ユーザー登録を購入前に強制するのはやめよう
ECサイトで、ユーザー登録を必須にせずゲストでも精算できるようにすれば、購入プロセスがシンプルになる。またそれにより、ユーザーは希望しない登録を強制されるよりも快適に感じて、登録しようと思うようになる。
ECサイトのユーザビリティ調査で最もよく聞く不満の1つが登録に関するものである。買い物客がサイトへの登録を嫌ったり、恐れる理由は多数ある。たとえば、彼らは1回限り、あるいはプレゼントを買おうとしていて、そのサイトへ二度と戻る予定がないのかもしれない。あるいは、登録自体が基本的に好きではなく、訪問する全サイトのユーザー名やパスワードを覚えておかなければならないことが不満なのかもしれない。また、買い物客の中には個人情報をサイトに保存したくないと考えていて、サイトに登録をすると、そうした情報が保存されてしまうことになると思っている人もいる。そして、登録と聞くと、不要なEメールを思い浮かべるユーザーも多いが、これも無理もない。というのも、多くのサイトでは、Eメールニュースレター登録用の小さなチェックボックスをあらかじめ選択してある状態にして、提供しているからである。
何よりもまず、登録のおかげで、(ユーザーのエラーによるものかサイトのエラーによるものかは別としても)ステップも、手間も、事態を悪化させ、ユーザーをトラブルに巻き込んで動けなくする可能性をも増やすことになる。インタラクションコストが高くなるほど、プロセスを完了できるユーザーは減るものだ。このことはユーザーインタフェースのすべてのステップに当てはまる。しかし、ECサイトの決済について言うと、ユーザーの手間と売上の低下の間にはとりわけ直接的な因果関係がある。
登録というのは長くて退屈なプロセスであり、買い物をするという目の前のタスクには関係ないように思われている。また、サイトの中には登録を長く退屈なプロセスにしておきながら、決済プロセスからさらに独立したステップとして表示するところすらある。
しかし、必ずしもこうする必要はない。ユーザーは買い物中、登録のために必要な情報をすべて、すでに求められていることが多いからだ。氏名や配送方法、支払い方法など、取引に必要な情報を通常、サイトは要求する。また、領収書をEメールで送信したり、注文状況の最新情報を報告するため、Eメールアドレスを要求するサイトも珍しくない。したがって、登録に関する要素で、通常の決済プロセスに含まれないものはパスワードだけなのである。
任意登録の提示方法
ユーザーが決済プロセスに入る前に、登録は任意であると明示しよう。また、ユーザーの中にはぜひとも登録をしたいと考えていて、希望すれば登録可能であることを確認したいという人もいる。したがって、パスワードを設定するという選択肢が買い物終了後に表示されることになっているということが決済プロセス中には出ないのなら、その選択肢がいつ提供されるかがユーザーにわかるようにしておこう。
ユーザーに登録を依頼するときには、企業の視点からではなく、ユーザー視点での登録のメリットを簡潔に強調しよう。たとえば、発送状況の確認や高速チェックアウトといった買い物というエクスペリエンスを楽にする要素を強調すると、買い物客は喜ぶ。しかし、Eメールニュースレターが届くとか、サイトの会員になれるといった「メリット」を押し付けるサイトは、文句を言われることもあるだろう。
顧客への任意パスワード設定の依頼時だけでなく、ユーザーの決済プロセス開始時にも、顧客にとってのメリットについて触れよう。簡潔な箇条書きのリストはこうした情報を強調するのに有効であることが多い。このリストはサイトを売り込むものではなく、登録することでユーザーにどんなメリットがあるかを簡潔に知らせるものにすべきである。
パスワード入力欄への記入は任意であると明示しよう。そうすればサイトへのユーザー登録が必須でないということが明確になる。また、ユーザーが有効なパスワードの作り方について推測する羽目にならないよう、パスワードの条件も必ず明記しよう。
いくつかのサイトの中には、パスワード入力欄に「任意」とは記述せず、代わりに、見出しに「任意」という語を入れたページセクションに、入力欄を設置しているところもある。ユーザーは入力フォームへの記入時でさえ、Webコンテンツを流し読みすることが多いので、任意という表示が見出しにしかなく、入力欄の側にない場合には、この指示を見逃す可能性がある。
入力欄に明確な指定がないと、パスワードの作成が登録には必須だとユーザーが誤解することもある。先ほどは登録は任意だと言われたのに、今度はゲストとしてのサイト登録を求められたりするようでは、一貫性のなさからユーザーの信頼を裏切ることにもなりかねない。
シンプルかつ任意に
決済前に登録を強要するのではなく、パスワードを記入する任意の入力欄を表示することで、決済プロセスの中でユーザーが登録できるようにしよう。こうすることでユーザー自身が主導権を取れるようになり、登録する価値があるかどうかを自分で判断できるようになる。ECサイトの調査では、調査前には登録が強制されることについて文句を言っていたユーザーも、登録が購入プロセスでの任意のパスワード作成だけというサイトには、快く登録をしていた。
登録を強要すると売上は低下する。サイトを離れてしまうユーザーもいれば、登録に苦労するユーザーもいるからだ。サイトで、ゲストとしての決済もできるようにしたら、即、売上が伸びた、というのはよくある話だ。これはユーザビリティを向上させ、購入を促進するシンプルな方法なのである。