UXアシスタントとしてのAI

生成AIボットは、コンテンツエディター、調査アシスタント、アイデア出しのパートナー、デザインアシスタントの役割を果たすことでUX専門家をサポートしている。

  • AI as a UX Assistant
  • by Feifei Liu, Mingjin Zhang and Raluca Budiu
  • on October 27, 2023
  • 日本語版2024年2月14日公開

UX専門家が日々の仕事で生成AIをどのように利用しているかを理解するために、我々は800人以上の回答者による大規模な調査を実施した。回答者の92%が少なくとも1つの生成AIツールを利用したことがあると答え、これらのボットを仕事で利用した人のうちの63%が(毎日ではないにせよ)少なくとも週に数回は利用していた。最もよく使われていた用途は、テキストコンテンツの生成と編集である。

調査概要

841人のUX専門家を対象にアンケート調査を実施した。この調査は2023年7月から8月にかけて行われた。

回答者には以下のトピックに関して15の質問をした:

  • AIの一般的な利用状況:(ChatGPTやMidjourneyのような)生成AIツールを仕事や個人的な目的で利用したことがあるかどうか、また、利用したことのある生成AIツールをすべて挙げてもらった。仕事でこれらのツールを利用したことがあると答えた人には、どれくらいの頻度で、どのような仕事関連の作業に利用したかも尋ねた。
  • 生成AIツールの具体的なユースケース:これらのツールを自分の仕事のサポートとして利用した最近の事例を思い出してもらった。(このような質問の形式はクリティカルインシデント法として知られている。)
  • 生成AI機能を備えたUXツールの利用状況:一般的なUXツールの生成AI機能(たとえば、Dovetailの要約機能)を利用したことがあるかどうかを尋ねた。
  • 経歴の情報(任意):職種と経験年数を回答してもらった。

UXにおけるAI利用の広がり

回答者の92%が少なくとも1つの生成AIツールを利用したことがあると回答した(95%信頼区間:90.3%~93.9%)。

ただし、この調査には重要な制約がある。我々はEメールとソーシャルメディアを通じて参加者の募集を行い、募集の文章で「生成AI」という用語を使った。そのため、AIに関心のある人が回答をした確率が高い可能性がある(選択バイアス)。AIツールを利用するUX専門家の割合は多いと我々は考えているが、正確な数値は92%までは高くないかもしれない。

回答者は平均2つの生成AIツールを利用していた。最も多く挙げられたツールの種類上位2つは、テキスト生成ツールとマルチメディア生成ツールだった:

  • テキスト生成ツール:ChatGPT(90%)、Bard(17%)、Bing Chat(7%)
  • マルチメディア生成ツール:Midjourney(32%)、DALL・E(15%)、Adobe Firefly(5%)

これらのツールを利用したことがある人のうち、ほとんどの人(78%、95%信頼区間:74.6%~80.5%)が仕事とプライベートの両方の目的でAIツールを利用していた。一方、8%(95%信頼区間:6.4%~10.4%)の人がプライベートのみでAIを利用していた。

仕事にAIツールを利用する人の多くは定期的に利用していた。具体的には、63%(95%信頼区間:59.3%~66.5%)の人が少なくとも週に数回はAIを利用していた(24%が毎日、39%が週に数回利用すると回答)。

調査に参加した680人のUX専門家のうちの63%が、少なくとも週に数回、仕事でAIを利用していた。(エラーバーは95%信頼区間を表す)。

UX専門家の仕事における生成AIの4つの役割

UX専門家が仕事で生成AIツールを利用する30種類のタスクを我々は特定した。そして、これらのタスクをコンテンツエディター、調査アシスタント、アイデア出しパートナー、デザインアシスタントという4つの役割に分類した。

  • コンテンツエディター:UX実践者から与えられた仕様や文に基づいた、マイクロコピーからソーシャルメディアへの投稿までの、テキストの生成と編集。
  • 調査アシスタント:デスクリサーチの要約やUX調査用の特定の文書(調査計画、スクリーナー、インタビューガイドなど)の作成。
  • アイデア出しのパートナー:テキストやマルチメディアを含むコンテンツのバリエーションを幅広い粒度で(ハイレベルな機能生成からデザインの詳細な本質部分まで)探索し、解決策のアイデアを出して、それを検証。
  • デザインアシスタント:画像や動画、ペルソナ、ワイヤーフレームやプロトタイプ、ジャーニーマップなどのデザイン成果物の生成と編集。

