抹茶は本当にアメリカで流行っているのか

「抹茶が米国で流行中というは本当?」と日本のスタッフに聞かれました。そう言われればそんな気も…。でも、ある調査で会ったヒスパニックの若い女性は、日頃メキシカンばかり食べていると言っていました。もしも彼女に質問したら流行っていると答えるだろうか…?

  • 森原悦子
  • 2015年8月25日

「抹茶がアメリカで流行っていると言うけど、本当ですか?」と最近、弊社の日本のスタッフに聞かれました。流行っているか?と言われれば、そんな気もしないでもない…。ですが、あるインタビュー調査で最近会ったヒスパニックの若い女性は、日頃ほとんどメキシカンばかり食べていると言っていました。もしも彼女にこの質問をしたら、果たして抹茶が流行っていると答えるだろうか…?少し疑問が残ります。

アメリカ系スーパーでも見かけるが…

確かに私の住むロスアンゼルスの南、South Bay地区だけを見て、かつ日系のメディアからの情報で判断すると流行っているような感じがします。アジア系の店が多く、抹茶のデザートは確かに増えてる気がしますし、アメリカ系スーパーに行ってもGreentea製品をアジアン食品コーナーやお茶コーナーで以前より見かけるような気がします。

しかし、ロスアンゼルス、さらに言うとSouth Bay地区は日本国外で最も日本人が住んでいる地域です。この地区を観察しただけ、日本のメディアを見ただけで、そんなことを言い切っていいのでしょうか。アメリカ系スーパーでGreentea製品が売られていたとしても、それは逆にアメリカ系スーパーの地域マーケティングの秀逸さによる品揃えで、日本人の少ない州のスーパーにGreentea製品、抹茶製品は売られているのでしょうか?

特にこのコラムでも以前から「多様性」がアメリカの重要なキーワードであると言っている手前、私個人の答えはYESと単純に言い切れないところがあります。

日本人が言う「流行っている」という感覚はアメリカで適用するのか

そもそも、「流行っている」とは正確にはどういう状況を指しているのでしょうか?「流行る」という観念について、日本人の持つ感覚と同じレベルでアメリカでの事情を話すのがちょっとキツイのではないか?と感じます。

日本人的感覚で言うところの「流行る」は、かなりの頻度で日常生活中に目や耳に飛び込んで来る状態を指しているのではないかと思います。

例えば、以前「きな粉」ブームになった時には日本中のスーパーで、きな粉が売り切れになったり、日本中の中高年の多くは朝食のヨーグルトにきな粉をまぶして食べていたのではないかと思います。もう少し詳しく言うと、例えば、東京の中高年だけが、きな粉を食べていたのではなく、同時多発的に日本の殆どのエリアでそういった状態であったと言えると思います。

そのような状態を「流行っている」と考えるならば、まだまだアメリカでの抹茶ブームは都会のみで流行っている、日本の今で言うところのパンケーキブームのような感じではないでしょうか?都会限定、一部の人嗜好性の人限定で、メディア先行のブームであるように感じます。

現地メディアの抹茶に関する反応は

アメリカのネットの記事で、最近このようなものを読みました。

この記事によると、最近抹茶が以前よりも飲まれるようになって来ている。紅茶や抹茶、Greenteaを含んだ“Tea(ティー)”全体の市場は1990年と当初に比べて2014年には5倍の100億ドル(現在のレートで約1.2兆円)まで大きく伸びてきている。

しかし、まだまだGreen teaは紅茶には及ばないとも書いてあり、「アメリカ自体はまだまだコーヒー主流の国であることは間違いない」と述べられています。「抹茶はロスアンゼルスのような日本人が多い地域にある日本の食品スーパーからアメリカに入ってくるようになった。(グルメフード、オーガニックフードで有名な)Whole Foodsや専門店などで抹茶を販売するアメリカのメジャーな抹茶業者は年間のセールスを30%伸ばし、-中略- スターバックスは抹茶ラテをメニューに載せ、Teavanaは竹製の茶筅を売り始めた」とあります。

確かにある特定の地域や嗜好性の人に特化してみると「抹茶は流行っている」けれども、まだまだ一般的なレベルに浸透しているとまでは言い切れないということでしょうか。

近所のアメリカ系スーパーでもMatchaは売っているのか

では、実際に近所のアメリカ系スーパーでも抹茶が売られているのか?弊社の近所ならアジア人も多いし、抹茶がブームなら、きっと売られているはず!と思い早速現地調査をして見ました。

今回行ったのは、Vonsというスーパー。南カリフォルニアと南ネバダ州にチェーン展開しているSafeway系列の一般的なアメリカ食品スーパーマーケットです。調査場所はRedondo Beach。住民の白人率は74%、アジア人は12%という街です。(Wikipediaによる)環境的にはトヨタやホンダなど、日系企業が数多くあるトーランスという街に隣接しているので、アジア系のレストランも少なくない街と言えるかと思います。

アメリカのスーパーマーケット・Vonsのお茶売り場

スーパーに入り、まずはすべての商品棚をチェック。お茶売り場は特に念入りにチェックしてみました。

アメリカのスーパーマーケット・Vonsのお茶売り場(拡大)

紅茶やハーブティーに紛れて、Green teaはいくつか発見しました!でも肝心なMatchaという文字が見つかりません…。製菓コーナーも、アジアン食品コーナーでもMatchaはありませんでした。つまり、このスーパーでは正確に言うとMatchaは売っていなかったということになります。

Gluten freeの表示までされている、Green teaの値札。

このGreen teaの値札にはなぜかGluten freeの表示までされています。また前出の記事の内容も加味すると、アメリカ人から見るGreen teaはなにかしらの健康食品に関連するような付加価値を連想させる食品であると考えられるかもしれません。

食の既成概念さえ覆せる、ミレニアルズ

ところで多民族化社会に育つミレニアルズ達は、地域の壁、民族の壁などあまり関係ありません。さらに言えば、抹茶に対する既存概念も、もしかしたら我々日本人よりも少ないと感じます。単に抹茶をお茶として飲むのではなく、プロテインのようにスムージーにビタミン源の一つとして加えたりして飲んでいるとも聞きます。

どんな形にせよ、スローペースでも、我々日本の誇れる食文化の一つである抹茶が世界中に広がっていくのは、とても喜ばしいことだと思います。日本の国土の25倍もあるアメリカ。物理的にも、流行が伝播するのには時間がかかりそうですが、少しでも日本の素晴らしい文化が伝播するように私も日々抹茶を宣伝して行こうと思います!

商品開発のための現地実態調査

イードの米国子会社・Interface in Design, Inc.は、どのような製品に関してもフレキシブルなスタイルで、アメリカをはじめとした世界各国で調査を実施することが可能です。例えば、出張せずに現地の状況を把握することも出来ます。

皆様の会社の商品企画や開発、デザイン部の方々が、現地向けの商品を開発する際の一助(マーケットの状況や、製品の使用状況などを通した仮説の抽出など)としていただけるはずです。

ご希望に応じてプレインタビューを加えたり、観察調査を加えるなどのオプショナルサービスも提供可能ですので、下記よりお問合せ下さい。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。