テレワークに関する調査(2)
生産性を上げるヒント
生産性を高めるカギは「タイムスケジュールを守る」「集中力」「集中できる環境」
前回に引き続き、イードが実施した調査結果を紹介しつつ、「テレワークにおける生産性の上げ方」、また「生産性を下げる要因」について考えてみたいと思います。
前回の記事では、イードが実施した調査の結果を基に、テレワークの実施状況、メリット・デメリットを見てきました。今回も調査結果を紹介しつつ、「テレワークの生産性を上げるにはどうしたら良いか」、また「生産性を下げる要因とは」について考えてみたいと思います。
調査概要
- 調査手法
- アンケートパネルに対するWebアンケート
- 実施期間
- 2020年4月10日~14日
- 調査対象者
- 20-59歳男女、テレワークをしている人
- 有効回答数
- 1,267s
- 性年代別内訳
- 20代男性 154s、30代男性 162s、40代男性 155s、50代男性 159s、20代女性 159s、30代女性 158s、40代女性 160s、50代女性 160s
テレワークで生産性が「上がった」のは2割、「下がった」のは3割
まず、現状のテレワークの生産性について見てみたいと思います。テレワークをしている人に、テレワークにしたことで生産性が上がったか、もしくは下がったかどうか聞いたところ、以下の結果となりました。
「とても生産性が上がった」「生産性が上がった」と答えたのが約2割、「とても生産性が下がった」「生産性が下がった」と答えたのが約3割でした。半数は「どちらともいえない」と答えました。この差はどこから来るのでしょうか。
テレワークに慣れないうちは、ある程度生産性が落ちる
まず注目したいのが、「テレワークを始めた時期」の違いです。以下は、テレワークを始めた時期別にこの結果を見たグラフです。
「初めてテレワークをした」人は、そうでない人に比べ、「とても生産性が下がった」「生産性が下がった」と答えた人が多いことが分かります。逆に、以前からテレワークをしていた人は、3割弱が「とても生産性が上がった」「生産性が上がった」と答えています。
続いて、テレワークを始めた時期別に「テレワークで困ること・不便なこと」を見たのが以下のグラフです。
「初めてテレワークをした」人と「以前から基本的にテレワークをしていた」人で最も差が大きいのが、「対面で話せないので十分なやりとりができない」です。(前回の記事でも述べましたが)慣れないうちは「対面で話せないこと」の不便さを感じるシーンが多いかもしれませんが、対面以外のコミュニケーションに慣れてしまえば、さほど問題ではなくなってくる可能性があると言えます。また、「気持ちの切り替えができない」も差が大きく、テレワークを続けていくうちに、(あるいは試行錯誤の結果として)気持ちの切り替えができるようになるのかもしれません。
これらの結果から、「テレワークに慣れないうちはある程度生産性が下がるが、慣れていくうちに(試行錯誤していくうちに)生産性は上がっていく」と解釈することができそうです。
必要に迫られると生産性は上がる?
