている。1999年に制定された13407も例外ではなく、少し遅れてしまったものの、ようやくその改訂作業に入った。2006年8月22日から23日の二日間、GaithersburgにあるNISTでTC159/SC4/WG6の会合があり、エディタであるTom Stewartを座長にして改訂のための最初の会議が開かれた。
今回の議事は大きく二つあり、一つはユーザビリティ関連の規格の整理統合、もう一つは13407自体の改訂であった。
整理統合というのは、ISO13407など、ユーザビリティに関連した規格の番号を整理しようという動きのことである。これまでユーザビリティに関する規格のベースはISO9241/10とか11だったが、そこにユーザビリティ関連の規格をまとめ、番号を付け直そうというものである。具体的には次のような構成が考えられている。
- Human Centred Design
- ISO9241-200 Introduction to human centred design
- ISO9241-210 Managing HCD projects – best practice
- Process
- ISO9241-220 Human-centred lifecycle processes
- ISO9241-221 Process assessment for human-system issues
- Methods
- ISO9241-230 Usability design and evaluation methods supporting human-centred design
ここで210番はISO13407、220番はISO/TR 18529、221番はISO/PAS 18152、230番はISO/TR 16982であり、200番はこうしたユーザビリティファミリーのベースとなる規格として新たに企画されたものである。
次にISO13407自体の改訂に関しては、まず様々な意見提示が行われた。具体例をあげると次のようなものである。
- 設計活動自体よりその結果としての製品に重点が置かれている(Thomas)
- 設計活動をもっとこまかく規定すべきだ(Thomas)
- 危機管理についても言及し、HCDが駆動される状況について焦点をあてるべき(Jonathan)
- どの活動には誰に責任があるのかを明確にすべきだ(Jonathan)
- 測定可能なものに焦点があてられすぎている(Jim and David)
- 四つの原則をもっと明確にすべきである(Nigel)
- ユーザの満足についてあまり説明がされていない(Nigel)
- 図はライフサイクル的な観点からもっと明確にされるべきだ(Nigel)
- 原則と活動の間に一貫性がない(Timo)
- ユーザのタスクデザインを活動の中に含めるべきだ(Timo)
- 図をライフサイクルに関連づけるべきだ(Ash)
- ハードウェアを忘れてはならない(Tomas)
- アクセシビリティの観点も重視せよ(Tomas)
- 四つの原則はクリアでない(Susan)
- 製品、システム、サービスについて明確に述べよ(Susan)
筆者も次のような点を指摘した。
- 初期のプロセスの定義が不明瞭である。
- 利用状況が物理環境に偏りすぎていて、精神的ないし社会的側面が抜けている。
- 関連する枠組みとして、たとえばシナリオベーストデザインなどへの言及がない。
- 要求工学との関連性が明確に表現されていない。
- 形成的評価と総括的評価をそれぞれ明確に位置づけるべき。
- 長期的ユーザビリティについて明確に位置づけるべき。
- 図の中の評価から利用状況に至るラインの意味が不明瞭。
- 運用などライフサイクル的視点を導入すべき。
- 四つの原則がまだ曖昧。
これらの指摘を受け、今後のミーティングでは、どこをどのように改訂していくかが議論の対象となる。ユーザビリティに関する基本規格と目されるようになった13407であるだけに、それがどのようにまとまるか、あと1,2年はかかりそうだが、その動きに注目していきたい。