信用か破滅か:Webデザインで信頼を得るには

あらかじめかなりはっきりした保証を与えない限り、長期的なサービスを提供するウェブサイトだと信頼してもらうのは、どんなサイトにとっても難しい課題になってきた。New York Timesの最近の記事には、こう書かれていた。ウェブサイトを信用すると言うのは「モロッコで見も知らぬ人に親切にされたからといって、その人の言うなりに敷物屋へついていくようなものだ

現在ウェブ上では、顧客を無視し、彼らを羊と同じように取引の対象にしようとする傾向がある。企業はお互いに買収しあう。よりよい製品やサービスを提供するためではない。囲い込まれたユーザを取り込んで、「スティッキネス」(定着率)を増やすためだ。Information Rulesで示されたアドバイスは、この点に関する限り、非常に参考になるものである。デザイン戦略上、転換コストは実に重要な要素なのだ。だが、この本は、消費者向けのアドバイスとして読み替えるのも簡単だ。囲い込みに気をつけろ。前もって十分なメリットが得られない限り、後でそれ以上の面倒に見舞われるかもしれないぞ。

ファックスをEメールで受け取るという新しいサービスeFaxにとって、私は完璧なターゲットと言えるだろう。でもまだ私はサインアップしていない。どうしてか?信用がないのだ。うちの古ぼけたファックス機なんか捨ててしまって、これからはファックスはEメールで受け取る(今時ファックスなんか送ってくる人は、恐竜なみの古い人だけだから)なんてことができるなら、すばらしいじゃないか。だが、彼らの電話番号を名刺に刷り込んだ(さらに、それが何千もの名刺入れに収まった)瞬間、私はそのサービスと運命を共にするしかない。品質が低下するかもしれないし、スパムファックスを送信するような真似さえするかもしれない。先行き何が起こるか、わかったもんじゃない。私は別にeFaxが何か悪いことをしているとか、よからぬことをたくらんでいると言いたいのではない。現在、ウェブ全体の信頼が低下しているおかげで、有用なサービスなのに、不審の目でもって見られるということの一例として引き合いに出したに過ぎない。残念なことに、いいかげんなサイトのせいで、まともなサイトが迷惑をこうむっているのだ。

信頼の低い社会よりも、信頼の高い社会の方が暮らしやすいというのは、歴史が証明している。現状、ウェブは信頼の低い社会になりつつある。主要なビジネスモデルが広告と視聴率に立脚している限り、状況はますます悪くなるだけだ。

信用はユーザ体験から生まれる

最近、Studio ArchetypeとCheskin Researchが、ウェブ上の信用についてのユーザ調査を完了した。方法論には弱点もある(ほとんどの意見はスーパーユーザからのもので、一般人のものではない。実際に使うのではなくて、サイトをチェックしてくれという依頼を受けている)が、おもな調査結果は信頼に足るものだし、以前の調査結果とも符合する。

主な結果はこのようなものであった。信用は長期的命題であり、サイトを使ってよい結果を得たり、いやな思いも、だまされることもなかったという経験を積む中で、徐々に培われるものである。言い換えれば、本物の信用は、広範囲にわたる出会いの中で、その企業が顧客に対して実際どのように接しているかで決まってしまうのだ。得るは難く、失うは易し。1度でも信頼を裏切ったら、何年もかかって少しずつ培ってきた信用も崩れ去ってしまう。

このために、信用失墜に繋がるような失敗を犯した際に速やかに挽回を図るための緊急時対策を用意しておくことが重要だ。

長い目で見れば、顧客に対して正直な態度で臨むというのが、本当の、深い信頼を築くための唯一の方法だ。だが、まず手始めに何から手をつけたらいいのだろう?この調査では、初期的な信頼感醸成に役立ついくつかの手法を明らかにしている。中には、認証シール(TRUSTeなど)とかブランドの評判といった伝統的なやり方も含まれている。

暗号化からダウンロード速度に至るまでの適切な技術の利用も、同様に重要だ。いつ壊れるかわからないようなサーバより、プロフェッショナルなサーバの方がユーザの信頼感は高い。以前お気に入りだったサイトでも、技術的な問題に遭遇すると、顧客は以下のような反応を示す。

  • 29%は心変わりしない(ユーザは後ほど再トライしてくれる)
  • 52%はロイアルティが分散する(他のサイトを見つける。それ以降、元のサイトと新しいサイトを行ったり来たりする)
  • 19%はそのサイトと永遠に袂を分かつ

信頼感を伝えよう

デザイン自体でも信頼感を伝えることができる。その方法は4つある。

  • デザイン品質:プロフェッショナルな見た目は、信頼感をもたらす。明確なナビゲーションは顧客への配慮を感じさせ、よいサービスの約束と受け取られる。タイプミスや使いにくいナビゲーションは、ユーザ無視との印象を与える。
  • 事前の開示:顧客に関係することはすべて事前に開示すること。例えば、早めに送料を明示しよう。ユーザが注文してしまってからでは遅すぎる。送料を隠しておけば、だまされて注文してしまうユーザが何人かはいるかもしれない。だが、それ以上に大勢の人が、プロセスの初期段階でサイトを見捨ててしまうだろう。まんまと騙せたユーザも、おめでたいのは一度だけだ。
  • 包括的、正確、かつ最新のコンテンツと、製品のセレクションは、安心感を醸成する。サイトで製品写真を使っているのなら、製品についてよい写真を用意すべきだ。無計画で気まぐれなコンテンツは、不安定なサービスのしるしである。Rolf MolichとChristian Gramがユーザビリティテストを行った地図サイトには、最近建設された橋が掲載されていなかった。ユーザの気持ちはあっという間に離れてしまい、その他にも何か描き漏らしているものがないかと、この地図を調べ始めた。
  • 外部のウェブとの連携:外から入ってくるもの、外へ出て行くもの、両方のリンクが必要だ。他のサイトへリンクすることを恐れてはいけない。それは信頼の証であり、ユーザにとっては、あなた自身が言っていることよりも、サードパーティのサイトが言っていることの方が信頼感は強い。孤立したサイトは、何か隠し事があるのではないかという感じを抱かせる。

Eメールの慎重な利用

ユーザは、めったなことでは自分のEメールアドレスを教えてくれない。果てしないスパムに見舞われるのを恐れているのだ。自己防衛のために、第二のメールアドレスを(HotMailのようなサービスを利用して)持っているユーザも数多い。あまり信頼していない企業には、こっちのアドレスを教えるのだ。

ユーザのEメールアドレスを集める必要が出てきたら、そのアドレスをどういう目的で利用するか、完全に開示することが必要だ。また、ユーザ自身が、自分の受け取るメールの量を自分でコントロールできるようにしておくことも必要だ。例えば、ユーザからの注文を受け付ける際に、それ以降、商品説明と注文確認以外のEメールは送らないでほしい、という彼(彼女)らの要請に応えられるようにしておくべきだ。

1999年3月7日