「業務量」も生産性に影響していると考えられます。昨年同月に比べて業務量が増えた人は「生産性が上がった」と答える割合が高く、減った人はその割合が低くなっています。つまり、「生産性が上がった」と答えた人の中には、必要に迫られてそうなったケースもあると考えられます。考え方によっては、“必要に迫られさえすれば、生産性は上がる(上げざるを得ない)”と言うこともできそうです。
生産性を高めるカギは「タイムスケジュールを守る」「集中力」「集中できる環境」
次に、「テレワークで気を付けていること」をテレワークの生産性別に見たのが以下のグラフです。
注目に値するのが、「1日のタイムスケジュールを守っている」の差が「生産性が上がった」人と「生産性が下がった」人で大きいことです。前述のように、「テレワークで困ること・不便なこと」の上位には「気持ちの切り替えがしづらく、集中できない」「仕事以外のことをしてしまい、仕事に集中できない」が挙がります。つまり、テレワークは時間の使い方の自由度が高い一方、ON/OFFの切り替えや集中力を保つことに課題があると言えます。その対策として「1日のタイムスケジュールを守る」ことが有効であると、この結果から解釈することができそうです。(なお、「普段以上に成果を出すように心がけている」の差も大きく、この心がけが生産性に影響している可能性もありますが、この心がけがテレワークにおいてプラスに働くかどうかは判断に迷うところです。)
続いて、「テレワークのメリット」を生産性別に見たのが以下のグラフです。
全体的に、「生産性が上がった」人はそうでない人よりテレワークのメリットを多く感じていますが、特に差が大きいのが「仕事に集中できる」です。また「リラックスしながら働ける(ストレスが少ない)」も差があります。つまり、自宅でリラックスしつつ仕事に集中できるかどうか、ひいてはそのような環境があるかどうかが生産性に影響していると考えられます。
これらの結果をまとめると、生産性を高めるカギは「タイムスケジュールを守る」こと、また「集中力」「集中できる環境」にあると言えそうです。
小さな子どもを見ながらのテレワーク(在宅勤務)は至難の業
テレワークにおいて「集中力」が大事であることを見てきました。しかし、物理的に仕事に集中することが困難な環境もあります。例えば子どもがいる場合、「子どもがいて仕事に集中できない」という状況が発生します。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、学校や保育園・幼稚園が休みとなったり、登園自粛が要請されたりするケースも多く、本来勤務時間であるはずの日中に仕事に集中できないという悩みが出てきます。特に、(普段は保育園に通わせている)未就学児を家で見ながらテレワークをする場合、「子どもがいて仕事に集中できない」割合は7割近くに上ります。他の項目と比べても突出して高い割合となっており、未就学児を見ながらのテレワークがいかに困難であるかが分かります(私自身、1歳の子どもを見ながらテレワークをしていますが、驚くほど仕事が進みません…)。
この非常事態において、子どもを見ながらテレワークをするのは「生産性が落ちるのは仕方がない」と覚悟を決め、周囲に理解を求めるしか方法はなさそうです。
最後に
今回は2回にわたり、調査結果を紹介しつつテレワークについて考えてみました。テレワークのデメリットとして挙がった「対面で話せない」「集中できない」「気持ちの切り替えができない」は、裏を返せば職場に出勤することの意義でもあります(→対面で話せる、集中できる、気持ちの切り替えができる)。テレワークを通じて、今まで意識していなかった、“出勤することの意義”を改めて確認した人も多いのではないでしょうか。
一方で、テレワークを「働きやすい」と感じる人が多かったり、出勤するより「生産性が上がった」と感じる人もいるなど、テレワークの良さを実感している人も多いと思います。前回の記事で紹介したように、今テレワークをしている人の9割は新型コロナウイルス終息後も「テレワークで働きたい」と考えています。ただし「常にテレワークをしたい」と考えるのは3割弱で、6割は「たまにテレワークをしたい」と答えています。つまり、出勤する日もありつつ、テレワークをする日もあるという働き方が望ましいと考える人が多いことが分かります。
「週に5日職場に出勤する」ことは本当に必要なのでしょうか。また、本当に生産性の高い働き方なのでしょうか。今回の不測の事態は、働き方の前提を見直す絶好の機会であるかもしれません。アフターコロナの社会で、「必要な時に出勤し、そうでない時はテレワークをする」など、働く人それぞれが個別の事情に応じた“最も効率の良い働き方”ができるような、柔軟な制度が広がれば良いなと思います(もちろん、そもそもテレワークができない仕事が多いことも今回改めて学びましたが)。
まとめ
今回の記事では、以下の内容を見てきました。
- テレワークで生産性が「上がった」のは2割、「下がった」のは3割
- テレワークに慣れないうちは、ある程度生産性が落ちる
- 必要に迫られると生産性は上がる可能性がある
- 生産性を高めるカギは「タイムスケジュールを守る」「集中力」「集中できる環境」
- 小さな子どもを見ながらのテレワーク(在宅勤務)は至難の業
- 「出勤する日もありつつ、テレワークをする日もある」という働き方を望む人が多い
次回は番外編として、アンケート内で自由記述で聞いた「外出自粛など制限が多い中での日々の過ごし方の工夫」について紹介したいと思います。