アフィリエイトプログラム
※ウェブ調査に関するコラムのうち、ウェブマーケティングを扱った部分への補足記事
たくさんの読者から「アフィリエイトプログラム」の定義を教えてほしいという要望をいただいた。思ったほど知られていないようだ。もっとも効果的なウェブマーケティングツールなのに、広く利用されていない理由の一端はここにあるのかもしれない。
アフィリエイトプログラムとは、外部からのトラフィックに対して支払うという方法である。サイトAがサイトBにリンクを張った場合、サイトBがサイトAに紹介料を払うという仕組みだ。その金額は、リンクをたどった人が誰か、その人がサイトBにとってどれほど値打ちのある人かによって決まる。サイトAは、サイトBの「アフィリエイト先」と呼ばれる。サイトBとの関係を作って、ユーザに提供するサービスの一環としてサイトBを利用するからである。
アフィリエイトプログラムとしてもっとも有名なのはAmazon.comが導入したものだ。それは、1996年、Amazon Associatesの開始とともにスタートした。Amazonのアフィリエイトプログラムには、現在約25万のサイトが参加している。Amazonの場合、紹介料は以下のような形で支払われる。
- 料金支払いが発生するのは、アフィリエイトサイトからリンクをたどってAmazonにやってきたユーザが、その場で書籍を購入した場合に限られる
- 料金は通常売上げの5%。特定の書籍の紹介ページにダイレクトにリンクをした場合は、さらに上乗せされることもある。
例えば、Amazon.comへのこのリンクをたどってその場で書籍を購入すると、その書籍の価格の5%が私に支払われる。
Amazonの場合、最初の訪問時に購入せず、再度訪問した際に購入した場合、アフィリエイトサイトへの支払いは発生しない。よそのアフィリエイトプログラムはもっと進んでいて、最初の購入分だけでなく、紹介された顧客の生涯価値にもとづいて支払いを受けられるところがある。長期にわたってユーザを追跡しようと思えば、当然ながらより高度なプログラムが必要だが、どんなマーケティング理論を見ても、生涯価値は、個別の売上よりもずっと重要だと教えている。よって、この先は、より長期的な視点に立ったアフィリエイトプログラムが増加すると期待される。
その他の実例: Autoweb.com(アフィリエイトサイト数、約5000)では、紹介されたユーザが最終的に中古車の広告を掲載した場合、一律5ドル支払っている。CarPrices.com(アフィリエイトサイト数、約9000)では、紹介されたユーザから新車の見積り請求があった場合、一律3ドルを支払っている(最終的に購入するかどうかは関係ない – この点は現在追跡できていないようである)。
アフィリエイトプログラムの強み
アフィリエイトプログラムは、ウェブの本質にそったものだ。リンクにそって価値が流れるようになっているからだ。
価値は、常にリンクをたどって流れていく。ユーザがリンクをたどれば、目的地のサイトには新たなビジネスが追加される。だが、紹介した側のサイトはどうだろう?アフィリエイトプログラム以外の形で外部リンクに対する見返りを得ようと思うと、非常に間接的なものにならざるをえない。厳選したリンクはユーザへのサービスである。有用なサイトを教えてもらえれば、ユーザは間違いなく喜んでくれるだろう。よって、リンクをうまく利用しているサイトは、その先、再び訪れてもらえる確率が高くなる。有用なリソースだと認識してもらえるわけだ。リンク先サイトで得られるメリットが、そのサイトへの信用と言う形で蓄積されるのである。Yahooの成功がこの理論を証明している。始めの頃、Yahooにはリンクのコレクション以外には何もなかったが、それでもユーザが離れることはなかった。
