オリンピック公式サイト:
銅メダルも無理
初期に少し手を加えたおかげでSalt Lake Cityのウェブサイトは、ホームページユーザビリティガイドラインに70%適合するようになった。だが、サイト内部でのタスクサポートでは、とてもメダルを争えるようなレベルにない。
全般的に見て、Salt Lake City開催の2002年冬季オリンピック公式ウェブサイトは、定評あるユーザビリティガイドラインへの適合度という面で見劣りするものである。
- 28項目のサイトマップユーザビリティガイドラインの80%
- 113項目のホームページユーザビリティガイドラインの70%
- 21項目の所在地情報ユーザビリティガイドライン(物理的な所在地、例えば競技会場などを見つけるのに役立つ)の44%
- 207項目のEコマースユーザビリティガイドラインの36%(記念品ストアに関して)
サイトマップは銀賞に値する:いかなるユーザビリティガイドラインであれ、80ポイント台を獲得するウェブサイトはきわめて珍しい。完璧なウェブサイトでも90%くらいのものだろう。なぜなら、実際のウェブサイトでは、何らかのやむをえない理由があって定評あるガイドラインのいくつかには背を向けざるをえないからである。よって、今回のオリンピックサイトマップにも、約10%の改善の余地がある。そうすれば金メダルだ。
オリンピックのもつ国際的な性格にもかかわらず、国際的な気配りには欠けている。ホームページの目立つところにフランス語コンテンツへのリンクを設けたのはプラスである。だが、このコンテンツの出来が悪く、大きなマイナスになっている(しかもフランス語を希望したのにも関わらず、ナビゲーションは英語のままという事実もある)。19項目の国際ユーザサポートガイドラインへの適合度では、このサイトの得点は25%である。
開催中のホームページ改善
オリンピックホームページに関するWIRED の批評記事が公表された後、このサイトが抱えるユーザビリティ問題のいくつかは改善された。競技はすでに佳境に入っていたことを考えると、完全な再デザインを期待するのは現実的ではない。だが、この事例からもわかるとおり、可能な限りの修正を施す上で、デザインの微調整は有効な手段である。例えば、修正前は必要以上に解像度の高い画像だったが、今ではもっと対象を絞った小さ目の写真になっている。
修正後のホームページの得点は70%である。これは銅メダルの圏内だ(修正前は66%だった)。
ホームページユーザビリティでの比較的高い得点は賞賛に値する。だが、このサイトをタスク志向の面から一歩深く見ていくと、あまりのユーザビリティ得点の低下に驚いてしまう。これはよくあるミスだ。威信が重視されるデザインプロジェクトでは、ホームページに力を入れるあまり、サイトのその他の部分がお留守になる傾向があるのだ。
実例:このサイトでは、マップと座席表はとてもよくできているのに、会場を探すのが必要以上に難しい。各競技ごとにサブサイトがあって、そのメインページに詳細な情報が掲載されている。ここまではいい。競技のメインページには、目立つ位置に「会場」というリンクさえ配置されている。道順が知りたければ、もちろん、ここをクリックするだろう。
残念なことに、例えば、スキージャンプのページから会場リンクをクリックしても、スキージャンプ会場のページには行けない。そのかわりに現れるのは、その地域の全域図である。だから、ジャンプ選手がどの会場にいるかは、自分で判断するしかない。
リンクの限定性が低いことが、今日のウェブのユーザビリティを下げている大きな原因のひとつだ。ぜひ、スキージャンプのページから会場へ直接リンクするようにしてもらいたい。
公式サイトか否か?
競技開催直前にGoogleで「冬季オリンピック(winter olympics)」を検索してみた。結果は以下のとおり。
Salt Lake 2002
This site requires javascript enabled on your browser.www.saltlake2002.com/ – 1k – 06 Feb 2002 – Cached – Similar pages
INTERNATIONAL OLYMPIC COMMITTEE – PASSION – THE OLYMPIC …
Fran軋is, WWW.MUSEUM.OLYMPIC.ORG, OLYMPIC MUSEUM
LAUSANNE The symbol of the union of sport …Description: Take a tour and see pictures of past olympics, hear about the Olympic symbols, learn about the ceremonies…
Category: Kids and Teens > Sports and Hobbies > Olympics
www.museum.olympic.org/ – 7k – 06 Feb 2002 – Cached – Similar pages[… 3リンク割愛 …]
THE OFFICIAL WEBSITE OF THE OLYMPIC MOVEMENT
… Salt Lake City 2002 XIX Olympic Winter Games From 8 to 24 February, feel the emotion
of the first Olympic Games of the New Millennium in the heart of the …Description: [Official site] A variety of information involving the candidate and host cities, events, IOC policies,…
Category: Sports > Events > Olympics
www.olympic.org/ – 22k – 06 Feb 2002 – Cached – Similar pages
どれがメインの公式サイトなのだろう?「国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)」と「公式ウェブサイト(official website)」は、いずれもそれらしい。実際の冬季オリンピックのサイトは、もっともそれっぽくない。なにしろ、ここがもっとも力を入れているのは、どうみてもJavaScriptを普及させることのようだからだ。
複数のサイトが並立すると、ユーザは確実に混乱する。それでもやむをえない場合は、ページタイトルや、検索エンジン向けの説明といったマイクロコンテンツにおいて、各サイトの目的を明確にしておくこと。
採点外:アクセシビリティとPR
今回のオリンピックサイトについては、75項目からなる障碍を持つユーザのためのユーザビリティ向上ガイドラインへの適合度は評価しなかった。これについては、すでに他の媒体で触れられており、そこでは、このサイトが技術的アクセシビリティに関する基本的ガイドラインに多数違反していることが述べられている。そもそも中にさえ入れないサイトなら、使えなくて当たり前だ。
弱視者にとってユーザビリティを下げる問題がひとつはっきりしている。それは固定フォントサイズを利用することだ。画面上で読みやすいと思う大きさにテキストを調節できなくなる。
マウスを近づけると画面上に飛び出てくる枝分かれ式メニューも目障りだ。これはどんなユーザにとっても使いにくい。運動能力に障碍があると、特に深刻な問題になる。
オリンピックは大きなニュース性のあるイベントだ。だから、このサイトが32項目のPR関係のガイドラインにどれほど適合しているか見てみたいと思っていた。だが、公式サイトにはいかなるPRリンクも用意されておらず、このため、私はこれを0%と評価すべきだろうと考える。現地では、報道関係者をサポートするために大規模なPR活動が行われているに違いない。だが、規模の小さい新聞社や専門のニュースレターで、Salt Lake Cityに記者を派遣する余裕のないところはどうなるのだろう?ウェブなら、従来のメディアよりもずっと広い範囲をカバーできるし、専門的な興味に応えることはウェブが特に得意とするところだ。フランスのカーリングチームのファンなどがそうだろう。
次回に期待
Salt Lake Cityのサイトはサイトマップで銀メダル、修正後のホームページで銅メダルを獲得した。だが、サイトの全般的なユーザビリティは、メダルにはるかに届かない。ギリシアのウェブデザイナーはこの教訓をしっかり心に刻んで、2004年のAthens開催時には、ぜひよりよいサイトを制作していただきたい。
2002年2月17日