利益最大化とユーザロイヤルティ

ウェブでもっとも重要なビジネス上のゴールは、ユーザのロイヤルティを最大化することだ。そして、将来サイトを訪問してもらう時、購入してもらう時に、ユーザの生涯に渡って価値あるものとなることだ。それに比べると、今訪問してもらう価値が最高かどうかはさほど問題ではない。時には、むしろ逆効果になることがあるのだ。

価格の差別化は、一見、ウェブ上での利益を増大させる方法のように思える。確かにコンピュータ上で価格に手を加えたり、過去の購買実績や、その他の履歴情報を元にして、顧客全員にみんな違った価格を提示するのはたやすいことだ。現実世界で同じことをやるのは大変だ。たいていの店舗では、固定価格を表示した物理的なサインを使っているからだ。ウェブでは、取れる客からは多めに取り、値段にうるさい客には値引きをするということができる。

ウェブ上でなら、製品の価格弾力性曲線を測定するのも非常に簡単だ。特定製品のページを訪問した最初の1000人かそこらのユーザに、違った価格をつけたページをランダムに提示して、各価格ポイントごとのユーザの購入数を調べられる。この情報を活用して利益マージンとそれに対応する購買率をかけあわせ、もっとも有利になる価格を選択すれば、利益を最大化できる。

たとえ標準的な経済理論がこの両方の戦略を取るべきだと教えていても、私はあえて異をとなえたい。ユーザのロイヤルティに深刻な影響を与えるからだ。顧客によって違ったレートを適用しているという事実はあっという間に知れ渡ってしまうだろう。そこで、今までずっと高い値段を払わされていたと知った顧客は、腹を立てて、二度と戻って来ないはずだ。そうでなければ、上得意になっていたはずのユーザ(そして長い目で見れば、結局はいちばんたくさんお金を使ってくれるはずのユーザ)が、サイトを見捨てる可能性がもっとも高い。他人よりもたくさん取られていたと知った顧客は、非常に腹を立てるだろう。

もちろん、古い経済社会では価格差別が行われていた。一番よく知られているのは飛行機のチケットだろう。まったく同じ製品(サンフランシスコからニューヨークまでのエコノミー席)なのに、その値段は最低150ドルから最高1200ドルまでの開きがある。この莫大な価格差別は、かなり不愉快なものだ。だが、少なくとも航空会社は、その価格差について、なんらかの原則にもとづいた説明ができる(週末をまたいでいる、払い戻し不可、前売り期間の締切など)。「あなたにはそれくらい払ってほしいから」などという理由で価格を決められても、到底納得はできない。ウェブの価格体系の中には、まさにこういった戦略にもとづいて決定されているものがある。

価格差別に関するプレゼンテーションでよく用いられる典型的な例は、サイト内でのユーザの動きをモニターするものだ。もし彼らが商品を眺めているばかりで、ショッピングカートに何も入れていないようなら、この値段では買いそうもないと見なされ、ディスカウント価格が提示される。この戦略はたぶんうまくいくだろう。だが、それが常識になってしまうまでの間だ。そのうち、どのユーザも、値段が下がるまで、いろんな品物を適当にクリックして回るようになる。もうひとつよくある例は、実現が簡単で、ショップボットからサイトに入ってきたユーザには、ホームページから入ってきた人よりも低い価格を提示するというものだ。こうすれば、ユーザはサイトにブックマークを付けるのをやめ、ショップボット経由で入ってくることは確実だ。

最良の顧客に対しては、そのロイアルティに報い、何かインパクトの必要な人々に対しては、他の顧客に悪く思われない程度に何か特別なものを提供するというやり方のほうが、私は好みだ。あるユーザには見返りを与えながら、一方では、他のユーザをないがしろにしないというパラドックスを解くにはどうしたらいいのだろう?金銭以外の報酬を利用するのだ。このためにはウェブはうってつけだ。

1997年に、ロイヤルティを向上させるための手法として、私は常連ユーザプログラムを推奨した。ロイヤルティプログラムを取り入れているサイトなら、今ではいくつか存在していて、例えば、CDを9枚買ったら10枚目はタダ、というような伝統的な手法を実践している。だが、ウェブならではのアイデアを利用した常連ユーザプログラムを実践しているところは数少ない。

例えば、限定品とか、入手困難な製品を取り扱っているサイトなら、そういった製品をもっともロイアルティの高いユーザから優先的に販売するのだ。何かFurby人形のようなブームが起こった時、過去にもっともよく買い物をしてくれた顧客から順番に提供していくのである。(Paul Haahrからの電子メールによると、オンライン証券会社のETradeとDatekでは、「人気」IPO株を販売するときに、もっとも取引の多い顧客から優先的に販売しているということである)

2000年3月5日

公開: 2000年3月5日 (原文:2000年3月5日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Profit maximization vs. user loyalty

分類キーワード