アフィリエイトプログラムは明示的にリンク価値を逆流させ、より相互リンクの豊かなウェブを実現するサイトに見返りを与えるものである。小規模なサイトであっても、自前で提供できない機能は外部サービスにリンクすることで実現できるようになるため、ウェブはより豊かで有用なものになる。例えば、私は自宅のガレージを本の在庫でいっぱいにしようとは思わないが、読者に対して、私の専門領域で気に入った本を推薦することができる。本を推薦できるだけでなく、クリックひとつで購入できるのだ。さらに、その5~15%が私の収入となる。
リンク先サイトの立場からみると、アフィリエイトプログラムが役立つ理由はたくさんある。
- 良質な案内役となる。他のサイトからリンクをたどってきたユーザは、顧客になる見込みが高い(紹介元サイトのコンテンツのターゲットが絞られている場合)。そこへやって来る理由があり、(紹介元サイトのリンクに適切な説明がつけてあるとすれば)そこに期待できるものもあらかじめわかっている。
- 出来高払いで構わない。クリックスルーがなければ何も払わなくて済む。もっといいのは、通常、紹介料は、やってきたユーザから得られた価値にもとづいて算定されることだ。よって、何も買わないユーザに関しては支払いは発生しない。
アフィリエイトプログラムは出来高払いだから、リンク先サイトとしては、小さなサイトに数多くアフィリエイトのサインアップしてもらうことに意義がある。そのサイトからのトラフィックが全然なければ、コストはゼロだ。紹介履歴を管理するのはコンピュータだから、人手をかけて複雑な取引交渉をする必要もないし、小規模パートナーを相手にすると、とかく高くなりがちな固定費も抑えられる。
アフィリエイトプログラムの弱み
強みの中には、そのまま弱みに直結するものもある。リンクがサイトの収入源になるわけだから、うっかりするとウェブ上をリンクだらけにしてしまいかねない。余計なユーザインターフェイスはユーザの負担になる。リンクは、本当にユーザにとって価値のあるものだけに限定するべきだ。
また、お金目当てに、本心からは薦められないものにまでリンクしたくなる誘惑にも駆られるだろう。高い視点からの分析によれば、長期的に見て、ウェブサイトにとってもっとも価値が高いのはユーザから得る信頼である。短期的利益のために、長期的なサイトの生存の可能性を危険にさらすなどというバカな真似をしてはいけない。中にはうまくだませるユーザもいるだろう(リンクのせいでダメな製品をつかまされるユーザが何人か出る)。だが、いつも全員をだますわけにはいかない(あっという間に、あなたの推薦は真面目に取り合ってもらえなくなる。サイトの利用そのものをやめてしまうかもしれない)。戦略的な思考からは、いくらお金が発生してもリンクに大しては慎重に望むべきだとわかっていても、個々のページの筆者が誘惑に負けてしまう可能性が残っている。
製品やサービスの中には、特にアフィリエイトプログラム向きのカテゴリーがある。書籍はもっとも顕著な例である。あらゆる特別な関心領域に関して、書籍が出版されているからだ。よって、どんなサイトであっても、その専門領域で推薦したい本が何冊かあるだろう。一般向けのサイトでできる一般的なアドバイスに比べれば、専門的なサイトの方が各分野での本についての知識は豊富だ。よって、推薦から得られる付加価値は十分にある。ロンドンのツアーガイドがお望みだろうか?書店サイトでベストワンを選ぶのは無理だ。だが、旅行サイトなら、旅行者のタイプ別に最適なガイドブックを3~4冊リストしているかもしれない。
残念ながら、ほとんどのカテゴリーでは、ターゲットの絞り込まれたアフィリエイト先でないと協力は難しい。配管部品を例に取ろう。私が、配管部品の供給元を推薦し始めても、何の信頼性もない。私のサイトのユーザも、そのサイトにとって配管部品の有望な売り込み先にはなりそうもない。だが、プロの配管工や日曜大工のための専門サイトなら、そのようなアフィリエイトプログラムに加入してもいいだろう。一般に、モノを売っているサイトはごく一部だが、関連する話題をとりあげているサイトは数多い。そういったサイトがアフィリエイト先になりうるだろう。