テキストコンテンツエディター

回答者の75%以上が、生成AIを、テキスト関連の、具体的には以下のようなタスクに利用していた:

コンテンツの生成をAIにサポートしてもらうことで、特にUXライティングの経験がない場合や専任のUXライターがいない組織で働いている場合、UX実践者は労力を大幅に削減することができる。

コンテンツエディター系のタスク
タスク
UXマイクロコピーの生成(エラーメッセージ、ナビゲーションラベル、ヘルプテキストなど) 「私はよくChatGPTのようなプログラムを利用して、ページ内のモーダルやテキストなどのマイクロコピーの書き直しをしたり、アイデアを得ている。文を短く簡潔に、誰にでも理解しやすいように書き直すのに利用している」
特定の種類のコンテンツの作成(たとえば、プレスリリース、職務内容、目標と主要な結果(OKR)) 「最近、ChatGPTを利用して、会社で開発している新商品のプレスリリースを作成した。その商品とは投資に関するもので、私は専門ではないので、話の論旨が通るように情報を構成するのにChatGPTが助けになった」
「チームとのOKRワーキングセッションを進行していた際、UXの優れたOKRの例をすぐに見つける必要があった。そこで、ビジョン/ミッションステートメントを書き(この作業は私の仕事の延長線上にある)、ChatGPTに1つの目標と4つの主要な結果、それに関連する取り組み、および各取り組みのKPIを生成するように依頼した」
制限や制約に基づくテキストの拡張、削減、修正、要約 「自分のレポートの導入部に入れるために、ChatGPTを利用し、UXベンチマーキング調査とは何か、ということをまとめた。AIには、私が提供したプロジェクトの詳細情報も入れるように依頼した。そして、生成されたその段落がよくできていることに感心した」
「あるとき、説明をいくつか書かなければならなかったのだが、文字数の制限があったので、生成AIツールにアクセスし、指定された文字数でどのような文ができるかを提案してもらった。提案を受け取った後、私はそれらにいくつかの変更を加え、限られた時間内でタスクを完了することができた」
特定のオーディエンス向けのテキストの準備 「ChatGPTを利用して、UXが専門でない同僚にプレゼンするためのUX関連の用語や概念の定義を作成した」
「コンテンツの読みやすさの向上。つまり、特定の学年レベルやFKスコア(訳注:アメリカの教育分野で利用されている読みやすさの指標)向けに書き直すために、『平易な言葉を使ってこれを読みやすくして』とツールに依頼した」
特定の口調の徹底 「チームで開発中のネイティブアプリのインテントコピー(:機能の意図を説明する文)を書くのに役立てている。同じようなトーンや話し方を維持するための一連のプロンプトに従わせることで、ブランドとの一貫性を保てるようにしている」
言い換え校正 「私は生まれつき文章を書く才能があるわけではなく、普段はこの種のテキストを書くのに何時間も費やして適切な言葉や表現を見つけようとしている。このツールのおかげで、そのようなストレスから解放され、出そうで出てこない適切な言葉をいつまでもじーっと考えて見つけ出す必要がなくなった」
「送りたいメールや情報を自分の言葉でタイプした後、それをAIに言い換えてもらう。それによって、私の考えがより明確で簡潔なものになるが、私自身が入れたかった同じメッセージが含まれているので、それが私の考えであることには変わりはない」

調査アシスタント

生成AIが支援する業務の中で2番目に多く挙げられていたカテゴリーが調査だ。約半数の調査参加者がこうしたツールを利用してこの役割に当てはまるタスクを行っていた。

調査業務は以下の2つのサブカテゴリーに分けることができる:

  • デスクリサーチ:特定の問題やドメインを理解するための一般的な情報検索(たとえば、一般的なデザインパターンやコンサルティングプロジェクトのための新しい分野の調査)。
  • ユーザー調査:製品デザインに情報を提供するためのターゲットユーザーグループについての調査。

デスクリサーチ

生成AIがもたらす効率化の大きなメリットは、情報探索プロセスにおいて情報を集約できることだ。関連する情報源を手作業で検索し、そのそれぞれから興味深い情報を抽出してから、すべてを組み合わせて首尾一貫した結果を導き出す代わりに、専門家はこの作業をAIに依頼できるのである。

