Flash:99%有害
マルチメディアはウェブの役割のひとつではあるが、現在のFlash技術は以下の3つの点でユーザビリティを損ねる傾向がある。まず、デザインがダメになる可能性が高い。また、ウェブの基本的なインタラクションスタイルからも逸脱している。さらに、本来ならサイトの核となる値打ちを高めるために利用すべき資源を無駄使いしてしまう。
ウェブサイトにFlashを利用すると、おおむね99%の確率でユーザビリティにとって病弊となる。めったにないことだが、よいFlashデザインというものも存在する(時にはサイトの価値を高めるのに役立っていることさえある)。だが通常は、Flashを利用するとユーザビリティは低下する。こういったマルチメディア・オブジェクトは、ほとんどの場合、削除した方がいい結果が得られる。
Flashは以下の3つの点でユーザビリティを損なう傾向がある。まず、デザインがやり過ぎになる。また、ウェブの基本的なインタラクション原理からも逸脱している。さらに、サイト本来の価値から注意がそれてしまう。
凝りすぎたデザイン
スプラッシュ・ページは、過度なウェブデザインという罪悪の初期的な形であった。幸運にも、今ではプロフェッショナルなサイトは、ほぼ全面的にこのユーザビリティ障壁を取り除いている。ところが、今度は同じくらい不快な効果を持ったFlashによるイントロが台頭してきた。このおかげで、本来ユーザが持っていた目的の達成は遅れてしまう。だが、よい面もある。Flashイントロには「イントロを飛ばす(skip intro)」ボタンを備えているものが多い。だが、これらの存在そのものが、いくつかの点でデザイン過多につながるのだ。
第一に、Flashは不必要なアニメーションを増加させる。モノを動かすことができるんだから、どうして動かさないんだ?もちろん、アニメーションもオンライン・コミュニケーションの一部ではある。だが、1995年のガイドラインで議論したように、それらに与えられた場所は限られている。
第二に、ウェブの最大の特徴のひとつとして、ユーザが自分で行き先を決められるということがある。ユーザは自分の好きなところへ、好きな時に行く。ユーザビリティ上の問題が多々あるにも関わらず、この性質があればこそ、ウェブは使えるものになっているのだ。残念ながら、Flashデザイナーの多くはユーザの主導権を減少させ、インタラクティブ・メディアになるどころか、反対にテレビのような従来型のプレゼンテーション・スタイルに逆戻りしている。何もしないでじっと画面を見ていろ、とユーザに強要するようなウェブサイトは退屈だし、気持ちは冷めてしまうだろう。いかにクールなルックスであろうと関係ない。
第三に、Flashデザイナーの多くが、自分たち独自の非標準的なGUI部品を取り入れている。スクロールバーのデザインは、いったいいくつあったら気が済むんだい?実際のところ、オンライン・コンテンツには、確かに新しいスクロールバーが必要だろう。現在のスクロールバーは、ユーザ自身が書き手でもあるオフィス・オートメーション・コンテンツのためにデザインされたものだからだ。だが、新しいGUI部品は、大規模な人間工学の実践である。現在のMacintoshとWindowsのスクロールバーのデザインは、世界でも有数のインタラクション・デザイナーが、何年もかかって、幾多のデザイン案をテストした結果、生み出されたものである。週末だけでデザインしたような新しいスクロールバーは、まず間違いなく細部でたくさんの間違いを犯しているはずだ。たとえ新しいデザインが利用可能なものだとしても、サイト全体のユーザビリティが下がることには変わりない。どうやって使ったらいいか、ユーザは自分で判断しなくてはならないからだ。標準的な部品なら、彼らもその操作方法を知っている。標準を採用すれば、ユーザはコンテンツ、およびサイト訪問の本来の目的に集中できる。道を踏み外せば、環境を制御しているという彼らの感覚を奪うことになる。
ここにあげたユーザビリティ問題は、いずれもFlashそのものに起因する問題ではない。ガイドラインに準拠した使いやすいマルチメディア・オブジェクトをデザインすることはできるはずだ。問題は、現在のFlashには、やり過ぎを助長する傾向があるということだけである。
ウェブの基本を逸脱
第二の問題群は、標準のウェブ技術ではなく、プラグインを利用するということ自体に関係する。将来、マルチメディア機能が今よりうまくブラウザに組み込まれるようになるかもしれないし、そうなれば、問題も解決するだろう。だが今のところ、Flashは標準のHTMLではない。この事実から、以下のように、実に厄介なユーザビリティ問題が生起する。
- 「戻る」ボタンが効かなくなる。Flashオブジェクト内をナビゲートしている場合、標準的な後退手法を使うと、マルチメディア・オブジェクトから外に出てしまう。期待している通りの以前の状態には戻れない。
- リンク色が機能しない。こうなると、行ったことのある場所と、まだいったことのない場所の区別は簡単にできない。位置感覚が損なわれるので、ナビゲーションが混乱する。
- 「文字のサイズ 大/小」ボタンが機能しない。よって、ユーザは、デザイナーが指定したフォントサイズでテキストを読むことを強制される。デザイナーには目がいい人が多いせいか、たいていの場合、フォントは小さすぎる。
- Flashは障碍のあるユーザのアクセシビリティを減少させる。
- 「このページの検索」機能が機能しない。一般的にいって、Flashは検索となじまない。
- 国際化、ローカライズが複雑になる。コンテンツを翻訳するには、各国のウェブサイトでFlashの専門家を用意しなくてはいけない。また、その言語に不慣れな人にとって、動きのあるテキストを読むのはなおのこと難しい。
サイトの中心的な価値から目が離れる
恐らく、Flashのもたらす最悪の問題は、本来ならそのウェブサイトのコアとなる価値を高めるために使われるべき資源が、そっちに吸い取られてしまうということだろう。本来、力を入れるべきなのは…
- コンテンツの頻繁なアップデート(Flashコンテンツは、1度作ったらそれっきりということになりがち)。
- ユーザの持つ主な疑問にあらゆるレベルで答えられる情報価値の高いコンテンツを提供する(Flashコンテンツは、たいてい表面的なものだ)。
- 顧客によりよいサポートを提供するために、彼らが抱える真の問題を洗い出すタスク分析を行う(Flashは外部のエージェントに発注することが多いが、彼らはビジネスを理解していない)
Flashの制作が安価で済み、さらに、コンテンツ制作者全員が標準のウェブページを書く時と同じくらい使いやすいFlashオブジェクトを作ることができるのなら、これらの問題の多くは軽減されるだろう。だが今のところは、あいかわらず深刻な問題だ。よって、ユーザビリティと、サイト全体のビジネス・プレゼンスの向上に関心があるウェブデザイナーには、なるべくFlashを使わないようお勧めしたい。
2000年10月29日