アフィリエイトプログラムをうまく利用するには、対象サイトを何らかの形で実際に関係の深いサイトに限定する必要がある。残念ながら、今のウェブの現状はあまり明快とはいえない。
国際的アフィリエイトプログラムでは通貨換算が問題になる(10豪ドルの小切手をもらっても、銀行で自国通貨に交換してもらうのに20ドルかかるのでは意味がない)。サービスを受けるなら、海外のサイトより国内サイトの方がいいというユーザの方が普通だ。例えば、私はヨーロッパの読者からもたくさんの電子メールをもらうが、彼らはAmazonで買うのはいいけれど、品物の発送はAmazon.co.uk(Amazonの欧州サイトのひとつ)からにしてもらいたいといってくる。現状でこれを実現するには、紹介元のサイトが、供給地域ごとに複数のアフィリエイトプログラムに登録して、それぞれへのリンクを用意しておくしかない(合衆国で購入したい人はこちらをクリック、ヨーロッパの人はこちらを、アジアの人はこちらをクリック – 申し訳ありませんが、南米には対応していません)。ぱっとしないソリューションであることは言うまでもない。UIがごちゃごちゃしてしまうし、紹介元のサイトにとっては負担が大きい。リンク先サイトで、国外の顧客へ対応できるようにしておくべきだ。サービス間の移行はユーザにそれと気付かせずに行うのがよく、元のサイトがどこにリンクしていたかに関わらず、適切な紹介料を確実に支払うこと。
最後の弱点は、アフィリエイトプログラムに透明性がなく、見つけにくいという点だ。設定も難しい。今のところ、アフィリエイトプログラムをやっているサイトを見つけるのは難しく、まだその用意のないサイトだってたくさんある。契約条件の内容を判断し、紹介元サイトにふさわしいのはどのプログラムか判断するのも骨が折れる。紹介料の基準もないし、複数のプログラムを簡単に比較する方法もない。
アフィリエイトプログラムへのサインアップには、未だにかなりのオーバーヘッドもかかってくる。本来完全にコンピュータ化するべきプロセスであるが、新規プログラムへの登録にあたっては、未だに手書きで申込書に記入しなければならない。アフィリエイトプログラムへの参加と管理を集中して行う方法がない。このオーバーヘッドを考えると、たったひとつのリンクや、わずかな収入のためにアフィリエイトプログラムに参加するのは引き合わない。リンク先サイトとしても、管理のためのオーバーヘッドがバカにならない。少額の小切手を多数郵送しなくてはならないからだ。紹介元サイトへの支払いは、リンク先サイトごとに個別に行うしかないからだ。
アフィリエイトプログラムの将来
管理コストの削減: アフィリエイトプログラムを管理するセンター的なサイトができるだろう。リンク先サイトはプログラムを始めやすくなるし、紹介元サイトは参加が簡単になる。リンクひとつであっても参加して損にはならない。どこでも通用するアフィリエイト先IDを使うだけで済むからだ。支払いも集約されるので、1セントの支払いも現実的になる(小切手を切る必要はなくなるから)。
アフィリエイトプログラムは、マイクロペイメントの仕組みと統合されるようになるだろう。製品の販売だけでなく、コンテンツやサービスの販売にも利用されるようになるのだ。例えば、ある問題に関して突っ込んだ分析が入った記事を読むのに新聞が5セント課金すると、リンクを通じてその記事に読者を誘導するたびに、紹介元サイトには1セントが支払われる。