回答者の中には、長くて難解な記事のようなコンテンツをAIに入力し、ポイントを要約してもらっている人もいた。

UX専門家は、生成AIを以下のようなシナリオでデスクリサーチに利用したと回答している。

デスクリサーチ系のタスク
タスク
新しいトピックの調査 「統計分析に関する質問に答えて」
「UX戦略のコンセプトに関する簡単な調査」
特定の種類のページや要素、ワークフロー、アプリのベストプラクティスのチェック 「『銀行アプリのホーム画面では、どういった情報が最も頻繁に表示されるのか』といった質問に答えるために」
「テクニカルSEOチェックに必要なステップをすべて網羅できているかを確認するためにChatGPTを利用している。AIが生成した回答には、私が思いつかなかったステップがいくつか含まれていたので、それを参考にして、自分のプロセスステップとプロジェクトマップにさらにステップを追加することができた」
詳細な調査に役立つリソースの推奨 「最近、私はUXにおけるプライミングについて学習していて、このトピックについて学ぶための適切な情報源を見つけるためにAIを利用した。そして、AIは非常に役に立った」
「特定のUXやインタラクションパターンが見つかる場所やウェブサイトの種類、業種を、ChatGPTに提案してもらった」
複雑な製品のための新しいドメイン知識の習得 「KYC(本人確認)プロセスに焦点を当てたB2B製品に取り組んでいたのだが、KYCについての予備知識がまったくなかったので、基本的なことを理解するためにChatGPTを利用した。ChatGPTに、なぜKYCが利用されていて、どのように利用され、KYCの最も一般的なフェーズやプロセスはどういうものなのかを教えてくれるように依頼した。そして、そこで得られたデータから、製品の仮説や仮定を作成し、それを実際のユーザーによって検証するということをしている」
「最近、会計ソフトについての調査をしていたのだが、私はその分野が専門ではないので、そのシステムに何を機能として取り入れるべきか、また、どの機能が不要なのかを判断するのにとても苦労していた。しかし、生成AIに質問をしはじめたところ、そうした混乱のほとんどが解消され、新しい機能についてのアイデアや意見を生み出すのにも役立った」
ユーザー提供のコンテンツに基づく重要なポイントの要約 「AI/ML関連のコンセプトの要約を自分のメモ用に生成」
「大量のコンテンツをコピー&ペーストして要約」

UX調査タスク

回答者は、一般的な情報収集以外にも、UX調査プロジェクトのすべてのフェーズにおいて生成AIツールのサポートを受けていると報告してきた。

UX調査系のタスク
タスク
調査プロトコル、スクリプト、インタビューガイドの下書き 「インタビューガイドを作成するためにChatGPTを利用した。そのときの目標は、新しい機能のアイデアのさまざまな側面を検証する質問を考え出すことだった。AIはよくやってくれて、私が考えもしなかった質問をいくつか提案してくれた!」
「調査に参加する参加者にメールを書くために、きょう利用した。その後、アプリを改善するためのユーザビリティ調査中に尋ねる質問を含むスクリプトを書くためにも使った」
タスクの言い回しの微調整 「ユーザーにバイアスをかけないような質問文の種類を生成してもらうのに利用した」
連絡メールや調査案内などの調査参加者の募集に関するテキストの作成 「アンケートを作成していたのだが、調査開始前に参加者が見る説明をいくつか書く必要があった。アイデアがなかなか浮かばず、苦労していた。そこでChatGPTに私の代わりに下書きを作成してもらい、それを編集した」
調査セッションの知見の要約とテーマの抽出 「コンテンツ分析。アンケートを実施し、自由回答形式の質問を2つ入れたのだが、ChatGPTがどれだけ役に立つか試してみたくなり、利用してみた。欲しい情報を得るには多くの試行錯誤が必要だったが、ChatGPTはまずまずの仕事をしてくれたと言える。精度は70%だ」
プレゼンテーションの概要やスライド、調査レポートの生成 「GPT-4とプラグインを使って、調査に関する概念の要約を生成し、報告書のフォーマットを提案した。また、文献レビューの大まかなメモをGPT-4に入力し、初稿の要約を得た」

参加者は、高度なResearchOpsの立案にも生成AIを利用していた。ある参加者はこう書いていた:

