Webコンテンツとしてのアメリカ英語とイギリス英語

ユーザーは、サイトの表記の細部まで気にかけていて、見慣れない英語にはめざとい。

アメリカ英語とイギリス英語では次のように多くの違いがある。

  • スペルの違い:colorとcolour(色)、behaviorとbehaviour(行動)、theaterとtheatre(劇場)
  • 単語の違い:truckとlorry(貨物自動車)、cartとtrolley(手押し車)、two weeksとa fortnight(2週間)
  • 意味の違い:いったい”football“って何だ? アメリカンフットボールのことか? サッカーのことか? (真の勇士のための)オーストラリア式フットボールのことか?
  • スラング:このスポーツのことを”footie(フッティー)”って呼んでる?
  • 略語:PAがペンシルベニア州であることを読者は知っているか? アメリカ国民以外、知るわけがない。

では、ウェブサイトにはどちらの英語を使うべきなのか? 簡単な答えはないが、ユーザビリティ研究によれば以下の2点については間違いない。

  • 言葉は大切である。見慣れない英語がウェブサイトに使われていればユーザーは気づく。
    • 一部のユーザーは、誤植やスペルミスや変な言葉の混じったサイトであると思いこんでしまい、大幅に信頼性が低下してしまう。
    • 種類の違う英語を使ったサイトであると理解するユーザーもいる。この手のユーザーは、出来の悪いサイトとは思わずに、むしろ、これは外国のサイトだから自分には関係ないと思いこんでしまう。
  • ぶれてはいけない。イギリス英語を選んだら最後までイギリス英語、アメリカ英語を選んだら最後までアメリカ英語というようにする。表記がぶれるとみんな混乱するし、それがきっかけで、細かなところまで見てくれなくなるおそれがある。

話は変わるが、強くお勧めできることがひとつだけある。英語を話す1国だけを拠点にしたサイトで、しかもその国のローカルサイトと見なされるのが嫌でなければ、その国で使われている言葉を使えばよいのである。だから、アメリカ合衆国のサイトならアメリカ英語を使えばよいし、イギリスのサイトならイギリス英語を使えばよいのである。同じく、オーストラリアをはじめとするコモンウェルス国(英国統治経験国)のように、主としてイギリス英語が使われている国を拠点とするサイトであれば、それぞれ現地で流通している英語を使えばよいのである。

国際サイト

問題が生ずるのは次の2つのケースである。

  • 英語を話す1国を拠点にしたサイトではあるが、国際サイトと見なしてほしい場合:
    • この場合の目的は、単に外国の顧客にサービスを提供することだけでなく、国境を越えることにある。たとえばラスベガスのホテルのサイトであれば、アメリカ英語で書いてあっても、イギリスの旅行客は不快にならない。同様に、スコットランド製の正真正銘のタータンを販売しているサイトは、イギリス英語を使っているからといって、アメリカ合衆国の客を失うことはない。むしろ、地元の特産品を扱う場合は、現地の言葉を使ったほうが、いかにもそれらしい雰囲気が出る。
    • 主にアメリカ合衆国に狙いを定めているカナダのサイトでは、アメリカ英語を使うほうがよい。ただし外国であることを強調したい場合は別である(これはセールスポイントになることもあるが、ほとんどのアメリカ人には否定的な見方をされる)。
  • 当地の言葉は英語ではないが、外国人ユーザーのためにサイトの国際版が必要な場合(理想的には、顧客のいる国ごとに現地語版を制作するのがよいが、実際には難しく、多くの国のユーザーに対応した英語サイトがひとつだけ用意してあるのが普通である)。言語の枠を越えて サイトを国際化するためのガイドラインについては、前に記事にしてあるので見てほしい。

上の後者の問題についてはサイトの事情に大きく左右される。たとえば先ごろヨーロッパでおこなったセミナーで出くわした例がある。ある北欧の大学が留学生を増やすべく、同校のウェブサイトの英語版を制作したのである。それで、アメリカ英語とイギリス英語のどちらを使うのが望ましいのであろうか? どのような学生に狙いを定めているのか、どのような大学が競合校になるのかによって答えは違ってくる。入学希望者が主としてヨーロッパ出身で、主な競合校がイギリスの大学であるなら、イギリス英語でサイトを記述したほうがよい。主としてアメリカとアジアの学生に狙いを定めるなら、アメリカ英語で記述したほうがよい。同じように、主な競合校がアメリカの大学なら、アメリカ英語を使ったほうがよい。なぜか? 入学希望者は自分が他のサイトで見てきたのと同じ用語を使って目的のサイトを検索するからであり、同じ種類の言葉を使ったほうがSEO(検索エンジン最適化)が強化されるからである。

音声としての英語

音声映像通信やポッドキャストで使われるような、音声としての英語のほうが、ガイドラインは明解である。

  • クイーンズイングリッシュ(純正英語)は上品で世間一般にも受けが良い。かつてBBCが使っていたような「容認発音(イギリス英語の標準的発音)」を使えば、世界のどこでも、話していることがわかってもらえる。しかしウォルマートよりも安価なことを売りにしている場合は、上流階級の英語は話してはならない。
  • 中西部および北東部のアメリカ訛りも、世界中のユーザーが簡単に理解できて、あまり気取ったふうには聞こえない。
  • スコットランド語、アイルランド語、ウェールズ語、北部英語など、イギリスの地域方言は、外国人が理解するのは難しい(ロンドン訛りなどは、とんでもない)。だから最近のBBCの口調は真似しないように(^_^)。
  • テキサス訛りやオーストラリア訛りなど、その他大半の訛りは、強い地域性が出るが、どう受け取られるかは、サイトの性質によって違ってくる。外国人にとっては、あまりきつすぎる訛りでなければ、イギリスの地域方言ほど理解しにくくないのが普通である。

言葉は声

アメリカ英語を使うかイギリス英語を使うかは、必ずサイトのスタイルに影響を与える。どちらを選ぶかという決断は、つまるところ、サイトの制作者とユーザーの両者にとって一番ふさわしいコンテンツスタイルとは何かを探ることである。答えは簡単ではないが、その決断は下されなければならない。トーン(口調、語調)におかしなところがあれば、ユーザーはすぐに気づいてしまうからである。

2008 年 12 月 01 日

公開: 2008年12月1日 (原文:2008年12月1日)
著者: Jakob Nielsen
原文:American English vs. British English for Web Content

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