ウィッシュリスト、ギフト券、eコマースでの贈り物のあり方

ギフト絡みの機能は、オンラインというメディアを活用し、新たなユーザをWebサイトに引き寄せる。しかし、そのユーザビリティにはまだまだ不備が多い。出来の悪いお知らせメールはその好例で、多くのユーザに無視されている。

ウィッシュリストやギフト券は、eコマースにおいてはペットフードの対極にある。重たい荷物の配送とは無縁。なぜなら、純粋なオンライン取引だからだ。事実、インターネット上で使われるウィッシュリストやギフト券は、物質世界にあるそれらに勝る瞬時のやり取りを可能にしてくれるからだ。プレゼントを用意できずにいた人も、インターネットで使えるギフト券なら土壇場で購入し、即座に送り届けることも可能だ。贈り物がやり取りされるイベントに備えて、ホームページではっきりとプロモーションすべきだろう。

ウィッシュリストやギフト券は、最高のバイラルマーケティングである。狙いは明確だし、受け取り手は突き動かされるようにそれらを利用すると考えられる。あるeコマースサイトで使えるギフト券を受け取ったら、あなたはもちろんそのサイトにアクセスして、買い物をすることだろう。(そして多くの場合、ギフト券の金額以上にお金を使ってしまうことだろう。)あなたの大好きな姪っ子が、とあるeコマースサイトにウィッシュリストを作っているなんてことを聞いてしまったら、あなたはそのサイトにアクセスして、13歳の女の子たちが欲しがるものはどんなものなのかを確かめずにはいられないはずだ。

もしB2Cのウェブサイトをウィッシュリストやギフト券の機能なしで運営しているとしたら、随分と儲け損ねていることになる。そして、これらの機能を搭載していたとしても、私たちがテストをしたウェブサイトと似たり寄ったりという程度ではまだ、最大限に活用できているとは言えない。

(注:ここでは、他の誰かに是非とも買って欲しいと思うモノをユーザに自分でリストアップしてもらう機能を総称して“ウィッシュリスト”と呼ぶものとする。ウェディングレジストリーやベイビーシャワーレジストリーは、お誕生日プレゼントリストと同様、よく利用されている“ウィッシュリスト”であるが、他にもさまざまな場面でウィッシュリストは使われている。)

ユーザリサーチ

ウィッシュリストやギフト券の機能をデザインする際のガイドラインを整備するために、次にあげる2つのユーザリサーチ手法を用いることにした。

  • フィールドスタディ。カップルがウェディングレジストリーに欲しいモノを登録していく様子を、実際の店舗で観察した。ウェブサイトが、現実世界での買い物と全く同じエクスペリエンスを提供しようとすべきではない。とは言え、テクノロジーの制約とインターネットの恩恵がないところで人々がどのように行動するのかを観察することは、調査の第一歩として望ましい。また、単独のお客様たちが店舗で贈り物を買う様子も観察した。
  • ユーザテスト。調査の大半はオンラインで行った。22のeコマースサイトで提供されているウィッシュリストやギフト券の機能を利用するタスクをユーザに実際にやってもらい、その様子を観察したのだ。ユーザには、4つの主要なタスクを行ってもらった。
    • ギフト券と商品の交換
    • ギフト券を使っての買い物
    • ウィッシュリストの作成
    • ウィッシュリストに挙げられている商品の買い物

    さらに、ウィッシュリストが覚えやすいところに配置されているかどうか、お友達に自分のウィッシュリストの存在を簡単に知らせられるようになっているかどうかを確認するためのタスク2つを追加した。ウィッシュリストとギフト券、両方の機能を全てのウェブサイトで検証したわけではない。

調査には、35名のユーザが協力してくれた。6名にはフィールドスタディに、残り29名にはユーザテストに参加してもらった。調査したeコマースサイトは次のとおりである。

ウィッシュリスト

  • Amazon.com
  • Buy.com
  • CD Universe
  • CooksCorner.com
  • Finishline
  • JCPenney
  • Nordstrom
  • REI
  • Target
  • Tower Records
  • Urban Outfitters
  • Wal-Mart

ギフト券

  • Amazon.com
  • Barnes & Noble
  • CD Universe
  • Cooking.com
  • Costco
  • Delias
  • Eddie Bauer
  • LL Bean
  • Macy’s
  • Nordstrom
  • REI
  • Sharper Image
  • Sports Authority
  • Target
  • WickedCoolStuff

ユーザビリティの問題点

マーケティング的には、ウィッシュリストやギフト券は素晴らしい機能である。あなたのウェブサイトを新しくお客様になってくれるかもしれない人たちに紹介してくれるのだから。しかし、残念ながらこの強みが、ユーザビリティを考えるときには大きなハードルに変貌する。

はじめてウェブサイトへ来てくれたお客様は、当然、はじめてそのウェブサイトを使うことになる。どうすれば良いのか分からないだろうし、そこが何のウェブサイトなのかさえ知らないかもしれない。そこへたどり着いたのは、他の誰かがそこで買い物をするのを好んでいたからだ。こういったユーザにとっては、ほんの些細な問題が致命的になり得る。インターネット上で贈り物を贈ったり、受け取ったりするユーザが、eコマースのユーザビリティガイドラインの中で幾度となく言われてきた昔ながらの問題のおかげでつまずいでしまう様子を何度も見てきた。ウィッシュリストやギフト券の成功には、ユーザビリティに十分配慮したeコマースサイトの土台がまず必要なのだ。