我々は社内でUXの実践コミュニティを立ち上げることを検討してきた。しかし、何から始めればいいのかわからなかったので、ChatGPTにどこから手をつければいいのかを考えるサポートをしてもらった結果、ステップが明確になった。つまり、『コミュニティの目的と目標を定義する、ターゲットオーディエンスを特定する、ルールとガイドラインを設定する、活動を計画し、スケジュールを立て、コミュニティの宣伝をする』という順番だ。この素案によってスタート地点がわかったので、この提案を受け、実行に移した。

その後、私はChatGPTに再度アクセスして、実践コミュニティのルールやガイドラインの例を教えてもらい、それがどのようなものなのかを把握した。提案されたとおりのものをそのまま利用したわけではないが、我々の組織に合わせてそれらを調整するために必要な知識を得ることができた。

これらすべてを立案した後、我々の目的と目標に基づいた指針を作成したいと考えた。そこで、ChatGPTを利用して、指針のラベルに磨きをかけ、要旨を最適化した。次に、ChatGPTを使って、活動のアイデアを作成したが、その結果は非常に満足のいくものだったので、そのほとんどを採用した。我々のUXの実践コミュニティのための提案書全体を2時間以内で作成することができたが、通常ならこれは数日以上かかるタスクだっただろう。

アイデア出しのパートナー

生成AIツールの利用状況として3番目に多かったのが、ひらめきとアイデアを得るために利用するというものだった。回答者の31%が、ボットを利用してまず何かを生成し、白紙症候群(:何かを創造する最初の段階で何も浮かばないときに経験する心理的ブロック)を克服したと述べている。彼らはAIと共同作業を行い、お互いのアウトプットを基に作業を進めていた。

この役割において、回答者はAIツールを同僚のように扱っていた。つまり、背景情報を共有し、与えられた課題に対して考えられる解決策を一緒に探っていたのである。ある参加者はこう指摘していた:

こうしたツールは、自分が見落としていたことを示してくれたり、検討すべき別の視点を与えてくれたりすることで、個人的なバイアスを打ち消すのに役立つと思う。

アイデア出しのパートナー系のタスク
タスク
作成プロセスのさまざまな段階(概要やコンセプトの視覚化から具体的な単語やカラーパレットまで)でのコンテンツバリエーションの探索 「ChatGPTに、『UX調査とは何か』ということをデザイナーでない人にどのように説明すればよいかを聞いてみた。また、PowerPointでプレゼンする際のコンテンツの構成も依頼した。自分はこうした最初のアイデア出しにいつも時間がかかるほうなので、ChatGPTを利用している。ChatGPTを使うと、この時間が30秒に短縮されるため、どんどん作業を進めることができる」
「斬新なアイデアやデザインコンセプトを探るためにChatGPT-4を利用した。AIが生成した回答には、ナビゲーションの革新的なコンセプトから、直感的なジェスチャーやアニメーションまで、さまざまなデザインアイデアがあった」
シナリオと解決策のアイデア出し 「デザイン思考ワークショップのためのアイスブレイク活動(:会議などの開始時に参加者の緊張をほぐす活動)の提案」
「ChatGPTを利用して、人事ソフトウェアの複雑なフォームに関するアイデア出しをした」
「最近、関連するユーザーストーリーをChatGPTに生成させて、ある機能を考案した。ChatGPTの幅広い出力のおかげで、多角的に考えることができた」
「業務シナリオの処理方法についていろいろなアイデアを得ることができた」
「製品のデザイン中、より良いアイデアを見つけたり、このアプリのエッジケースを考慮するのに役立っている」
ロールプレイ:AIに特定の役割(たとえばステークホルダー)を演じさせ、そのタスクに対する評価や提案を依頼 「ChatGPTに役割を割り当てて、特定のタスクのための指示や新しいテーマの学習の評価を提供するために尋ねている」
AIに具体的な計画や一連の行動を点検させることによる、アイデアの検証と不足部分の特定 「我々の製品に関する情報を提供することで、可能性のありそうな機能や、見落とされているかもしれない要件をすばやく特定する」
「ChatGPTにユーザーフローなどのアイデアをレビューしてもらうこともある」
「テクニカルSEOチェックに必要なステップをすべて網羅できているかを確認するためにChatGPTを利用している。AIが生成した回答には、私が思いつかなかったステップがいくつか含まれていたので、それを参考にして、自分のプロセスステップとプロジェクトマップにさらにステップを追加することができた」

