ハロー効果:その定義とWebユーザーエクスペリエンスへの影響

ハロー効果とは人や物の1つの特性を使って、その人や物全体に対する判断を下すことである。それによって素早く決断を下すことが容易になる。たとえその決断がバイアスのかかったものだとしても。

Jen Cardelloとの共著

ハロー効果とは十分に立証されている社会心理学の現象で、なにかの1つの特性についての感情がそれ以外の関係ない特性に転移することにより、人々の判断にバイアスをかけてしまうことである。

たとえば、背が高かったり、見た目が魅力的な人は知的で信頼できる人と認識される。身長や外見と、知性や誠実さに相関があると考える論理的理由はないのだが。

ハロー効果(またはハローエラーとも呼ばれる)という言葉が最初に心理学の領域に紹介されたのは、1920年のEdward Thorndikeが書いた論文A Constant Error in Psychological Ratingsであった。実証的な研究を通してThorndikeが発見したのは、人は一連の特性に基づいて他者を評価するように依頼されると、ある1つの特性に対する否定的な認識によって他のすべての特性に対する評価も下げてしまうということだった。

ハロー効果は正負両方の方向に働く:

  • なにかの1つの側面が良いと思うと、それに関するすべてに対して肯定的になりやすくなる。
  • なにかの1つの側面が良くないと思うと、それに関するすべてに対して否定的になりやすくなる。

負のハロー効果はデビル効果あるいは論理誤差とも呼ばれるが、これは行き過ぎた比喩のように思う。したがって、正負両方のバイアスに、「ハロー効果」という言葉を使用することを推奨する。

なぜ「ハロー」と言うのか

「ハロー」という言葉は信仰の比喩として用いられている。具体的にはそれは光輪のことで、聖人の頭上に浮かんでいるのを中世やルネサンス期の絵画で数え切れないほど見ることができる。そうした聖人の顔には、彼あるいは彼女のハローから天上の光があたっているように見える。したがって、人がハローを付けて描かれていると、この人は善良で尊敬に値する人だったに違いないということがわかる。言いかえると、ある人のすぐに目につく特徴の1つ(ハローを付けて描かれているということ)による判断がその人物の特徴の判断に転移されているのである。

なぜハロー効果は存在するのか

ハロー効果は即断を可能にする。というのも、人やデザインの1つの側面だけを考えることで、他のすべての側面について「理解する」ことができるからだ。

穴居人の時代には、こうした即断にも一理あっただろう。人の背を高くするには大量の肉を食べる必要があっただろうから、そういう人はたぶん狩りが上手な、言うことに耳を傾ける価値のある人だったのだろう。また、見た目が魅力的ということは戦いに負けたり、動物にかまれたり、厄介な病気にかかることによって外見が損なわれることを防げた人ということになるので、彼らも他の原人の模範となっていたのではないか。

決断が速いタイプの原始人たちが生き残って我々の祖先になった確率は、どんな問題でも何時間も考えてしまっていた人たちのものより高かったと考えられる。つまり、少量のデータから導き出した結論に基づいて(過度に)速く判断するという傾向を我々は遺伝的に受け継いできているのである。

Webサイトはハロー効果の影響を受ける

ハロー効果が影響を及ぼすことができるものには、他者に対する我々の判断以外にも、組織や場所、デリバリーやコミュニケーションのチャネルがある。ユーザーはWebサイトの1つの側面を気に入ると、その後、サイト自体を好意的に評価してくれる可能性が高い。反対に、ユーザーはサイトで特にひどいエクスペリエンスにあうと、そのサイトは今後も自分たちに対してひどい扱いをするだろうと予想し、そのサイトには戻りたがらなくなってしまう。後者の場合、その後、サイトのデザインが変更されて改善されても、過去のエクスペリエンスからもたらされた負の期待がユーザーには引き継がれたままとなる。

我々がよく目にする例は、Webサイト内の検索の結果の質によってそのサイト全体の質を判断し、さらにそこから推測して、サイトの背後にあるブランドの質やそこの製品を判断するというものである。つまり、1人のユーザーの発言を思考発話調査(未訳)で言語化したとすると、以下のように進んでいくだろう。「うわっ、この検索結果は意味がないし、出てきた順番も適当な感じに見えますね。このサイトの出来は相当ひどいに違いないでしょう。この会社のしていることは無責任で、顧客のことはお構いなしですね。ここの製品は買うべきじゃないでしょう。注意したいのは、この一連の推測の各ステップは多少なりとも理にかなったものであるということ、しかし、最終的な結論は最初に気づいた内容から導かれたものではないということである。(検索がうまく実装できてないサイトで買いものをしても、良い製品が手に入ることもあるだろうからだ)。しかしながら、ユーザーは実際には論理的な推論過程を経て進むわけではない。ハロー効果はこの段階をすべてショートカットするので、1つの特性に対する印象に基づいてシンプルに全体の判断が下せるようになるのである。

同様に、あるサービスのアカウントのセットアップが恐ろしく複雑(未訳)だと、そうしたひどいユーザーエクスペリエンスのおかげでそのサービスの残りの部分に対するユーザーの期待もすり減ってしまうことになる。

2002年の調査研究(LindgaardおよびDudek)に複数のWebサイトの視覚的訴求力をどのように評価するかをユーザーに尋ねたものがある。視覚的訴求力が高いと評価されたWebサイトにはその後、ユーザビリティについてのテストも行われた。平均すると、こうしたサイトでの参加者のタスク失敗率は50%を超えていた。これは2000年以降の失敗率の記録を基準にすると、受け入れがたい失敗率である。しかしながら、このひどすぎる失敗率にもかかわらず、参加者の満足度の評点は高いままだった。この事例の調査から示されているのは、サイトのルックアンドフィールがサイトの全体的エクスペリエンスに対してハロー効果をもたらしていたということである。これらサイトのユーザビリティのデザインはひどいものであっても、だ。

多くの場合、人が全体を評価するために利用するであろう特性や特徴は特定の質問に対する答えとしても最適ではない。つまり、これこそが判断のヒューリスティックや認知バイアスの元である。例を挙げると、そのサイトが使いやすいかどうかを説明してほしいと依頼すると、「ええ、美しいですね」と言われた場合がそれにあたる。美しいからといって、他より使いやすいわけではない。しかし、美しさの判断は使いやすさの判断よりもかなりシンプルにできることが多い。タスクベースの分析やデータソースの三角測量がユーザーエクスペリエンスに関する作業で非常に重要なのはこのためである。

結論

サイトを企画して、フローをデザインし、KPIを定義して、サイトの評価をするとき、ハロー効果のことを頭に置いておくのは重要だ。あなた方のところのユーザーエクスペリエンスが一時期、下降したのは、デザインやコンテンツ、サイトパフォーマンス等による第一印象のまずさを示している可能性があるからだ。また、定量的なデータソースはユーザビリティテストのような定性的な手法で補完することも重要である(こうした課題については「データ分析とユーザーエクスペリエンス」というトレーニングコースでさらに議論する)。

参考文献

Lindgaard, G. & Dudek, C. (2002). High appeal versus high usability: Implications for user satisfaction, HF2002 Human Factors Conference, Melbourne, Australia, November 25-27. (注意: リンク先はMicrosoft Wordファイル)

Rosenzweig, P. (2007). The Halo Effect: … and the Eight Other Business Delusions That Deceive Managers. The Free Press. (ビジネス上の意思決定・判断をどのように鈍らせるのか、ハロー効果のすべてが解説された本

Thorndike, E.L. (1920). A constant error in psychological ratings. J. Appl. Psychol., 4, 25-29. (注意: リンク先はPDFファイル)

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