ギフトの買い物では、従来のeコマースガイドラインがより一層重視されたり、違う解釈がされたりする。たとえば、ユーザの個人情報をきく前に、送料や手数料、消費税など商品代金の他に必要な料金を告知するのは、ガイドラインの一つとしてよく言われる。しかし、ギフト券を使っての買い物の場合、このガイドラインはより重要なものとなる。なぜなら、ユーザはギフト券の金額以内におさめなければならないように感じているかもしれないからだ。(多くの人々が、ギフト券の金額以上の買い物をしてしまうという傾向は確かにある。しかし、ウェブサイトがわざとそうさせようとしていると感じるようなことがあれば、ユーザは決して余分なお金を払おうとはしないだろう。)

忘れてならないのは、通常よりも客層を広くとらえて商売を考える必要があるということだ。若者向けの最先端ファッションを扱っていたとしても、ウィッシュリストを見に来るお客様は、孫にギフトを贈ろうとする68歳の女性かもしれない。ウィッシュリストという機能を最大限に生かすためには、通常はターゲットにならないユーザがはじめてウェブサイトを訪れた場合にも使いやすい商品紹介ページと支払いプロセスを準備しなければならない。

メールの役割

ウィッシュリストやギフト券を使ってもらうには、磨きに磨き込んだ使いやすいウェブサイトの実現が必要不可欠である。しかし、どちらの機能も、ユーザとのコミュニケーションにはメールが使われる場合が多く、これが非常に危なっかしいメディアなのである。メール配信のニュースレター確認メッセージなどのユーザビリティ調査を通じて、受信トレイが商業用のコミュニケーションにとって極めて厳しい状況にあることが確認された。ユーザは、理由があって送られてきているメッセージもスパムと思うのだ。時間に追われて忙しくしているとき(つまり多くの場合だ)には、たくさんのメッセージを無視してしまっている。

ギフト券が贈られたことを通知するためのメールやウィッシュリストに関するメッセージがどのように扱われるかをテストすると、残念なことに決まって同じような結果になる。ギフト券の通知メールの場合、30%が即座にゴミ箱に入れられた20%は、メールの内容を信じてもらうことができなかった。合わせて半数が、ユーザビリティの深刻な問題を抱えているという結果だ。これは、ドットコム・バブルが終わろうとする2000年頃から行ってきたさまざまな調査の中で、もっとも酷い結果である。(1990年代には、もっと酷いユーザエクスペリエンスを記録する調査もあった。)

最近では、フィッシング詐欺も珍しいことではなくなったため、単に“$100のギフトをお預かりしています”と書いただけでは決して読んでもらえない。信用してもらうための某かの印を、受信トレイで気づいてもらえるように付ける必要がある。件名や“送信者”欄の記載、プレビューウィンドウに表示されるであろう情報の記述には細心の注意を払わなければならない。

ユーザはオンラインでの贈り物をどう考えるのか

ウィッシュリストやギフト券の機能に関しては、すぐにでも検討の望まれるユーザビリティの問題が随分と確認された。たとえば、知人のウィッシュリストをなかなか見つけられずに困っているユーザは多い。ほんの些細なことで、ユーザは簡単につまずいてしまう。“ギフト券番号”と記された入力欄に、文字の含まれたギフト券番号を入力できずに困ってしまうユーザだっているのだ。

調査の結果として指摘してきたユーザビリティの問題を排除し、注意深くデザインをすれば、必ず成果が現れる。しかし、優れたユーザエクスペリエンスを約束するには、ユーザがこれらの機能とどう向き合うのかをきちんと確かめなければならない。

欲しいモノをあからさまに提示するウィッシュリストを作るのは、あまりにも自分勝手で、欲張りで、図々しいと考える人が大勢いた。しかし同時に、贈り物をする立場にたつと、ウィッシュリストの存在を高く評価する人が多かった。つまり、ウィッシュリストを普及させるには、受け取り手がおねだりをするためのものではなく、贈り手を助けるためのものであるという位置づけが重要となる。

また、贈り物をギフト券で済ませるのは、心がこもっていないように感じるとの意見も多く聞かれた。しかし、ここにも興味深い両面性がある。受け取り手としてはギフト券をもらう方が嬉しいというユーザが多かったのだ。

ユーザエクスペリエンスの向上には…

ユーザリサーチの結果から言えることは明らかだ。ウィッシュリストやギフト券の絡む今のユーザエクスペリエンスは決して十分ではない。ほんの小さなデザインの改善で多くのウェブサイトがユーザビリティと、そして売り上げを向上させられるだろう。

ウィッシュリストやギフト券は、オンラインメディアとしての強みを生かしウェブサイトへと新たな顧客を導いてくれる。そして、これは収益源の追加という重要な側面を持つ。ウィッシュリストやギフト券の機能を使ったユーザエクスペリエンスを申し分のないものにすべく求められる変更が、どれほどの投資収益をもたらし得るか、これらの利点をすべて考慮したうえで検討してみるべきだろう。

2007 年 1 月 29 日

公開:2007年1月29日(原文:2007年1月29日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Wishlists, Gift Certificates, and Gift Giving in E-Commerce

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