デザインアシスタント

アンケートの回答者の24%が、デザイン関連のタスクに生成AIツールを利用していると回答していた。こうしたタスクには、以下のようなものの生成や修正が含まれる:

  • 画像や動画といったマルチメディア
  • ペルソナやプロトタイプ、ジャーニーマップなどのデザイン成果物
デザインアシスタント系のタスク
タスク
画像や動画の作成と編集 「既存のデザイン言語に従ってイラストを生成し、マッチングさせる」
「最近、あるデジタル製品のビジュアル部分をクライアントに見せるためにムードボードを準備した。そのために、Midjourneyで画像を生成し、他の画像も参照して、最終調整のためにPhotoshopで簡単に編集できるモックアップをエクスポートした」
(テキストやペルソナの写真などのビジュアルもある)ペルソナの作成 「ChatGPTにユーザーグループについて説明し、ユーザーについての重要な特徴も提示すると、ペルソナが生成された。それにいくつかの変更を加えることで、プロジェクトに利用することができた」
「プロジェクトのためにペルソナを作成したのだが、ChatGPTを利用した。ペルソナについて多様な選択肢が欲しかったので、AIには私が考えなかった視点を考慮してくれることを期待していた。AIはとてもうまくやったし、私が思いつかなかった問題点や目標、不満を提案してくれた」
「ペルソナの顔の生成にはAdobe Fireflyを利用した」
ストーリーボードユーザーフローの作成 「ChatGPTを利用して、パフォーマンス管理ツールのある機能のストーリーボードを作成した。最初は当たり障りのない回答しか返ってこなかったが、詳細を十分に説明することで具体的なキャプションが生成された。私はそのプロンプトを利用して、イラストつきのストーリーボードを作成することができた」
「AIが生成したコンテンツは、私が当初考えもしなかった、ユーザーフローの新たな可能性を気づかせてくれた。GPT-4は、ユーザーがアプリ内を移動し、その機能とインタラクトすることができる別の方法を提案してくれたのだ」
ワイヤーフレームプロトタイプの生成 「注文一覧ページをデザインしたいと思い、そこに入れるべき情報を知りたかったので、ChatGPTに尋ねた」
「商品カードを作りたかったので、Automator(Figmaのプラグイン)を起動した。(中略)何度かやり直して、画像とタイトル、サブタイトルが入ったカードを作成することができた」
おすすめのカラーパレットの提案 「使っているデザインシステムには、各色につき設定値が3つあった。それに対応する値のバリエーションを増やしたかったので、ChatGPTに生成してもらうことにした」
「自分でプロジェクトを始めたばかりなので、text-to-imageツールを利用して、ロゴのアイデアや色、イラスト用の写真など、私のブランドのガイドラインを作成した」
ジャーニーマップや共感マップなど、具体的なUXマップの作成 「ユーザー調査が不可能で、時間も限られているクライアントのためにカスタマージャーニーマップの草案を作成した。それは議論の材料となり、実装チームにユーザー中心的な考え方を浸透させることができた」

問題をより強力に解決するために役割を組み合わせる

参加者の回答の多くで、AIは上記の4つの役割のうちの複数の役割を同時にこなしていた。

たとえば、コンテンツ生成タスクにはアイデア出しが伴うことが多かった。あるいは、デザインアシスタント作業にはコンテンツエディターの要素が含まれていることもあった。このように役割を組み合わせることでAIの問題解決能力と有用性は向上していた

AIを複数の役割で利用するタスクは、さらに複雑になり、相互のやりとりをより必要とすることが多かった。これは、明瞭表現の壁(:自分のニーズを明瞭な文章で表現することの難しさ)があるためだけでなく、ユーザーが問題空間についてより深く学び、最終的な選択肢を絞り込んでいるためでもあった。

たとえば、ある回答者はエラーメッセージのアイデア出しのプロセスについて教えてくれていたが、このケースでは、ChatGPTはコンテンツエディターであると同時にアイデア出しのパートナーでもあった:

エラーメッセージが必要だったので、ユースケースをChatGPTに説明し、どのように書いたらいいかのアイデアを返してもらった。AIが知り得ないエッジケースや制約に対処するためにそのアイデアは微調整をする必要があったが、それを私のデザインに実装した。