高度なプログラムでは 、マルチレベルの紹介料もサポートするようになるだろう。現状では、お金の発生する取引に最終的にリンクしたサイトだけが紹介料を受け取っている。だが、紹介元サイトにユーザを誘導したサイトはどうだろう?見返りは何もない。実例: ある本が好きで、それを推薦する場合。書店サイトにダイレクトにリンクして、その本を買ってもらえれば紹介料が手に入る。だが、私が腕のいいウェブデザイナーで、その本に関する自分の評価を述べるにとどまらず、さらなる意見や評価を紹介するためにあなたのサイトにリンクを張ったとしよう。評価記事を求めて大勢の読者がリンクをたどっていく。そして、当然ながら各リンク先に「この本を買う」というリンクが含まれている。読者の中には善良なネット市民もいて、もともとその本への興味をかきたててくれたサイトに戻って、そこから購入する人もいるだろう。だが、他の大部分の人は、アフィリエイトプログラムの仕組みを知らなかったり、面倒くさかったり、どちらの評価記事を先に読んだのか忘れていたりして、結局、最後に評価記事を読んだサイトからその本を買ってしまうのだ。紹介料は全額そのサイトに落ちる。リンクの価値を逆行させるという考え方を一般化して、売上につながったサイトにリンクしたサイトへも紹介料の一部が行くようにするというのが、よりよいアプローチだろう。
あらゆるアフィリエイトプログラムが貨幣経済を基盤にする必要はない。支払い形態として現金しかないのなら、直接売上につながったリンクに報いるしかない。だが、リンクには他にもユーザのロイアリティを向上させたり、トラフィックをリピート化したりといった利点がある。データ提供のために選んだ株式市況サービスがどこであれ、そのサイトのウェブ上の存在感は向上する。わずかながら、信望もブランド認知度も向上するだろう。だが、マイクロペイメントをもってしても、株価をひとつ表示するごとに1セントを課金するわけにはいかない。
代用紙幣のような形態で支払うことが考えられる。常連ユーザプログラムでのステイタスという形で支払うのも一法だ。株価市況サービスに頻繁にリンクするしていると、そのうち、時間の経った株価ではなく、リアルタイムでの株価表示ができるようになるかもしれない。一般大衆には公開していないアーカイブにアクセスできるようになるかもしれない。
販売店探索型アフィリエイトプログラムも登場するかもしれない。これによって、製品の推薦文と販売店情報をいっしょにしておく必要がなくなる。現状では、本と書店は、同じリンクの中で推薦しなくてはならない。将来的には、本の推薦だけして、リンクは販売店検索ロボットにしておけばよくなるだろう。これだけで、その本を売っているお薦めの書店名が追加される。最終的な販売手数料は、何らかの方法で、製品の推薦者と販売店の推薦者で分配するべきである。製品の推薦と販売店の推薦を分離することで、国外のユーザをその国の販売店に誘導できるようにもなる。
最後のトレンドとして、紹介された顧客の生涯価値への注目がますます高まるだろう。今現在の売上だけに集中する視野の狭い見方は廃れる。例えば、今日そのサイトに案内したユーザが、実際に買い物をするのが明日になっても、やはり紹介料がもらえるようになるのだ。時間軸に沿ってユーザの価値を追跡し、調整する手法を考え出さなくてはならない。例えば、最初の購入時には紹介料を高めにし、それ以降の購入時には額を下げるというのもありうるだろう。実世界のセールス仲介料と非常によく似た方式だ。
アフィリエイトプログラムの歴史
Amazon Associatesはもっとも名高いかもしれないが、アフィリエイトプログラムの元祖は彼らではない。初期のスポーツサイトwww.S2.comでは、1994年夏に紹介料を利用していた。ただし、その算定基準は(当時の精神にのっとって)ヒット数にもとづいていた。
付け加えておくと、1994年の熱狂は私もよく記憶している。当時は本当にウェブが爆発的な拡大を見せていて、年間成長率は2000%、600サイトから1万2000サイトに膨れ上がっていたのだ。今なら数ヶ月かけるようなプロジェクトを数週間でやっつけながら、自分たちでルールを作っていたわけだ。
オリジナル: Affiliate Programs (July 1999)