インターナショナルWebサイト:
最低限の要件

異国のユーザは、名前や住所の入力欄、サイズや日付の表記方法、居住地域の製品基準に関する情報などに関して異なるニーズを有している。

世界中のユーザを支援しようと思うならば、各国の言語でウェブサイトを作るのが理想的だ。各国向けにウェブサイトをローカライズできないならば、ターゲットとしている国々で少なくともユーザテストを実施し、諸外国のお客様にも十分容易にサイトを使ってもらえることを確認すべきである。ガイドラインには、この程度のことは必ず記されているはずだが、皆さんのお勤め先が典型的な企業だとしたら、おそらくこれに従うことはないのだろう。

多くの企業がビジネスの半分を外国相手に行っているにもかかわらず、積極的に高いコストを支払って、複数の国でユーザテストを実施しようとする企業がほとんどないことは経験的にわかっている。我々も、国内でお金をかけてテストを実施しようとする企業があれば既にラッキー、これ以上、欲張らないことにしよう、と考えたりもする。

今回、世界中のユーザにウェブサイトを使ってもらえるようにするための最低限の要件をご紹介しよう。しかし、忘れないでいただきたい。国境を越えたビジネスの可能性を最大限に高めたいと思うならば、やるべきことは他にまだまだあるということを。

住所・氏名の入力欄

ウェブサイト上のフォームに自分の名前を入力して、“無効な入力です”と言われるときほど腹立たしいものはない。どういう意味だよ、無効って? オレの名前だぞ! ありふれた名前から、少し変わった名前まで、そのすべてに対応することは極めて重要なガイドラインである。

また、多くのアジア諸国では、先に名字を記す。氏名の入力欄を一つにしておくのが間違いない。名前と名字のそれぞれに欄を設ければ、混乱を招くことになる。氏名の区別がない国もある。欄が二つあると、すっかり困ってしまうだろう。

理想的には、Unicodeだけでなく、アジアの多くの言語で使われている2バイトの文字にも対応するようウェブサイトを作ることだ。しかし、最低限を考えるならば、標準的なASCIIの文字コードに加えて拡張文字を受け付けるようにすることだ。たとえば、こんな住所にも商品を送りたいだろう?:

Borge Schluter

Ale Alle 7

DK-5853 Orbak

Denmark

上の例にあるように、拡張文字は通り名にも使われている。通り名に続いて記される番地や、都市名の前にくる桁数のさまざまなZIPコードにも対応する必要がある。ZIPコードは米国特有の表現なので、“postal code / ZIPコード”と併記した方が良い。

電話番号については、桁数や国番号が国によって様々であるということを考慮に入れなければならない。また、自社の電話番号を文字表記する(たとえば、1-800-TOO-EASY)のは避けた方が良い。電話のキーにアルファベットを記していない国は数多い。

計測単位と日付

メートル法ポンドヤード法の両方で大きさを示そう。たとえば、CanonのデジタルカメラPowershot S2の大きさは、4.4×3.1×3.0インチ、または11.3×7.8×7.5センチメートルである。国にもよるが、どちらか一方でしかサイズが表示されていなければ、カメラの大きさを頭に思い描くことすらできないという状況にもなり得るのだ。

同じように、気温は、華氏と摂氏の両方で示そう。ストックホルムへ行く予定があって、ウェブサイトに最高気温20度との予報があったら、荷物に入れるのはTシャツだろうか? それとも一番厚手のコートだろうか? 摂氏20°C(68°F)の予報なら、Tシャツが良い選択ということになる。しかし、華氏20°F(-6°C)だというなら、Tシャツに用はない。華氏と摂氏の両方で気温を表示すれば、すべてのユーザが理解できる。少なくとも、華氏と摂氏のどちらを意味しているか、明確にしてあげよう。

日付の表記方法で大切なのは、月名を必ずアルファベット表記することだ。8/9のような記述では、混乱を避けられない。8月9日なのか、9月8日なのか、わからないのだ。“Aug.9”と書けば、どこの国のユーザでも理解できるだろうし、ほんの少し文字数が増えるだけだ。予約の30日前とか、30日後にお客さんが現れることを思えば、全然マシだろう。

地域の製品基準

何はさておき、限られた国・地域でしか買うことができない製品や使うことのできない製品であれば、それをはっきりと伝えなければならない。電圧は、世界中でさまざまである。もっとも一般的なのは、110Vと220V。コンセントに差した途端に火花を散らすような製品を販売していては売れるはずがない。同様に、ビデオの規格もさまざまで、多くのDVDが、ごく限られた国でしか見ることができないようになっている。

もし逆に、規格に関係しない製品を提供しているならば、それを明確に伝えよう。たとえば、ユニバーサル電源に対応の製品であるとか、“リージョン・コード”に規制されていないDVDであるなどといった理由で地域によらず使用可能であることをユーザにはっきりと提示するのだ。多くのユーザは、それが意味することを知らない。しかし、知っているユーザは、自分の国で使える製品であることをはっきりと知らされない限り、その製品を購入することはないだろう。

忘れないで欲しい。ここに記したガイドラインは、ウェブサイトを国外に向けて発信する際の最低限の要件にすぎないということを。これらに従っておけば、世界中にいるお客様から、仕事の話が飛び込むだろう。しかし、さらにビジネスを拡大しようと思うなら、国外でのユーザテストを始めるのだ。

さらに詳しく

47ページにおよぶレポートには、より詳しい国際化のためのユーザビリティ・ガイドラインが記されている。