同様に、調査アシスタントとアイデア出しパートナーの役割をAIに兼任させることで、UX専門家はまずそのトピックについて学んでから、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになる。別の回答者はこう述べていた:

最近、会計ソフトについての調査をしていたのだが、私はその分野の専門ではないので、そのシステムに何を機能として取り入れるべきか、また、どの機能が不要なのかを判断するのにとても苦労していた。しかし、生成AIに質問をしはじめたところ、そうした混乱のほとんどが解消され、新しい機能についてのアイデアや意見を生み出すのにも役立った。

さらに、生成AIツールを複数組み合わせれば、AIはより複雑なタスクをサポートすることもできる。ある回答者は、ChatGPTとMidjourneyを利用して、ユーザージャーニーとインタフェースの文のアイデアを出し、さらにデザインのインスピレーションを得る方法を説明してくれた。

生成AIツールだけを利用して、アプリのマーケットプレイスの体験をデザインした。我々にはこのプロダクトに関するビジネス知識が元々あり、ニーズも特定されていたので、ChatGPTとMidjourneyを利用してジャーニーを生成し、製品のレイアウトの構成、カラーパレット、文、エラーメッセージ、成功時のメッセージのヒントを得た。さらに、我々はそのすべてをFigmaに持ち込み、2日で体験を構築した。3つの選択肢にこれほど早く到達できたことは実に印象的だった。そして、それらは現在、ユーザーによるテストと検証が可能である。

コンテンツエディター:最も一般的な役割

今回の調査で、UX専門家が生成AIを利用した割合は、テキスト生成のほうがマルチメディア生成よりも圧倒的に多く、この差は統計的に有意であった(p < 0.001)。デザイン中心のタスク(ストーリーボードやジャーニーマップ、カラーパレットの作成など)へのAIの利用は、調査中心のタスク(p < 0.001)やアイデア出しのタスク(p = 0.012)に比べても、UX専門家からの言及がはるかに少なかった。

このグラフは、4つの役割のいずれかに該当するタスクを行っていると回答した人の割合を示している。(エラーバーは95%信頼区間を表す)。

このようにAIの使用用途としてテキスト生成が好まれているのは、以下の理由からだと我々は考えている:

  1. UX専門家は書くことがたくさんある
  2. UX専門のAIサポートは(現在のところ)限られている。
  3. 自分たちの専門に特化したタスクを実行するためのAIの利用方法を、多くのUX専門家がまだ学んでいない

この説明のいずれにもある程度、真実が含まれている可能性があるが、あとの2つの理由には、生成AIツールの将来の発展の可能性を示す意味があると考えている。

UX専門家は書くことがたくさんある

UX実践者にとって、書くことは必要不可欠なことだ。なぜならば、UXはコミュニケーションに焦点を当てた分野だからだ。我々は、メールやSlackの日々のメッセージに加え、調査計画、レポート、マイクロコピー、UIコピー、機能ドキュメント、計画書などの作成を行なっている。

テキスト生成ツールは、ライティングのワークフローを効率化する。下書きを作成したり、洗練させたりしてくれるのである。英語が第二言語であるUX専門家として、テキスト生成ツールは非ネイティブスピーカーに大いに役立つということを私自身が断言できる。

UX専門のAIサポートは限られている

UXにおけるライティングの必要性以前に、そもそも、特定のAI機能を備えたUXのデザインや調査のアプリやマルチメディア生成ツールよりも、AIベースのテキスト生成ツールのほうがはるかに進化している。その確かな性能が人気を呼び、UX専門家を含むあらゆる専門家に利用されやすくなっているのである。

現在、ChatGPTやBard、Bing Chatのような汎用AIツールは、ヒューリスティック評価やエキスパートレビュー、主題分析のようなUXタスクに対して、ほんのささやかなサポートしかしていない。(そして、UXツールのAI機能に関する我々の分析によると、そうした機能は、この記事を書いている時点では、かなり初歩的なものである)。

実際、(すべてではないが)ほとんどのUX作業では、特定の製品やユーザー、ドメインを深く理解する必要がある。そのため、汎用の生成AIツールでUXタスクのサポートを受ける場合、多くの背景知識とコンテキスト情報をツールに入力しなければならない。タスクが複雑であればあるほど、そうした情報との依存関係も強くなり、AIが提案をするために必要な情報も増加する。回答者からアイデア出しのタスクについての言及が少なかったのは、このためかもしれない。

