企業Webサイトに対するPR担当者の評価は「D」

企業はPRに100万ドル単位の予算を費やしているが、そのウェブサイトの報道向けセクションは、ジャーナリストのもっとも基本的なニーズすら満たしていないことが多い。私たちが最近行ったユーザビリティ調査で、ジャーナリストが一連の企業サイトから回答を得られた疑問はわずか60%だった。

好意的な報道の価値を軽んじる企業はほとんどないはずだが、私たちが最近行ったユーザビリティ調査では、とてもそうとは思えない結果が出ている。

この調査では、20人のジャーナリストに依頼して、10社の企業ウェブサイトの報道向けエリアから記事の作成に必要な情報を集めてもらった。タスクの中には、ジャーナリストたちに、各企業の財務、経営、社会的責任への寄与、それにPR担当の電話番号といった基本的な情報を見つけてもらうことも含まれていた。

平均すると、ジャーナリストがこれらの単純な設問に回答を得られたのは全体の60%に過ぎなかった。合衆国の学校の流儀でこれらのサイトを採点するなら、その平均点は「D」以下である。

締め切りを抱えたユーザのためのデザイン

ウェブベースでのPRのユーザビリティに関して得られた知見には、ジャーナリストが厳しい締め切りの下で働いているという事実に直接関係するものが多かった。彼らは一刻も早く解答が欲しいのであり、意味のないダウンロードに付き合っているヒマはないのだ。中にはトーストの写真を掲載しているところもあった。これは、ある大手の連邦政府機関で実際に見られた例だ。

この調査では、私たちはジャーナリストの働く現場にこちらから出向いていった。彼らの多くはフリーランスか在宅勤務であり、低速なダイアルアップ接続を利用しているのが普通だ。また、その多くが旧式のコンピュータ機器を使っており、あらゆるソフトウェアの最新版を揃えておかないと気がすまないというような人はほとんどいなかった。よって、非標準的なデータ形式、例えば、PDFやFlash、それにQuickTimeといったようなデータ形式は、限られたインターネット接続を詰まらせることにしかならない傾向がある。いくつかのテストセッションでは、PR情報が、実際にジャーナリストのコンピュータをクラッシュさせてしまった。あなたの企業を好意的に扱ってもらいたいのなら、こういうことは感心しない。

他にはどんなことがわかっただろうか?ジャーナリストたちは、いわゆる情報のブラックホールには特に冷淡だったが、これは企業のPRエリアにありがちなものだ。プレスリリースを読むために登録なんてしたくない。記事を書くのに何か使えるものはないか、ちょっと見てみたいだけなのだ。また、彼らは、一般向けのメールアドレス宛てに質問を書き送る気にもならない。例えば、「corporate.communications@nokia.com」などというメールアドレスから、何か有益な情報が得られる見込みがあるだろうか?締め切りを控えているというのに?

国外でのユーザビリティ: なお悪い

現地の代理店に任せてあるからといって、国外向けのPRをないがしろにはできない。たとえ彼らがいい仕事をしているにしても、企業ウェブサイトが国外PRに果たす役割は大きい。あらゆる国のジャーナリストが、サイトにやってくるからである。

テストユーザの中には、合衆国とヨーロッパのジャーナリストが含まれている。また、テスト対象サイトの中には、合衆国およびヨーロッパの企業が含まれている。

国外ユーザ向けに完璧なサイトを作るのは難しい。だが、基本的な国際ユーザビリティのガイドラインはシンプルだ。例えば、プレスリリースのリストには古いものしか入っていないと思い込んだジャーナリストが複数いた。日付の形式はグローバルな表記にしておくべし、という最も基本的な国際的ガイドラインを守らなかったからである。そのサイトで一番上にあるプレスリリースの日付が「10-03-2000」となっていた場合、ヨーロッパのユーザにとっては、それは3月10日にリリースされたものと考えるのが自然だ。よって、そのサイトは鮮度が悪いという結論に達することになる。このテストセッションは2000年終盤に実施したもので、そのプレスリリースの日付は、実際には10月3日だったのだ。日付の月を月名で表記しておけば避けられた問題である。

ジャーナリストの情報ニーズ

ジャーナリストにとって、ウェブは、基礎調査のためのツールとして捕らえられていた。企業の基礎情報をどうやって得ているのか尋ねたところ、今回調査したジャーナリストの全員が、まずウェブの調査から始めると回答した。ジャーナリストの約半数は、まず手始めにターゲット企業のウェブサイトを訪問する。残りの半数は、外部サービスの検索から始める(ほとんどはGoogleだが、Dow
Jones InteractiveやLexis-Nexisといった従来のサービスも利用する)。この結果からも、クリーンな企業ウェブサイトの必要性が強調される。報道向けセクションにははっきりそれとわかるラベルをつけ、ジャーナリストの求める解答を迅速に提供するのだ。

ジャーナリストが企業ウェブサイトを訪問する理由のトップ5は以下のとおりである。

  • PR担当者のコンタクト情報を探す(氏名と電話番号)
  • 企業の基礎情報を確認する(重役の名前のスペル、その人の年齢、本社所在地など)
  • イベントに関する企業自身の見解を見つける
  • 財務情報のチェック、それに
  • 記事中に図として利用する画像のダウンロード

これら基礎情報は、絶対にすぐ見つかるようにしておくこと。さらに、そこではマーケティング的要素は払拭しておく必要がある。多くのサイトでは多弁をもって事実を覆い隠そうとする傾向があるようだ。

PRのユーザビリティ向上のためのガイドライン

ジャーナリストには複雑なナビゲーションツリーをかき分けていったり、マーケティング用の美辞麗句から事実だけを選り出したりしているヒマはない。メディアに正確な報道をしてもらいたいのなら、企業は、ジャーナリストのニーズを第一に考えてウェブサイトをデザインすべきだ。特に、事実や数字に迅速にアクセスできること。また、PR担当部署の生の人間に簡単にコンタクトをとれるようにしておくことも必要だ。こういった常識とも思えるステップが、ほとんど実行されていないのだ。

私たちは、全114ページからなるこのユーザビリティ調査のレポートを出版した。PRデザインの詳細な実例で、うまくいくやり方、だめなやり方を紹介している。このレポートには、企業ウェブサイトにおける報道向けエリアのユーザビリティを向上させるための32のデザインガイドラインが含まれている。

ユーザビリティガイドラインはすべて実行可能なもので、そのためのコストも、ほとんどの企業のPR予算から考えれば微々たるものだ。実際、このガイドラインに従えば、予算節約にもつながるはずだ。シンプルなデザインに重点をおけば、ジャーナリストは自分でサイトから写真をダウンロードできるようになる。FedExで送付する費用が浮くというものだ。

もっとも単純なガイドラインでさえ守られていないことが多い。このため、企業がPRにかけた努力もインパクトが薄れてしまっている。例えば、今回調査した10サイトでは、オンラインでのプレスリリース掲載に関する私たちのアドバイスのうち、63%にしか適合していない。つまるところ、PR関連のユーザビリティはシンプルな問い掛けに行き着く。内から外へのPRには大金をはたく(ジャーナリストの注目を集めるため)くせに、外からやってくる者へのPR効果(ウェブサイトにやってきたジャーナリストを満足させること)を高める単純なステップには目を向けないのはなぜだろう?

2001年4月1日(ジョークに非ず)