AIシステムに多くの情報を入力する必要があるため、インタラクションコストが高くなりすぎ、UX実践者がAIを使ったUXタスクを行おうとすることさえ難しくなる可能性があるからだ。

たとえば、回答者の6%がAIにプロトペルソナを生成させたと回答している一方で、ユーザージャーニーの作成にAIを利用した人は0.5%にすぎなかった。後者の作業では、AIから満足のいく結果を得るには専門家がより多くの詳細情報をインポートする必要があるためと考えられる。

加えて、データのプライバシーやセキュリティの制約から、汎用AIツールに情報を提供することが不可能な組織も少なくない。複数の回答者がこの問題に言及していた:

私のプロジェクトには機密情報が含まれていたため、具体的な情報はあまり入力できなかった。そのため、Bardから得た情報でさまざまなワークショップの作業を行う必要があった。

入力した情報は訓練用に利用しないでもらいたいと思う。情報を機密扱いにしてくれれば、もっと利用しやすくなるだろう。

さらに、生成AIツールは、もっともらしく聞こえる間違った答えを出してくることもある。回答者の中には、データ分析にAIをうまく利用できたとしても、その結果が完全に正しいとは限らない、と不満を述べる人も何人かいた。

限定的なAIスキル

有益な結果をもたらすプロンプトを作成するのは容易ではない。何度も試行錯誤し、微調整する必要もある。多くのUX専門家は、明瞭表現の壁を乗り越えるための専門知識を持っていない。我々の調査の回答者は、ボットに彼らが望むコンテンツを作らせるために、通常、何度もプロンプトを作成する必要があった。中には、完全に諦めてしまう人もいた。

大きな不満がある。調査の手順書を書いていて、ステークホルダーのレビューの前に質問を簡潔に編集しておきたいと思っていた。でもできなかった! ChatGPTは私の期待にまるで応えてくれなかったので、自分で手順書を書くことになったのである。あまりにも形式的だったのだ。プロンプトに含めていたとしても、言葉が形式的すぎる。

生成AIはUX専門家にどのように役立つのか

ここでは、生成AIをUX専門家にもっと役立つものにするためのアイデアをいくつか紹介する。すでにこのうちの一部に取り組んでいる企業もあり、我々はその効果を見るのを楽しみにしている。

  • 既存のUXツールにAIを組み込む。UXに特化したタスクのためにユーザーをAIツールにアクセスさせるのではなく、生成AIを既存のUXツールにシームレスに統合し、ワークフローを効率化すべきである。たとえば、多くの専門家が仕事でFigmaのAIプラグインを利用している。こうした統合されたAI機能が増えれば、コンテキストを切り替える手間が省け、効率が上がるだろう。
  • 関連リソースをAIツールにインポートしやすくする。現状では、有用な回答を得るために、多くの詳細情報や背景知識をプロンプトに入れて、AIと共有する必要がある。したがって、さまざまな入力形式をサポートすれば、この情報伝達プロセスをより単純化できるはずだ。ChatGPTは最近、テキストだけでなく画像による入力を受け付ける機能を追加したが、これはかなりの改善である。プロジェクトのコンテキストとそのデータファイルをプロンプトの入力の一部として自動的に利用する(Dovetailのような)専門的なデータ分析ツールを、我々は夢想している。
  • 透明性のあるデータ共有ルールを設定する。機密性の高いプロジェクト情報を生成AIモデルの訓練のために利用しないことをユーザーが選択できるようにし、入力データがどのように利用されるかを自分でコントロールできるようにする。
  • UX専門家のAIリテラシーを高める。効果的なプロンプトを作成するのは難しい。AIツールはこのプロセスを迅速にすべきである。主要な調査やデザインの作業のための分析テンプレートを作成し、それに対応するデータを積極的に要求することで、ユーザーがすばやく適切な結果を生成できるようにサポートすることだ。(この点について、Nielsen Norman Groupでは今後、記事や動画でサポートしていく予定である)。

我々はまだAI時代のごく初期段階にいる。UXの分野では、AIを効率よく、正確に、そして責任を持って利用するための最善の方法についての指針が必要なのである。

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